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119『人工スタンピート』

 その一報が入った時、通商都市のギルドでは、最近頻発している王都周辺での変異についての会議をしているところであった。

 それは当然の事ながら、アンナリーナの嫌がらせであるネロ率いるスケルトン軍団とツァーリのグール軍団による聳動の件だ。

 だが未だ、実害はない。

 だがそれを目撃した者たちの心の傷は想像をはるかに上回っていた。



「ギルドマスター! 大変です!!」

 小規模ですがスタンピードが発生しました!」


 会議室にいた全員が立ち上がって、今報告した職員を見つめている。


「で、その場所は?」


「南部の辺境……先日、ダンジョンの卵が発見された場所から魔獣が湧いているようです!!」


 ダン!と、無骨な拳がテーブルを叩いて、ギルドマスターが唇を震わせている。

 傍らの副ギルドマスターが駆け出して行き、後に残された面々は少しでも詳細な情報を得ようと職員に視線を移した。


「まだ、第一報が入ってきたばかりなのでこれ以上の情報はありません。

 そのスタンピードの一行は【北】を目指している……それだけなのです」


【北】それはこの通商都市、そして王都を臨む方向だ。

 何としてもスタンピードをここで止めなければならない。

 ギルドマスターは悲愴な決心をした。




 そんな状況の数日前。

 隣国で気楽な冒険者生活を送っているように見られているアンナリーナたちは、少しづつ恐怖を振りまいているアンデッド軍団の働きに気分を良くしつつ、次の一手に向かって爪を研いでいた。

 そして。


「熊さん、セトと一緒にちょ〜っと遊んでくるので、ここを任せていい?」


 アンナリーナたち一行は連日、ギルドの依頼を受けて納品すると言うルーティンをこなしている。

 そして昨日は、わざわざ大量のポーション納入の依頼を受け、数日姿を現さなくも違和感がないようにしてある。

 そんななか、王都から出発した馬車の中から、アンナリーナとセトの姿がこっそりと消えた。



 認識阻害と気配遮断、不可視のスキルで姿を消したドラゴンが南に向かって飛んでいた。

 その背にアンナリーナを乗せて滑空するセトはあっという間に目的地に近づいた。


「南から追い立てればいいのだな?」


 方法はセトに任してあったのだが、その選びうる最高のチョイスをして、彼は方向を転じ大回りに近づいていった。


 漆黒のドラゴンの口から高温のブレスが吐き出されて、以前よりも随分数を増やしていた魔獣たちがパニックを起こしている。

 絶妙の按配で吐かれたブレスは、ほとんど魔獣を傷つけず、それを避けようと逃げ惑う魔獣たちを北方に誘導することに成功した。

 中には大型魔獣に踏み潰されたものも出たが、二度、三度と繰り返されたブレスは確実にスタンピードを引き起こし、さらに僥倖な事にブレスの濃厚な魔力に触発されて【穴】が活動を再開した。

 次々と湧いて出てくる魔獣に、アンナリーナは目を丸くする。


「うわぁ、凄いね」




 見込みよりかなり多くの魔獣が発生したため、アンナリーナは緊急措置を取る事にした。

 セトとともに東側に移動し、結界で魔獣の森との境を遮断する。

 これでアンナリーナの大切な場所が荒らされる事もないだろう。



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