101『道行き』
結局、こちらから動くことはせず、あちらからの接触には応じることにして、今夜は休むことにする。
エピオルスたちは召喚を解き、馬車を結界で囲む。
そしてジルヴァラを見張りに置き、アンナリーナたちはツリーハウスに戻っていった。
翌朝、ツリーハウスでの朝食を摂り、出発の用意をするため外に出ると昨夜話した御者の馬車の客や、その他の馬車の連中も朝食中だった。
「おはようございます」
朗らかに挨拶してエピオルスたちを召喚する。
そしてテオドールが馬車に繋いでいる間に付与魔法をかけていく。
エピオルスたちには【身体強化】を。
馬車本体には【空間魔法】の重量軽減を付与して満足そうに振り返った。
「お疲れ様、ジルヴァラ。
もうあちらに戻ってゆっくりしてもいいよ。今夜もお願いすると思うのでよろしくね」
承知した、とばかりにアンナリーナの足に身体を擦り付け、甘えた声を上げてから馬車の中に入っていく。
見るからに規格外のアンナリーナたちの庇護を受けようと、各馬車の御者たちは同じタイミングでの出発を画策していた。
そんな連中を嘲笑うように、走り出したアンナリーナたちの馬車は軽快に進んでいく。
すぐについて行けなくなった馬車たちを置き去りにし、アンナリーナたちは疾走して行った。
アンナリーナたちが進む西方街道のこのあたりは穀倉地帯であって、今は左右が黄金色の絨毯を敷き詰めたようになっていた。
それが風になびいてサラサラと音を立てて揺れている。
遠くに山を望み、その麓には森が広がる……その光景は美しくまるで絵画のようだ。
「このあたりはずいぶん開墾が進んでいるね。
きっと魔獣が少ないんだ」
アンナリーナが村にいる頃は知るすべもなかった事だが、彼女の祖国は富んだ土地を有していたようだ。
「それなら尚更あの村の魔獣の集団は異常だろう。
あれは……スタンピートと言ってもおかしくない」
アンナリーナはチラリと後ろを振り返った。
彼女らは今日、村を2つ町を1つ通り越して、少し早い時間なのだが野営地に到着した。
その時点ではまだ他の馬車は到着しておらず、アンナリーナは【探索】してみる。
「熊さん、ちらほらと魔獣がいるっぽいのでちょっと片付けてくるよ」
「誰かひとり連れて行けよ」
早速、セトを連れて森に入って行ったアンナリーナは、一刻もせずに戻ってきてその獲物を報告する。
「熊さん!
殺戮熊がいたからサクっと殺ってきたよ! 脂も最高ー」
熊、熊、熊ー?!
とりあえず今のところ、この野営地を襲って来そうな魔獣はいないようだ。
また就寝前にチェックするつもりだがおそらく大丈夫だろう。
「熊って、おまえ……」
「食べられない事はないけどあんまり美味しくないしね。
そうだ! 今夜は焼肉しようか!」
馬車を広い目に結界で囲って、バーベキューコンロをいくつか設置し、従魔たち全員をこちらに呼んで焼肉パーティーをする。
何なら不可視の魔法をかけてもよい。
「よっしゃー、みんなを呼び出して用意するよ!」




