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106『雪崩』

「現状の説明をさせてもらいます」


 熱々の食事で、腹の中から温まった男たちは、アンナリーナに目を向けた。


「外は吹雪……外気温は相当低くなります。私たちは、少なくても吹雪が止むまでここから出て行けませんが、2〜3日の間は体調を整えたいと思います」


「どのくらい寒くなるんだい?」


「撒いたお湯が瞬時に凍るくらい、ですね」


 3人は、想像してみて……寒気に震える。


「そして、本当に気をつけなくてはならないのは、雪が止んだ後です。

 ……冷たい空気が上空に留まっていた場合、晴れの夜が最も冷え込むのです。

 この場合は……今回は、人が生きたまま凍るほどの寒波が来ます」


「やはり、こんな真冬の旅は無謀だったんだな。皆、済まない」


 何やらダージェがネガティブな方に自己完結している。


「ダージェさん?

 雪さえ止んで、馬車が走れる路が確保出来たら問題ないですからね?」


「俺らは助かる?」


「はい、全然問題ありません。

 だから今夜はお酒でも飲んで、ゆっくり休んでくださいね」


 アイテムバッグから恭しく取り出した瓶に、テオドールの目が輝く。


「あの酒か! 確かブランデー!」


 これは温めないでね、と言ってテーブルを置くと、すでにテオドールの目の色が変わっている。


「何か、つまみになるものを用意してきますね。熊さん、あとお願い」



 酔っ払った男たちは高いびきをかいて眠りこけ、アンナリーナはイジを見張りに立てて、久しぶりにテオドールの腕に抱かれてぬくぬくと眠っていた、真夜中。

 突然の地響きと轟音に飛び起きた一行は、ほぼ同時にテントを飛び出した。


「イジ! 何事っ!?」


 未だ、岩肌を削るような轟音は続き、洞窟の入り口からは白いものが吹き込んできている。

 ……それは、始まりと同じように突然終わり、あたりに沈黙が訪れた。


「これは……雪崩?」


 真夜中であったため落としていた魔導灯の光を強くし、結界から出て近づいていく。

 そして押してみるが、当然の事ながらびくともしない。


「終わりだ! 完全に閉じ込められた!」


 パニック状態になったダージェが、頭を抱えて蹲り、ボリスは硬直して動かない。

 テオドールすら、騒ぎ立てはしないが厳しい顔つきが変わることはない。


「大丈夫ですよ」


 アンナリーナはそう言って、自分より遥かに大きいダージェを助け起こした。



 今夜はツリーハウスに返していたセトとアマルを連れて、再び雪の壁の前に立ったアンナリーナはその雪に触れ、2匹の方に向き直った。


「セト、直径3cmの穴でレーザーを貫通させて下さい。

 アマルはそのあと、雪にどれほど覆われているか、触手を伸ばして測ってちょうだい」


 そしてアンナリーナは結界の中に戻り、セトの作業を見守った。



 セトの口から放たれる “ レーザー ”は青い光線だった。

 それが一瞬にして雪を蒸発させ、穴を穿っていく。

 それは長いような、短いような、見るものの心を捉える光景だった。


「セト、ご苦労様。

 次はアマル、お願いね」


 するりと伸びていく触手が雪に触れてピクリと震える。

 そしてゆっくりと触手が穴の中を進んでいき、しばらくして止まった。


「アマル、ここでいいの?」


 ふるふると震えて合図する、その触手に、穴ギリギリにリボンを結んで、そして引き抜いてもらった。


「4m86㎝……約5mか。

 オッケー、ありがとう」


 この程度なら、セトのレーザーを使えば問題なく排除できるだろう。

 現時点ではちょうど良い扉代わりになる……災い転じて福となす、は言い過ぎかもしれないが。


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