84『アンナリーナの野望?』
あの後アンナリーナたちは、こちらのギルドの鑑定士である彼と何がしかの取引をし、それなりの金子を得て、今ここに至る。
そして【迷い森】の場所を教えてもらい、屋台で串焼きやりんご飴などを買い込み、通常の八百屋で野菜や果物を手に入れて、デラガルサに戻ってきた。
「しかしこのダンジョンは、先が見えないわね」
「20階そこそこで何言ってる?
サルタナ国のダンジョンは結局156階層まであって攻略までに100年近くかかったって言うし、この大陸じゃあないがヌイ国のダンジョンは200階層を越えてもまだ底が見えないって言う話だ。
ダンジョンは腰を据えてやっていくしかないんじゃないか」
「そっか、そうだよね……」
そうならば一度地上に姿を見せておいた方が良いかもしれない。その時に攻略経過を報告しておけば一石二鳥だ。
「キリよく25階層まで行って、それから一度外に出ようか。
あまり長い間もぐってたら死んだと思われちゃうよ」
さすがにそれはないだろうが、訝しがられるのは間違いないだろう。
アンナリーナは転移してきた結界内から外に出て、向かってきたリザードマンをサクッと血抜きで屠ってみた。
「このリザードマンと言う個体からは、何か特別な素材が採れるのかしら」
「いや、まずは食えないし、素材も皮と爪ぐらいだろう。
竜種と違って内臓や血に価値はないからな」
「ほうほう……」
アンナリーナは前世で読んだ超有名ラノベを思い出していた。
その作品ではリザードマンをアンデッドにし、自分の手駒として使役していたはずだ。
「……ネロ、いるかしら」
「はい、ここに控えております」
「ここのリザードマンをなるべく無傷で処分したのち……ネロに【死霊魔法】をお願いしていい?」
「御意、ご主人様のお望みのままに」
「ありがとう、よろしくね」
また何か、とんでもない事を考えついたアンナリーナを、テオドールは溜息をつきながらも見守るしかないのだ。
翌日、野営地を引き払い、ダンジョンに入った時と同じメンバーで、アンナリーナたちは11日ぶりにダンジョン入り口に姿を現した。
そこにいた警備の兵士の面々は一様にホッとした表情でアンナリーナたちを迎える。
「よかった!
大丈夫だとは思っていたんだがな、もう10日以上も音沙汰なしだろう?」
「うふふ、ちょっと夢中になってしまって……
それから私たち、22階層まで到達しました」
「22階層!?」
少々、過少申告してみたが、彼らが驚きの声をあげたのは無理もない。いくらその発生が最近だとは言え、序盤からいきなり難易度が上がるこのダンジョンは、アンナリーナたちが捜索のために兵士たちと潜った、あの時の9階層が未だに到達記録となっていた。
「その、疑っているわけではないが、規定でギルド職員の確認が定められている。こちらから出す記録員と確認する職員を連れて、22階層まで案内していただきたい」
面倒な事になったと、表情を変えず心の中で舌打ちする。
「では、明日の朝でどうでしょう?
そちらにも準備がありますよね?」
嫌な引率が決まった。
昨夜はマリアとマチルダのところで場所を借り、馬車を出して泊まった。
朝イチにダンジョンの入り口に向かうと、そこにはもう兵士が3人とギルドから記録員という職員が派遣されていた。
「おはようございます。
あら?兵士さんたち……」
「お久しぶりです。
その節はお世話になりました」
ペコリと頭を下げたのは、以前一緒に救助に向かった隊長だ。




