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28『魅了持ち』

 アンナリーナの、前世の記憶と今世の体験から、ピンク頭と魅了持ちは忌避するものと位置づけられている。

 特に魅了持ちは禁忌な存在で、アンナリーナ自身も【魅了】のスキルは取得しようと思っていない。


 今、アンナリーナの目の前で、森狼の変異種に襲われている少女はピンク頭で魅了持ち。

 そしてアンナリーナは即座に切り捨てる事を決断する。

 あとは完全に決着が着くまで、見届ける事にしたアンナリーナが、気配を消して様子を伺っていると、何故か少女と目が合った。


「たすけ」


 森狼の大きな口がガブリと、少女の首筋から肩口、脇腹にかけて抉っていく。

 口を動かすだけでもう声にならない、太い血管から噴き出した血飛沫で、真っ赤に染まった少女は森狼の足元に崩れ落ちていた。


「もう、死んだ?」


 アンナリーナは、魅了持ちは諸悪の根源だと思っている。

 この知識は前世のラノベを読んで得たものだが、人心を惑わせ、時には国すら傾けるその存在を心底憎んでいた。



 少女の骸を、そのまま放っておいても良かったのだが、アンナリーナはギルドに戻って報告した。


「外周の森に森狼が出たですって?」


 ドミニクスの悲鳴のような叫び声に、ギルドの中がシンとなる。


「それも変異種でした。

 通常よりも2倍近くの大きさの、体色が青みががっていたんです」


 アンナリーナのさも恐ろしかったと、怯えた演技は真に迫っている。


「すぐに討伐隊を編成します。

 リーナさん、申し訳ないが現場への道案内、お願いしていいですか?」


 アンナリーナは渋々といったところを装って、頷く。

 そのあとはギルド職員と有志の冒険者で編成された一行と共に森に向かい、森狼の討伐及び少女の遺体の回収に付き合った。


 そして戻ってきたギルドで、騒ぎはもう始まっていた。



「サーシャ、サーシャーっ!!」


 ギルドのカウンターの前では、ひとりの女が泣き叫んでいる。

 彼女は、一足先に戻ってきた遺体の……サーシャという少女の母だった。

 今さっき遺体との対面を終え、取り乱している彼女に毒を吹き込んだ者がいた。



「あんた、あんたがーっ、どうして助けてくれなかったのよーっ!!」


 ギルドに戻ってきたアンナリーナに突っ込んできた女を、彼女は本能的に避け横に飛び退った。


「見てたって、見てたって聞いたわよ!あんたが助けに出てくれたら、うちの娘は助かったのよーっ!」


 もはやその言動は支離滅裂である。


「それで、代わりに私が喰われろと?」


 ギルドの中にいる冒険者たちの雰囲気が変わる。

 それほど女が言った事は、この場で言ってはいけない事だった。

 いくら娘を失った親とはいえ、代わりに死んでくれたら自分の娘は助かったのだ、と言われたら気分が良いはずもない。

 この世界の法ではこういう場合、自分が魔獣を倒す自信がない場合、助けに入らなくても罪には問われない。

 城壁に囲まれた町から出て、森で何があったとしてもそれはすべて自己責任。

 サーシャという少女がどうしてひとりで森に入ったのか、それもかなり奥まで迷い込んでしまったのかわからないが、その死がアンナリーナの所為ではないのは確かなのだ。


「でも、でもっ、あんたなら助けられたって聞いたわ」


「聞いた?誰から?」


 女が顔を動かさずに、視線だけで捉えたのは、ミルシュカだ。


「また、あなたなのね」


 アンナリーナは心底うんざりした。

 それはこれまで抱いていたこの町への愛着すら薄らぐもので、決心するには十分だった。


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