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123『討伐』

「さて熊さん、熊さんが遅れをとるとは思わないけど……一丁、暴れてくる?」


「おうよ、久々で腕が疼くぜ!」


「なるべく殺さないでね」


 アンナリーナは不安である……あの戦斧で殴ったら、おそらくイチコロだろう。

 そうこうするうちに、盗賊たちの気配を感じ始めたセトやイジが結界の外に足を踏み出し、それに後のものが続く。

 テオドールにも、今まで感じた事がない闘気が迸り、アンナリーナの方が胸がドキドキしてくる。


「じゃあ皆、行ってらっしゃい」



 それはカツンと結界に矢が当たった音だった。

 アンナリーナは一歩、後ろに下がり、後のものが散開する。


「ダージェさん、ボリスさん、どうぞ馬車の中に。

 彼らに任せておけばすぐに片付きますから」


 アンナリーナにそう言われても動けずに、目を奪われているダージェたちの視線の先では、まずはアマルが……正確にはアマルの触手が動いた。


 目にも留まらぬ速さで動いた触手が、軽く触れるだけで盗賊が崩れ落ちる。

 そのまま、どうにか立ち上がろうともがく盗賊にもう一度触れると完全に動かなくなった。


「リーナちゃん、あれはどうなっているのだね?」


「あれはアマルのスキル【麻痺魔法】で、盗賊を動けなくしているんです。

 私がなるべく殺さないようにと言ったから加減の具合を図っているんでしょう」

 アンナリーナたちの一番近くではセトが、ごく細いレーザーで、ある盗賊の足首を撃ち抜き、同時に剣を持っていた側の肩も撃ち抜いて無力化していた。

 アラーニェは麻痺魔法と大鎌の両方を使い分け、得物を持つ手を切り落としていく。

 イジとテオドールは直接斬り結び、殺さない程度の力で峰打ちしていった。

 イジの膂力は並外れており、テオドールは戦斧を用いている。

 あっという間に盗賊たちの、ぐったりと倒れた姿で周りが埋まり、だがたった一人をも逃さないと従魔たちは盗賊を追い詰めていた。

 そんな中、アルゴを見つけたのはアラーニェだった。

 及び腰で逃げ出そうとしているところをアラーニェの吐き出す糸で捉え、足元に転がす。この時アラーニェは己の本性……上半身は美しい女性、下半身はおどろおどろしい蜘蛛の姿でアルゴを見下ろした。


「ひいいいぃぃーっ」


「リーナ様を煩わせる不届き者。

 命を奪われない事、感謝せよ!!」


 ニィと笑ったアラーニェの口が裂け、鋭い牙が上下に生えたのを見て、アルゴは情けない悲鳴をあげて気を失ってしまった。



 翌日、出発前から話をつけていた憲兵隊が盗賊団を引き取りに来て、多少遅れたが無事出立することが出来た。


「旦那様、このままでは国境越えは、かなり夜に近くなりそうですが……いかがなさいますか?」


 盗賊団に襲われる、というハプニングがあったせいで、予定が狂ってしまっている。

 無理して国境を越えてもすぐに野営になりそうだ。

 それを危惧してのボリスの質問だった。


「今夜も野営をするなら……自国の方が良いだろう。この先の中継地はどこにある?」


 ダージェとボリスが相談し始め、アンナリーナは今夜の献立を考え始める。

 明日は初めての国【アグボンラオール】に足を踏み入れることになるのだ。

 楽しみで堪らない。


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