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第四章 1『王都と学院』

 今アンナリーナは、学院の寮の自室にいた。


 ようやく王都に戻ってきたのは3月の末、新学期まであと5日を残すだけだった。

 もうその頃には、ほかの生徒もちらほらと入寮してきている。

 そして現在彼らの関心は、アンナリーナに向いていた。

 そして肝心のアンナリーナは……


 入学は昨年だったが、本格的な授業が始まるのはこの春からと言って過言ではない。

【異世界買物】で購入したガラスペンとインク、そしてシンプルな大学ノートなど、専用のバッグに入れてウエストポーチにしまった。

 教科書を読み込んでの予習なども、前世とはまた違った分野の学問で楽しさすら感じる。

 アンナリーナは今、本当に楽しかった。



 ユングクヴィストのところには土産を携えて挨拶に向かった。


「思ったよりも雪が深くて……道中の森では、採取も狩りも出来ませんでした。師匠にはこんなものしかお土産にできなくてすみません」


 そう言って差し出されたのは、王都では滅多に手に入れることの出来ない、南方の果実だ。

 甘いものが好きなユングクヴィストは殊の外喜び、この日のお茶もずいぶんと長引いた。


「リーナよ。

 そなたが留守の間、王宮からうるさいほど使者がやって来ていた。

 それらすべてが茶会や舞踏会の招待じゃ……さて、そなたはどうするつもりかな?」


「どうする、と仰っても無視し続けるわけにはいかないのでしょう?

 ……適当に間引いて、招待を受けるしかないのでしょうね」


 アンナリーナは溜息を吐いて、手渡されたばかりの封筒の束をその場のゴミ箱に投げ込んだ。



「アラーニェ、王都に帰ってきたばかりで悪いんだけど」


 師匠の元から戻って来たアンナリーナが、出迎えに出たアラーニェにそう言って、事情を説明し始めた。


「とにかく出来るだけたくさんのドレスが欲しいの。

 昼用、夜会用、取り混ぜて、必要な素材は何でも手に入れるわ」


 妖精の羽のようなオーガンジー、細やかなチュールレース。

 中でもレースは豪奢な機械編みレースや手編みのベルギーレース、制服の首元や袖口を飾る装飾レース。

 アンナリーナは【異世界買物】で、徹底的に買いまくった。

 某国王子の婚約者の為に織られたレースを競り勝った時は、思わず叫んでしまったほどだ。


「総レースのドレスは絶対外せないものね。

 お昼のお茶会用の、可愛いのも欲しいわ」


 女同士のお喋りは、止む事がない。


「リーナ様、護衛依頼に出発する前に伺っていたので、何着か出来上がっております。

 それと、リーナ様にお借りしたドレスのデザイン画集から何点か作ってみました」


 寮に帰ってきて、まだ一度も見ていなかった自室のクローゼット。

 空間拡張で広げられた衣装部屋には、この学院、そして社交界でしか着ないドレスが、ずらっと並んでいる。


「アラーニェ! 大好き!!」


 喜びに頬を染めたアンナリーナがアラーニェに抱きついた。

 普段はあまり華美な装いをしないアンナリーナだが、彼女だって女の子なのである。

 きれいなもの、かわいいものを好まないはずがない。

 それにアンナリーナには前世の知識と【異世界買物】があるのだ。

 ゴシック、ルネッサンス、バロック、ロココにエンパイア。

 ロマンチックスタイルにクリノリンやバッスル、アール・ヌーヴォーまで、書籍を取り寄せアラーニェに見せると完璧に再現してくれる。

 それも、嬉々として。



「ついに来ちゃったよ。

 王妃様主催のお茶会の招待状……

 これはシカトできないよね」


 げんなりしているアンナリーナの横で、アラーニェが瞳を輝かせていた。


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