122『接触直前』
昨日ダージェは、アンナリーナたちが市で羽を伸ばしている間に、ギルドと憲兵隊に訪れていた。
それも、今日のアルゴの行動を予測しての事である。
それは、冒険者アルゴの今後の扱いであり、ダージェな馬車が町から出てからの対処のしかたである。
「それで、この場合はどうなるんですか?」
この手のルールに詳しくないアンナリーナが聞いてくる。
「昼間の、馬車に立ち向かった時点でアウトだ。あれが助けを求めてきたというならまた別なんだがな……
だから次に何か仕掛けてきたら、討伐対象だ」
「……その前に凍死するかもしれないけど。あれ?」
アンナリーナの、他の人間からは不可視の地図上に、ポツポツと赤い点が近づいて来ている。
それがアルゴと合流して、今まで薄いピンクだった点が真っ赤になった。
「……やっぱりあの人、盗賊団と繋がってたみたい。
今、合流しました」
「どうする? リーナ」
戦斧を撫でていたテオドールが闘いたそうにしている。
「とりあえず、放っておきましょう。
この結界を破る事は、インフェルノクラスの攻撃でも無理ですからね。
熊さんはもう少し待って」
それでも万が一に備えて結界を二重に張り、アンナリーナも椅子に腰掛けた。
『セト』
『そろそろか?主人』
『ええ、お願い』
短い遣り取りを念話で終え、アンナリーナはテントに目を移すとセトを先頭に、イジ、アマル、アラーニェの順に姿を現した。
特にアラーニェは、普段のドレス姿ではなく軽鎧姿で、その手には大鎌を持っている。
「アラーニェ! 今夜は一段と素敵!」
目を輝かせ、小走りに近づいてくるアンナリーナを見て、アラーニェは笑み崩れてしまう。彼女はそれほどこの “ ご主人様 ”が大好きなのだ。
「リーナ様、今宵は私も呼んで下さってありがとうございます。
精一杯、尽力致しますわ」
「うんうん、なるべく殺さないようにね。憲兵隊に突き出すつもりだから」
「では、生きていればどのような状態でも良いと言うことですね?」
「う、うん。そうだね」
「わかりました。お任せ下さい」
そこでアンナリーナは踵を返し、テントの中に入っていった。
目指すはツリーハウス、ネロが一人でいる筈の場所だ。
「ネロ、一人で留守番も何だから、あなたもいらっしゃい。
でも、その前に供与するよ。
【体力値供与】【魔力値供与】【スキル供与】雷魔法、そして【鑑定】」
ネロ(スケルトン、雄)
体力値 550
魔力値 470
スキル
威圧
雷魔法(雷球、ライトニングアロー、サンダーボルト、ライトニングバースト、ディバインスレイブ、ディスタージ、マイクロウェーブ)
昨夜のローブを身につけたネロを連れて、皆の元に戻ってきたアンナリーナは、見慣れないものを連れてきた彼女に戸惑う皆に紹介した。
「私の一番新しい家族【ネロ】です。
見た目はちょっとアレですがいい子なので、これからよろしくです」
「よろしくお願いします」
見かけはおどろおどろしいが、物腰は柔らかく礼儀正しい。
「す、スケルトンなんだね?
彼もリーナちゃんの従魔なんだね?」
さすが、ダージェ氏は大物だった。
盛大に顔を引攣らせながらも、スケルトンを受け入れている。
「従魔……うん、従魔、ですね」
死霊魔法を使って蘇らせたアンデッドの事を何と言うか、正確には知らない。
テオドールからも物言いたげな視線がビュンビュン飛んで来ていた。
「とりあえず、他の子たちが攻撃したら、盗賊団なんて爆散しちゃうから、この子がちょうどいいかなって思って連れて来たの」
それを聞いてテオドールは納得したようだが、ダージェとボリスはまだ戸惑っているようだ。
そこに。
『主人様、愚か者どもが動き出しました』
ナビからの情報が合図となり、従魔たちは戦闘態勢に入った。




