87『雪の中の洞窟』
アンナリーナは、王都の外部に広がる森林の中にも転移点を持っていた。
ユングクヴィストの元から戻って来たアンナリーナが支度を始める。
「リーナ様、どこにお出かけですか?」
言われるままに防寒の装備を調えていたアラーニェが尋ねてくる。
「ちょっと外の森に行ってくる。
セトとイジを連れて行くから心配しないで」
何事か言いたげなアラーニェに、アンナリーナが微笑みかける。
「雪割草は雪の中でしか咲かないの。
私は【防寒】のスキルも持っているし、危険な事もしないわ」
裏地に毛皮を使ったローブを着せ掛けられた。
転移点から【飛行】を使い、ユングクヴィストに教えてもらった森の深部に向かっていた。
……雪の中でしか咲かないという、その希少さゆえに高値で取引されるが、アンナリーナは純粋に自分が使うためにストックしたいのだ。
だから今、アンナリーナが【探索】して雪割草を探し、セトとイジが雪を掘り返して採取する。
アンナリーナはそれを瓶に入れ、アイテムバッグに収めていった。
「主人、どのくらい集まったか?」
セトが、その爪で雪割草を傷つけないように、そろそろと掘っていく。
「ここは結構群生してたから、ずいぶん集まったかな?」
アイテムバッグのインデックスで数を確かめる。
「ん〜 68本か、もうちょっと欲しいかな」
瓶は十分持ってきている。
アンナリーナは再び探索で周りを探した。
「あれ?」
森の外れの岩場に洞窟を見つけたアンナリーナは休憩にちょうど良いと、2人を誘う。
そろそろ昼時だろうと見当付けて、洞窟に向かった。
「ん、いい感じの洞窟だね」
雪の吹き込んでいない、土の乾いた場所に入り、暖をとるのを兼ねて魔導コンロを出した。
そして小型の鍋に作り置いた鶏ガラスープを移し、あらかじめ刻んできた、生姜、エシャロット、ポロねぎ、ウインナーを入れて煮立たせる。
セトのために厚切りハムを炙っているとイジも欲しそうだ。
「いっぱいあるから、2人ともたくさん食べて?」
次に、アンナリーナはロールパンを炙っている。
これは中に入れ込んだバターを溶かすためだ。
口に入れて、うっとりとする。
「自画自賛になるけど……美味しいーっ」
賑やかな食事の時間が終わり、洞窟の奥を探索してみようという事になった。
「【探索】
んん、植物系の素材を表す緑の点がいっぱい!
あれ?白い点って何だろう?」
イジが前、セトが後ろに位置して奥に進んでいく。
まもなく暗闇のはずの洞窟の奥が淡く輝き始める。
「やった!
目当てのアレがありそう!!」
急に走り出したアンナリーナに並ぶようにして、イジが続く。
そして目にしたのは洞窟の壁面いっぱいに広がった、光り輝く苔だった。
「やっぱり【蛍光苔】だ!
これって貴重なんだよ。
頑張って採取しちゃう!
ほら、イジも手伝って!!」
アイテムバッグから採取用のコテと袋を取り出す。
イジに採り方を教え、自分も採取し始めるとあっという間に時間が経っていった。
「ああ、白い点ってこれだったのか」
吐息交じりの、落胆した声。
アンナリーナの眼前には壁に寄りかかるような格好の骸骨があった。




