108『異世界からの娯楽』
翌日には我慢出来なくなったボリスがベッドから出てうろつきだし、もう留めておくことを諦めたアンナリーナは【解析】して回復を確認して、許可を出した。
外は相変わらずの吹雪。
外気温は多少上がったが、風は変化なく、むしろ外の体感気温は下がっている。
今までテオドールがしていた馬の世話はボリスと2人になり、手が空いたテオドールはイジとともに洞窟の奥に探検に行った。
そしてダージェは……暇を持て余しかけていた。
この旅に持ってきていた、数少ない本はもう何度も読み返している。
そんな、手持ち無沙汰な彼を見て、アンナリーナは何か暇つぶしのものはないかと考えてみた。
「あ、あれだったら何とかイケるかも!!」
テントに駆け込み、ツリーハウスに向かう。
そして【異世界買物】を展開し、決して短くない時間を費やした。
「ダージェさん、ちょっといいですか?」
もう、何度目かわからないほど目を通した納品リストから顔を上げ、アンナリーナを見る。
リストを懐にしまい込んで居住まいを正した。
「リーナちゃん、どうしたんだい?」
ずっと暇にしていたのだ。
アンナリーナから話しかけられて嬉々としている。
「ダージェさん、退屈そうだから、いいもの持ってきました」
そう言って、まずアイテムバッグから取り出したのは、チェスなどのボードゲームをするゲームテーブルの、サイズの大きいものだ。
「リーナちゃん?」
「まずは小さいものから……」
次にアンナリーナが取り出したのは、役25㎝×18㎝の、鮮やかな絵柄の箱だ。
「リーナちゃん、これは?」
「これは……あまり詮索しないでいただくと助かります。
そして、極秘です」
信用していますよ、と念を押されて、ダージェはこの件に関しては口を閉ざした。
「これはパズルと言って……」
包装フィルムも中袋も取り去ったパズルを箱をひっくり返してテーブルに出した。
「この小さいのが108個あって、ピッタリ合うのを並べていくと」
蓋に描かれていたのは前世地球の名画シリーズで、有名な庭園の蓮の花だ。
「遊び方はこうです。
まずは外枠から完成させます。
こうして一片が直線のものを選んでいきます。4角だけは直角になっているから、ここから始めたらやりやすいかな?」
アンナリーナがこれだけを説明しただけで、はやくもダージェは食いついている。
「これで少しは暇つぶし、出来ると思いますよ」
ジグソーパズルに食いついたのはダージェだけではなかった。
ボリスと、何とテオドールまでが爛々と目を輝かせてダージェの手元を覗き込んでいる。
アンナリーナは仕方なく、あと2人分ジグソーパズルをチョイスする事にしたのだ。
「これは禁呪がらみなんです。
だから私たちの間だけの話にして下さい」
禁呪と言われれば黙るしかない。
商売っ気は抜きにして、単純に楽しむ事にした。
どういう手法で描かれたのか、精密な絵と、複雑な形にそれでも正確に切り抜かれているピース。
気づくと夢中になってピースを並べて、かなり苦労したが絵が完成した時、その達成感は言葉に表せないほどだった。
こうして異世界のジグソーパズルは、人知れずこの世界に持ち込まれたのだ。




