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124『国境』

 川を渡る手前にある、自国側の出入国管理関所の前でアンナリーナたちは、出国の許可を待っていた。

 実は許可自体は出ている。

 出ているのだが、受け入れ側の彼方の関所が閉鎖されているのだ。


「これって、いつまで待たされるんでしょうね」


「この国境はたまにあるんだよ。

 まさか今回、それに当たるとは思わなかったが……まあ、待つしかないね」


 ダージェは諦めきっている。

 国境が閉鎖される理由は色々あるが、多くは交代人員のいない警備兵の休憩のためだと言う。

 冬の時期は出入国者の数がぐっと減るため、隣国ではこのようなシステムが取られているそうだ。


「忘れた頃に関所を開け、入国を受け付けるから、ここから動く事が出来ないんですよ」


 ボリスが口を尖らせている。


「まあ、しょうがないんじゃないか?

 リーナ、少し寝るか?」


 実は昨夜、あの討伐の後、猛りきった身体は興奮を抑える事が出来ず、その身を差し出したアンナリーナを朝まで貪っていた。

 アンナリーナは寝不足の上に疲労困憊のはずなのだが、今見た目はシャンとしているのが不思議だ。


 アンナリーナとしては治癒魔法【回復】と試作品として作っていた上級ポーションを飲んで、ようやく凌いでいたのだが。


「そう? じゃ、そうさせてもらおうかな」


 ダージェは気を遣って外に出てくれたようだ。

 通行がいつになるかわからないが、インベントリから小型のジグソーパズルを取り出して渡しておいた。

 これで暇を潰すことが出来るだろう。


「じゃあ、ちょっとの間おやすみなさい」



 ガタンと馬車が揺れ、喧騒が聞こえてきた。

 馬たちのいななきが聞こえ、人の話し声がする。

 アンナリーナが身を起こして毛布をたたんでいると、パズルを乗せた板を持ったダージェが乗り込んできた。


「ああ、リーナちゃん。起きていたんだね」


「はい、たった今。

 よければそれ、お預かりします」


 板を受け取って、インベントリに仕舞う。

 そして、ゆっくりと動き出した馬車は、橋の上を走り出した。


「熊さんは?」


「俺はここだぞ〜」


 馬車を外からゴンゴンと叩いてくる。

 今日は余計なトラブルを招かないように、イジはツリーハウスに残している。

 とりあえず【アグボンラオール】に入国してしまうまで、テオドール一人で護衛しているのだ。



 橋を渡り終わって、アグボンラオール側の関所に着き、馬車を止めると警備兵に話しかけられた。

 ダージェが馬車から降りて対応する。


「遅くなって申し訳ない。

 入国まで、あと少しお時間を頂きたい」


 思いの外、腰の低い兵に自分たちの身分証とテオドール、アンナリーナのギルドカードを差し出した。


「王都まで行かれるのですね。

 ここ数日、天候は安定していますよ。

 ……こちらのギルドカードの方は薬師殿ですか?」


 ひょこりと顔を出したアンナリーナを見て、兵士はギョッとしている。

 その彼にアンナリーナが話しかける。


「そこにも書いてある通り、わたしには従魔がいるのですが、今申請した方がいいですか?」


「いえ、次の町のギルドで申請して下さい。

 それと、一応荷物を拝見したいのですが」


 それを聞いたダージェが、懐から一枚の書類を取り出し、それを兵士に見せている。


「わかりました。

 では検査は免除致します。

 長い間、お付き合い頂き、ありがとうございます」


 どこまでもていねいな兵士に会釈し、ダージェが乗り込んだ馬車は動き出したが、いくらも進まないうちに、ゆっくりと止まった。


「あれ? どうしたのかな?」


 ダージェが御者台に通じる小窓を開けるとボリスが振り向いた。


「旦那様、今日はもう陽が暮れてきましたし、このあたりで野営はいかがでしょうか?

 関所からも近くて、馬留場もありますし」


 今日はもう時間切れのようだ。

 アンナリーナたちは今夜はここで野営する事に決め、準備に入る。



 たったひと山、たった川ひとつ越えただけなのに、肌に触れる空気が違う。

 暖かい、というわけではないが寒くもない。

 もう今夜は結界だけで、ストーブはいらないだろう。

 アンナリーナはいつものようにテントを出し、焚き火を焚いて夕食の準備を始めた。


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