43『東部工業都市ランブエール』
午前中にランブエールに着いた一行は一度宿屋に落ち着き、そのあとはタイニスたちは商業ギルドに、アルバインらは冒険者ギルドに、そしてアンナリーナとセトは町に繰り出した。
ちなみにジルヴァラはツリーハウスで留守番だ。
「東部工業都市か……
たしかにおもむきが違うね」
今、アンナリーナはセトを伴って街中を散策していた。
まためぼしいものがあれば買う気満々である。
「な〜んとなく空気が汚れてるっぽいのは、やっぱり製鉄や鍛治が発達してるからかな」
息苦しさがあるとかではないが、何となくそういう “ 臭い ”がすると言うか、昨夜までいた森の周辺と空気が違うと言うか。
今いる市民の生活区域とは分けられているのだろうが、工業区域の煙の臭いはごまかしようがない。
王都でも鍛冶屋はあるが、その総数が絶対的に違うのだろう。
「さすが工業都市だね。
……屋台で何か摘んでから行ってみようか?」
供をしているセトは、基本魔法を使って戦うので得物にこだわりはないが、その化け物じみた膂力を活かさない訳もない。
今は大剣を持っているが、ハルバードなども良いのではないかと、アンナリーナは思っていた。
「では先に食料を調達しようか。
主人が好む、珍しい食材があるかもしれない」
「いいね、それ」
早速、市場で手に入れたのは【ホワイトアスパラガス】だ。
前世地球とは旬の時期が違うようだが、見た目は変わりない。
「わぁっ、今まで見た事がなかったよ!」
目を輝かせるアンナリーナに、八百屋のおばさんが説明してくれる。
「ほら、アスパラガスっていうのは弱い野菜だろ?あまり運搬に向かないんだよ」
なるほど、傷みやすいので地産地消している訳だ。
王都くらいには運搬されるのだろうが、そうなると庶民の口に入る値ではなくなっているのだろう。
だが、アンナリーナにその心配は要らない。
「おばさん、このホワイトアスパラガス、そちらが売ってもいいと思うだけ売って下さい!」
店頭に並んだアスパラガスをざっと見て、アンナリーナが言った。
「アスパラガスはソテーしてよし、スープにしてよし、美味しいんだよ」
市場での買い物を終え、アンナリーナたちは今、鍛治工房が集まる区域に来ていた。
「そしてあの新じゃが、あれば薄くスライスして水に晒すと生で食べられるんだよ。梨のような食感で美味しいよ」
工房の中の熱気が外まで溢れている、そんな通りをふたりは、目的もなくただブラブラ歩いていた。
「そうめん瓜があったのにはびっくりしたなぁ。これでサラダの幅が広がるよ」
時々店頭で立ち止まり、中に陳列されている大剣を見たり、思い切って中に入り、武器の数々を手に取って見たり。
夕暮れが近づくまで、ふたりは食材の話をしながらそぞろ歩いていた。
「ちょっとうろうろし過ぎたかね?」
夢中で食材談議をし、適当に武器屋を冷やかしていたため、アンナリーナたちは今、軽く道を見失っていた。
「ちょっと薄暗くなってきたし、マップで確認するよ……オープン」
アンナリーナにしか見えない半透明のパネルが現れ、指で触れる。
「ん〜 現在地がここで、宿屋がここかぁ……あの木馬の看板の店の角を曲がってまっすぐ行くと、市場の通りに出るみたい。
そこまで行ったら……あれ?」
マップには魔獣や人もアップされる。
今アンナリーナの見ている画面には、少し離れたところで青く点滅する点が見てとれる。
「あれ? バグ?」
あたりをキョロキョロと見回し、まだ先に進もうとするアンナリーナをセトが留めようとすると、その手を振り払われた。
「何かいるよ、こっち」
その道端の草むらの中、排水路に男がひとり倒れていた。




