113『依頼達成後のプラン』
丸一日の休みは、いいリフレッシュになったようだ。
もちろん外のことは【天候予測】で細かくチェックしていたし、それで状況は把握できていた。
「マイナス80℃……」
これは前世の地球での、世界で一番寒い村の最低気温より低い。
機密性の高い屋内で、暖炉の火を絶やさずにいれば何とか耐えられるかもしれないが、この世界の一般の人間では難しいだろう。
とりあえずアンナリーナたちは、ここである程度まで気温が上がるのを待つしかない、ということだ。
「心配かけてごめんね」
アンナリーナのベッドに腰掛けて、テオドールは強張った笑顔を浮かべている。
「いや、俺こそ気づかなくて悪かった」
テオドールはそう言うが、今回に限っては本当に突然 ” 来た ”のだ。
事実、お好み焼きを焼いて、食べている時には何ともなかった訳だし、結果論だが、この寒気の中馬車で移動中でなくて本当に良かったと思う。
「うん、昨日は一日大人しくしていたから、すっかり良くなったの。
今日もセーブしながらやっていくから」
そう言って立ち上がったアンナリーナは、今は部屋着のままだ。
アラーニェの手による、厚手のアラクネ絹のチュニックとスラックス。
前面に花の刺繍の施された綿入れのロングベスト。そして室内ばき。
そのままの姿で洞窟内に姿を現したアンナリーナに気づいて、ダージェが駆け寄ってきた。
「リーナちゃん、もういいのかい?」
「ご心配、おかけしました」
少しだけクマの残る顔で笑んで、ぴょこんと頭を下げる。
「でもちゃんと外の様子は “ 視て ”ましたからね」
今ダージェとボリスはアンナリーナの提案を受けて、箱馬車の荷物スペースを片付けて固定している。
最悪の場合、ここにテントを設置して緊急の避難場所にするつもりだ。
「熊さん、こんな旅の生活もいいね」
元々、魔獣の森から旅を続けて来ていたアンナリーナだ。
そして厳重な結界を張る事が出来、いつでもどこでもテントを出す事が出来るアンナリーナにとって、こう言っては何だがごっこ遊びに近いのかもしれない。
旅のパートナーがテオドールだけならば何も気を使うことはないのだ。
「アグボンラオールの王都に着いたら馬車を買おうかな……
そして召喚魔法で馬車が引けそうな魔獣を召喚するの。
帰りはこの気候もマシになってるだろうし」
ニコニコとしながらアンナリーナが、夢見がちに語る。
アンナリーナなら、彼女なら望む事はほぼすべて叶うだろう。
今までの生活を捨てて、アンナリーナの隣で生きることを考え、テオドールの胸は高鳴った。
「ああ、いいな……それ」
「でしょ?でしょ?
どんな魔獣がいいかな〜
空も飛べる方がいいよね?」
「だとしたら鳥系魔獣か……
エピオルスなんかいいんじゃないか?」
エピオルス。
全長3mはある、前世のダチョウに似た魔獣だ。
だが違うのは飛ぶ為の羽がある事だ。
彼らはその巨体を、羽に風魔法を纏わせて飛ぶ事が出来る。
だが普段は陸を疾走する、草食の魔獣だ。
「楽しみだね」




