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114『とうとう脱出!』

 ようやく天候が回復の兆しを見せ始め、この洞窟とも別れがやってきた。


 前夜からの準備は万全で、早朝から出発に向けて粛々と進んでいく。

 ボリスとイジ、そしてテオドールが洞窟内をきれいに片付け、残されたのは馬たちの敷き藁のみ。

 馬車の点検も終わり、次は馬たちに飼葉と水を与え、アンナリーナはポーションも与えた。


「今日は頑張ってもらうからね。

 ちょっと無理させるかもしれないけど、ごめんね」


 この後、ボリスがイジの手を借りて、馬体に毛皮のカバーを着せ掛け、脚にレッグウォーマーを巻きつける。

 現在外気温はマイナス15℃。

 これでも馬にとっては過酷だろうと、アンナリーナが急遽作ったものだ。


 人に対しても、ダージェとボリスにはヒー○テックのシャツとタイツを与え、靴下は2枚重ね。

 ハイネックのセーターにダウンのベストに外套を重ね、毛皮の帽子にブーツという完全防備だ。


 この洞窟の中では最後の朝食を取り、先に馬車の中を暖めるために着けていた魔導ストーブを消して、インベントリにしまい、ダージェとボリスに先に乗ってもらった。


「リーナ、本当に大丈夫か?」


「あとは結界を縮めるだけだから、ひとりで大丈夫だって。

 反対に熊さんがいたら出来ないよ」


 テオドールを押し込むようにして馬車に乗せると、イジに向き直る。


「イジだけを危険な目に合わせてごめんね」


「ご主人様、俺はあなたの役に立てて嬉しいです」


「結界は完璧なはずだから。

 そしていつも念話で繋がっているからね」


「そしてセト。

 一番大変なお仕事を押し付けてごめんなさい」


「なんの! 主人がやると言われるよりはずっとよい。

 大船に乗ったつもりで任せて欲しい」


「じゃあ、始めるよ」


 まずセトを結界で包む。

 そして馬車の結界を少しずつ縮めていき、最後は馬や馬車にほとんど隙間なく張る事が出来た。

 これを通り抜けられるのは、張った本人であるアンナリーナのみ。

 一時的に寒気に晒されたアンナリーナは身震いしながら馬車に乗り込んだ。


「じゃあ、セト。始めて!」



 アンナリーナの号令とともに、セトの口からレーザーが発射される。

 ジュっと音を立てて一瞬で蒸発する、今まで外の空気を遮断していたカチコチに凍った雪。

 あっという間に馬車が通れるほどの穴が空いたが、念のため洞窟の穴の氷をすべて溶かした。


「では、出発しましょう。

 イジ、お願い」


 その言葉と同時にセトの身体がゆっくりと浮き上がる。

 そのまま、馬車を先導するようにゆっくりと飛び、目の前の凍りついた路とは言えない路の雪をレーザーで蒸発させながら進んでいった。

 アンナリーナは馬車の中からセトとイジに、念話で指示を出している。


『セト、そのまま真っ直ぐ行くと街道に出るの。様子を見ながら進んでくれる?』


『了解』


 レーザーを吐きながら、セトは返事を返してくる。

 この時、あたり一面真っ白なので、アンナリーナの探査は欠かせない。


『イジ、馬たちの様子は?』


『ご主人様のお陰で楽そうです』


 実はアンナリーナ、風魔法で軽く後ろから押している。

 足元が不確かなので、いつものように浮かすことが出来ないが、力を軽減させることは出来る。


『この凍結地帯を脱出するまで気を抜くことはできないけど、お願いね』


『はい、お任せ下さい』


 この後、街道に出たセトと馬車は街道の凍りついた雪も蒸発させて進み、街道沿いの中継地に着いたのは深夜になってからだった。


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