99『増えるダンジョン』
夕食後、ハーブ茶を飲みながらくつろぎ【聞き耳】しながら一行が近づいてくるのを待っていた。
彼らも馬鹿ではない。
なるべく足音を立てないように、そして会話は最低限を小声で行なっている。
そんな中でもある程度のことは拾うことが出来た。
① 彼らはギルドで雇われた冒険者である。
② 総勢12人。5パーティの成れの果てであるらしい。
③ 依頼はある村の探索。この村の近辺に最近異常な事象が確認されていたそうだ。
④ ギルド側はこの村にダンジョンが出来かかっているのではないか、と思っていたようだが、今現在かなりの数の魔獣が集まっている。
⑤ 村は壊滅していた。
⑥ 今回、斥候任務だったのだが魔獣と遭遇。多大な被害を出し、この一行はその場から逃げだせた生き残りである。
「なるほどね……
ここでもダンジョンか」
ここまで重なると偶然ではないだろう。
前世で読んでいたラノベならば『魔素の暴走だ』とか『魔族の侵攻』と言うところだ。
よく考えれば大変な事態なのだが、どこまでもマイペースなアンナリーナは珍しかったり貴重な魔獣が手に入るかもしれないとワクワクする。
「ちょっと、その村に行ってみたいわね。明日は朝一でレッツゴーだわ」
そしてやっぱり、ボロボロで傷だらけの冒険者一行はさらっとスルーした。
大熊のテオドールの嫁は、一言で言えば【破天荒】これしかない。
今日も今日とて、新しく出来るかもしれないダンジョンに向かってノリノリだ。
「ちょっと様子を見てくるから、ここで待ってて!」
そう言って、セトを引き連れ【飛行】で飛び上がる。
このあたりの地理がわからないゆえに空を飛んで探した方が、たしかに早い。
あっという間に飛び去り、あっという間に戻ってきた嫁、アンナリーナはにこやかに目的地の方向を告げ、馬車を収納してテオドールの手を取った。
村……村だった残骸とオークの群れ。
その外側には見るからに興奮した狼型魔獣が取り囲み、そこには森熊も存在している。
「低位の魔獣ばかりね。
まだこれから進化していくダンジョンってところかしら……
あ、穴はあそこみたいだね」
わらわらと湧いてきているのはホブゴブリンだ。
小型だがオークより高い知能を持ち、戦闘能力もゴブリンにくらべると格段に高い。
「こうして段々と強い魔獣が排出されていくのね。そして数日中には手に負えないほどの魔獣が出現するのね」
「どうする?」
「面倒くさいわね。
このまま町に向かい、情報を仕入れて、最初の予定通り西に行こうか」
アンナリーナはあっさり祖国を見捨てる事にしたようだ。
それは予感めいたもののなせる技。
このダンジョン(仮)から溢れ出した魔獣が進む方向が、決してアンナリーナの魔獣の森に向かない事を確信しているのだ。
「あれらは北に向くわ」
だから西に行きましょう。
街道に戻ると馬車を出し、北に向かう。
途中で出会った商人に西側の隣国に通ずる道を教えてもらい、その分岐点になる通商都市ヤルドに向かう。
その頃、ようやく最寄りの町にたどり着いた、昨夜アンナリーナが遭遇した冒険者たちは、這々の体でギルドに駆け込み、話すのも恐ろしい報告をしていた。




