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77『誘い』

「あんたが私と隷属の契約を結ぶつもりがあるなら……助けてあげてもよくってよ?

 まあ、ゆっくりと考えることね」


 ゾッとする笑みを浮かべたアンナリーナは、そう言ってテントを後にした。

 後にはしばらくセトとジルヴァラが残り、最終的にはジルヴァラが監視のためにテントの入り口を塞ぐように、その身を伏せた。

 あとはアントンが何を言っても、耳ひとつ動かす事はなかった。



 アントンが寝かされているテントの中には、外の音は一切聞こえない。

 ここはまだダンジョンの中なのか、彼には計り知れない。

 あれから一昼夜経ったようだがアンナリーナは姿を見せず、食事を運んできているのはセトのみで、ジルヴァラは相変わらず見張りをしているようだ。




「さて、傷はどんな様子かな」


 テントに入ってきたアンナリーナは、出かけていたのだろう、チュニックとレギンス、編み上げのブーツという出で立ちだ。

 アントンが何かを言いかけるのを制し、毛布を捲りあげて右足の切断面を見ている。


「うん、いい状態だね。

 ……切断して6日? 7日くらい?」


「なあ、ここはどこなんだ?

 まだ、あのダンジョンにいるのか?」


「ここは12階層にある、私たちの野営地よ」


「!! 12階層だって!そんな、あり得ない!」


「あり得ないって失礼ね。

 だいたいあんたさえいなければとっくにここを引き払って、もっと下に野営地を移してたわよ。

 今日は20階層まで行ってたのよ」


 信じられないものを見るような目でアントンに睨め付けられて、アンナリーナは気分が悪い。


「ここ、12階層は鳥魔獣の階層よ。

 ここからは何階層か同じ種族の魔獣が続くの。12、13、14は鳥で、14階層は12階層より倍くらい強いわね」


「鳥……魔獣?」


「昨夜、あんたも食べたでしょう?

 極楽鳥のグリル……美味しかったでしょ?」


「あれが極楽鳥……」


 コクのある岩塩と挽きたての胡椒、大蒜と生姜が効いたシンプルな料理だが、皮目がパリッと、肉がジューシーで、アントンは夢中になって食べたのを思い出す。


「ここのダンジョンは美味しい食材が多くていいわね。

 まあ、今日行ってきた20階層は食べられない魔獣ばかりだったけどね」


 さて、とアンナリーナは椅子を持ってきてアントンを見下ろすように座り、にやりと口角を上げた。


「ちょっと急だけど、私もゆっくりしてられないのでね。

 昨日の返事を聞かせて欲しいのだけど?」


 アントンの返事は決まっていた。

 足がどうにかなるのなら悪魔に魂だって捧げるだろう。


「おまえの……おまえの提案を呑む」


「ふーん……」


 何もかも見透かすような、村にいた頃とは違う色の瞳が見つめている。


「わかったわ。

 あんたには私に従属する契約を結んで貰うわ。それから約束通り脚を治してあげる」



 それからは……大魔導士であっても、準備だけで数日はかかるような契約をあっさりと結び、アントンが実感できないまま従属となった。

 そしてそのまま、マットレスに上体を起こして座ったアントンの、右足の切断面に慎重に液体をかけ、半分ほど残ったその液体を飲むように言われる。

 アントンが一気にその液体を嚥下すると、一瞬意識が遠のいて……

 見下ろすと、今までなかった膝から下が再生されている。


「何だよ、これは……」


 胸が詰まって、まともな言葉に出来ない。

 知らないうちに溢れた涙に気づき、アントンは顔を覆った。


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