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117『シュトピア到着』

 ジリジリとその距離を縮めながら、見えない結界内のアンナリーナたちを取り巻いている盗賊たちを尻目に、中では初めて食べるコロッケの味と食感に盛り上がっていた。


『これはヒットだったね〜』


『主人様、ではあと同じものを3台購入なさるのですか?』


 今、アンナリーナはナビと念話で遣り取りをしている。

 最近は安心して統括を任せているナビは、もはや片腕と言って過言ではない。


『うん、宿屋に落ち着いたらね。

 あと、ネロはどうしてる?』


『ずいぶん動きも滑らかになってきました。言葉こそ話せませんが意思の疎通は完璧ですね。

 生きていた頃の記憶が残っているのか読み書きが出来ますので』


『それは凄い!

 次に供与するときには体力、魔力共に100を超えそうだから、何か変化があるかもしれない』


 宿のある町に着くのが楽しみである。



「忘れてたけど、盗賊さんたちはまだやって来ないのかしら?」


 忘れてたのかとテオドールが突っ込む前に、アンナリーナが【探査】している。


「ふうん、諦める気はないみたいね」


 翌朝、まだ襲ってきていなければ馬車で突っ切って、引き離してしまう手もあるのだが、ずっと追いかけられるのも鬱陶しい。


「やっぱり処分してしまった方がいいかな……ねえ熊さん、本当に誘拐屋じゃないんだよね?」


「違うな。

 それに本来、誘拐屋でも討伐は有りなんだぜ?」


 アンナリーナは【ベルネット・プルルス】との付き合いがあるため誘拐屋に忌避感はないが、本来盗賊も山賊も誘拐屋も討伐対象なのだ。


「じゃあ、向こうから襲ってきたら遠慮なくやらせていただくかな」


 実にのんびりとしたものである。




「うわぁ、凄く大きいね!

 王都の城壁より大きいんじゃない?」


 あれから2日、アンナリーナたちは今、ハルメトリア国最南端の町シュトピアの城壁を前にしていた。

 例の盗賊たちは付かず離れずと言ったところで、アンナリーナたちがこの町に入るのを窺っている。

 気持ち悪いが仕方ない。



「ようこそ、シュトピアへ。

 こんな季節によくたどり着けたな」


 門番は、半ば呆れている。


「どうしてもアグボンラオールに行かなくてはならなくてね」


 そう言ってダージェが、自分とボリスの身分証とアンナリーナとテオドールのギルドカードを差し出した。


「それと彼女の従魔がいるのだが、申請はギルドで良いのかね?」


 門番の兵士に肯定されて、馬車は動き出す。

 この後、いつも通りギルドに立ち寄った一行を、物陰から覗く者がいたのに気づく事はなかった。


「2人とも、ここでは2泊するのでそれぞれゆっくりしてくれ」


 今夜の、馬車と厩舎の夜番はイジに任せた。

 早々に夕食を済ませて、結界を張って部屋に戻る。


「明日は朝から市場を見て回りたい。

 熊さんは何か用事はあるの?」


「まぁ……リーナの護衛だな」


「ふふ、よろしくね。

 じゃあ、私はあっちに行くからおやすみ」


 宿屋の2人部屋の真ん中に、ドンとその存在を主張しているテントに、アンナリーナが入っていく。


「リーナ」


「ん?何?」


「もうこっちには戻って来ないのか?」


 置いていかれる子供のような、なんとも言えない寂しそうな表情のテオドールを見て、アンナリーナが微笑んだ。


「じゃあ、テントの方に戻ってくるから、大人しく待っててよ。

 お酒は自由に飲んでもいいけど、酔っ払いは追い出すよ」


 クスクス笑いながら、アンナリーナがツリーハウスに戻っていくと皆揃って出迎えてくれた。


「皆んなお疲れ様。そしていつもありがとうね。

 今夜はネロのステータスを供与します【体力値供与】【魔力値供与】【鑑定】」


 ネロ(スケルトン、雄)

 体力値 160

 魔力値 120


「ネロ、どんな感じ?」


 ギシギシと顎が鳴り、スケルトンの口が開いていく。


「ア、ルジサマ……」


「おめでとう、ネロ。

 話せるようになってよかったね。

 次はこれ、食べてみて?」


 アンナリーナが取り出したのは、サクサクのラングドシャだ。

 アラーニェがお茶の用意に立ち上がる。


 白い、骨だけの指がさりげなくラングドシャをつまみ上げ、口に運ぶ。

 シャクシャクと咀嚼し、ゴクンと嚥下して……それはどこ行った!?

 この後お茶も飲んだが、漏れ出した気配はなし。

 ネロが飲み食いできるのは確かだが、それがどこにいくのかは……謎だ。


「でもこれで一緒にご飯が食べられるね」


 ついにネロが、食事と会話の能力を得た瞬間だった。


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