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100『トンカツ→カツとじ丼』

 激しかった音が収まり、カツの周りから上がる泡が小さくなった。

 衣は狐色になり、アンナリーナはトンカツの油を切るために荒い網に乗せた。

 続けて後3枚も引き揚げて、油を【洗浄】する。

 そしてまた、4枚入れると油切りしていた1枚を取り分け、包丁を入れてみる。


「ふわぁ、いい感じ」


 中はほんの少しピンクがかっていて、火が通ったギリギリの状態だ。

 アンナリーナ は、油切りを確認してから、今揚げたてのトンカツをアイテムバッグに収めた。


「さて、どんどん揚げていこうか。

 アマル、お手伝いお願いね」


 別のコンロに鍋を置き、温め始める。

 今夜のスープはくたくたになるほど煮込んだ玉ねぎと、パセリのみじん切りが浮いただけの、シンプルなコンソメスープだ。

 そしてパンは黒パン。

 たっぷりのキャベツの千切りは、最初に皿に盛り付けた分の他に、ボウルに山盛りとトングを添えた。

 あとはソースだ。

 ウスターソース、中濃ソース、とんかつソース、その他アンナリーナの好みでお好みソースや八丁味噌をベースにした少し甘めの味噌ソース、

 あと、マヨネーズやケチャップを用意した。それから練り辛子も。



「皆さ〜ん、夕食出来ましたよ〜」



 テオドールは食べたことがあるが、ダージェたちは初めて見る料理だ。

【トンカツ】

 見たこともない形状の食べ物は、各自ナイフで切って食べる。


「ソースは色々あるから、試してみて下さいね」


 まずはテオドールがトンカツソースに辛子というテッパンの組み合わせで食べ始めた。


 サクっという一口目の噛んだ音に、それに続く咀嚼音。


「うー、美味い!

 相変わらず美味いわ。

 リーナ、俺ビールが欲しい」


 トンカツには温かいぶどう酒よりビールが合う。


「ビールだと身体が温まらないんじゃない?

 焼酎のお湯割りでも出そうと思ってたんだけど」


「揚げ物と言ったらビールだが、その湯割りも捨てがたいな。

 腹の中がギュッと温まる気がする」


 酒の種類を論議している2人を見ながら、ダージェは恐る恐るトンカツを口に運ぶ。


 サクっ。

 先ほどの、テオドールと同じ音がして口の中に肉汁が溢れ出す。

 オークのロース肉で作られたトンカツは、その柔らかな肉質と脂の甘みが相まって絶品だ。


「美味いっ!!」


「何なんですか? これ」


 ダージェとボリスが驚愕していると、アンナリーナがカップを差し出した。


「熊さんはともかく、ボリスさんは冷えているでしょう?

 これは酒精が強いお酒をお湯で割ったものです。

 温まりますよ」


 青く小さなみかんのような柑橘類を4つに割って、搾り入れる。

 ダージェの分と合わせて二杯、それぞれの前に置いた。


「トンカツはソースをかけたら美味しいですよ。

 キャベツも一緒に食べれば、口の中がさっぱりします」


 勧められるままにひとつひとつ試していって、落ち着いたのはやはりとんかつソースと辛子。

 酒のあてとしてはこれがベストなのだろう。

 アンナリーナは、それぞれのトンカツがなくなりかけるとまた新しいカツを取り出し、給仕していく。

 同時に、セトとイジとアマルにも与えて、自分も舌鼓を打った。


 席を立ったアンナリーナはミルクパンに出汁と合わせ調味料を入れ、薄切りの玉ねぎとともに煮立てる。

 玉ねぎに火が通るとトンカツを入れ、溶き玉子を流し入れる。

 そして、深めのスープ皿にご飯をよそい、玉子が半熟のトンカツをその上にのせた。


「カツとじ丼のできあがりー!」


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