104『イーベンとの会話』
「ふむふむ、そういうコースを辿って来られたのですか」
イーベンは目の前の少女と、思いの外会話を楽しんでいる自分に驚いていた。
彼女はリーナと言う、ハルメトリア国の王立魔法学院に通う薬師であるそうだ。
今は学院の学業の一環で、薬草の採取や珍しい素材の収集するため、各国を旅して回っているのだそうだ。
見た目は小さな少女だが、薬師であり、従魔士である彼女は博識で、会話していて飽きることもない。
テーブルの上の料理を端に寄せて広げた地図に向かってあちこち指を指し、今回巡って来た街道を指し示していた。
「私たちはこの後西方街道を西に向かい、そのままこの国を抜けるつもりです」
それはイーベンが今日まで通って来た道だ。
彼の祖国はこの国から国境を2つ越えたサンベルティンと言う国だ。
今回はこの国の王都までの商談だと言う。
「それで今までの道中、魔獣とかと遭遇しませんでしたか?」
「そう言えば……街道を来ている割には多かった様な。
森狼とか、さほど強い魔獣ではありませんでしたが」
「そうですか。
実は私たち、ここに来るまでに出来かけのダンジョンらしきものに遭遇したんです。
それで、ここよりも東の方ではここ数年、ダンジョンが発生する事が多くて……」
「ちょっと待って下さい。
護衛のリーダーを呼びます。
おい、ナルシル! ちょっと来てくれ!!」
少し離れたテーブルで、他の面子と焼き肉に舌鼓を打っていた、今回の護衛のリーダー、ナルシルは、一瞬悲しそうに皿を見て立ち上がった。
「イーベン殿、何か?」
「これからの話は君にも聞いておいて貰おうと思ってね。
リーナ殿、話を遮って悪かった」
「いえ、そうですね。
護衛の方々にも知っていていただいた方がいいですもの。
……今、この国では多分、魔獣の大量発生が頻発しています。
私たちが遭遇したのは、ここです」
目の前の地図のある場所に指を置き、そして引き続きアグボンラオールの特異点を指して見せた。
「こちらは今、国内の3ヶ所で異常が認められています。
デラガルサのダンジョンも2年ほど前に突然鉱山が変異したものですし、これからは色々、気をつけた方がよいかもしれません」
これはとんでもなく有用な情報である。
それはナルシルも同じ思いで、気持ちを引き締めていた。
「心行くまでお腹いっぱい食べて下さいね」
未だ、コンロでは大量の肉が焼かれ、急遽炊かれたご飯が椀に盛られて焼き肉丼が作られている。
初めは恐る恐るだった客人たちも一口食べて仰天!
その後はあまりの美味しさに、掻き込むように食べていた。
やはり人間は、魔獣たちと違って肉だけでは胃が重かったのだろう。
丼に焼き肉を足して食べる食べる。
冒険者は身体が資本なんだよなと、アンナリーナはどうでもよい事を思っていた。
翌朝、情報を交換し合った2つのグループは正反対の方向に向かって出発した。




