50『迫り来る盗賊団』
アンナリーナの結界の効果を知っている一行は、セトやイジたちの見張りもあってそれなりに眠れたようだ。
アンナリーナも疲れを取る薬湯を飲んでぐっすりと寝た。
そして盗賊団は案の定、野営中に襲って来ることはなく、その位置は変わっていないようだった。
「今日は馬車にも結界をかけます。
馬を含めて2台分、なるべく離れないように走って下さい」
先頭は箱馬車、御者台にはテオドールが共に座り、馬車の中にはタイニスとオクタビオとアルバイン、そしてアンナリーナが乗っている。
後方の幌馬車には御者台にはイジが共に乗り幌を隔てたその背後にはサルバドールが、後ろの開口部ではセトとアマルが監視していた。
「なるべく速い速度で駆け抜けます。今日も昼休みは取れないかもしれないですけど、熊さんとイジにはあらかじめ持たせてあるので、皆さんのは私が持ってます」
今日は身体強化の付与を強めにして、一行は中継地を後にした。
「かなり距離をとって追いかけてきてますね」
他者からは見えないアンナリーナのマップにはしっかりと青い点が表示されている。
「こちらの速度に追いつけずに、徐々に離されているのかな?
それでも付いてきていますね」
このまま追って来る盗賊団を引き離し、王都まで約2日、一気に駆け抜けるべきかタイニスやアルバインが真剣に考えていた時、アンナリーナも同じ考えでいた。
「馬の休憩は取りながら、野営はせずに夜間も走り続けますか?
馬にはポーション(と回復魔法)を与えれば問題ないと思います」
「ではそうしようか。
リーナさん、負担をかけて申し訳ないが、頼む」
「わかりました。なるべく引き離してから休憩しましょう」
そんな段取りになっていたはずなのだが、今アンナリーナのマップ内にはこちらに向かって来る点が表示されていた。
「こちらに向かって来る……多分馬車に乗った一行がいます。
これは敵意を持っていますから盗賊団の一味と考えた方が良さそうですね。
それと森の中から魔獣の一団、多分15匹ほどと何人かヒトが。
あちらにはテイマーがいるようですね」
魔獣は恐らく狼系だろう。
そして向こうからやって来る馬車は、故障したとか何とか言って、アンナリーナたちを足止めしようとしていると考えられる。
「茶番に付き合ってやりますか?
あちらは、こちらに対する敵意で真っ赤ですよ」
アンナリーナはアルバインに問いかける。そして。
「殺しちゃっていいですか?
生かして捕まえるのって面倒くさいんですよ。
あ、でも首実検出来なきゃダメなんですよね?
……焼いちゃったらダメだなぁ」
さらりと怖いことを言うアンナリーナにサルバドールは怯えた目を向けた。
「出来れば何人か、幹部クラスを生かしておいてくれたら嬉しいが。
今回は数が多いので無理は言わん」
「そうですか? ありがとう」
アンナリーナは小窓を開けて、テオドールに声をかけた。
「熊さん! 今回は熊さんもひと暴れしたいでしょう?」
上半身を半身に捻ってアンナリーナの方に向いたテオドールは、清々しいほどの笑みを浮かべて、親指を立てて見せた。
「うんうん、アラーニェとネロとアンソニーをこちらの護衛に残して、あとは打って出ようか!」
アンナリーナたちによる、盗賊団殲滅戦が始まる。




