表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
318/577

78『残念なおツム』

 とりあえず詳しい話は明朝にと言い残し、アンナリーナはセトを連れて出ていこうとしていた。

 その際、決してこのテントから出ないようにと言われ、不承不承頷く。

 もう足があるのだ。自由に歩き回って何が悪いのかと、ムッとしたのが表情に出たようだ。


「これからのあんたは、このテントを囲む結界から自由に出られる訳、そんな時魔獣に襲われたらどうなると思う?

 あまり賢くないお頭でもわかるでしょ?」


 馬鹿にしたように鼻を鳴らし、アンナリーナは今度こそテントの入り口の布の向こうに消えた。


 アントンは怒りに燃えたが今の自分の立場を思い、必死に堪える。


「くそぉ、リーナの癖に馬鹿にしやがって!」


 彼は “ 従属 ”したことを忘れているようだ。




 アントンが目覚めると、枕元のテーブルに服が用意されていた。

 それは彼が今まで着たことのあるどんなものよりも上質なもので、その肌触りと付与されている防御の数値の高さに思わず震えた。


 下着をつけシャツを着、ズボンを履く。

 ブーツを履いて立ち上がると、洗面器と水差しに気づいて、顔を洗う。

 そうして……初めて入り口の布をかき分け、外に出た。



「あら、おはよう。

 ちょうど起こしに行こうと思っていたのよ」


 まず飛び込んできたのはアンナリーナの顔で、次いで認識したのは今自分がいるテントを囲む、ダンジョンの森だった。


「ここは……」


「言ったでしょう?ここは12階層だって。さあ、さっさと食べてしまって。それから下に行くわよ」


 シンプルな机と椅子、そしてダンジョンの中ではいささか常識を外れた、まるで貴族や富裕層が食べるような食事。

 セトに睨まれて席に着いたアントンはガツガツと、脇目も振らずに朝食を平らげていった。


「相変わらず、下品な奴ね。

 少し躾が必要かしら」


『どちらが躾が必要なんだ。おまえこそ躾直してやる』とアントンが睨みつけてくるが、アンナリーナは平然としている。


「じゃあ、行きましょうか」


 まだ咀嚼しているアントンを追い立て、テントと机と椅子を続けてインベントリにしまったアンナリーナをアントンは呆然と見ている。


「もうこれ以上の遅れは我慢できないの。ついてこれないなら、置いてくわよ」


 地面から10センチほど浮いたアンナリーナがいきなり動き始めた。

 それと同時にセトが走り始め、一瞬遅れたアントンが必死で追いかけ始める。


「今回は出てくる魔獣は無視して、一気に降ります」


 向かってくる魔獣を結界で跳ね飛ばしながら、一行は一気に15階層まで降りきった。



 不可視の付与が与えられているのだろう。結界を通り抜けると今日一番の常識外れな光景を見た。


 15階層はアンデッドが蠢く階層だった。

 階層を隔てる階段から一歩足を踏み出すと、まず現れたのはスケルトンだった。

 思わずちびりそうになったアントンを尻目に、アンナリーナたちは平然と足を運び、今いる “ 野営地 ”に到着したのだ。

 そこには大型の箱馬車が置かれ、その周りにはまるで外で食事をするかのように大きめのテーブルに椅子が配置され、日よけのタープまで張ってある。


「これが……野営地?」


「そうよ。グズグズしないでこっちに来て」


 馬車の乗り口に足をかけ、アントンを呼ぶアンナリーナの顔が心なしが強張っているように見える。

 そして彼女は馬車の中に消えた。

 慌てて追いかけたアントンは、後ろをまるで逃さないとばかりに塞ぐセトにも気づいていない。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ