71『入学への道?』
「そなたは姉弟子様の弟子だったのだね」
暫しの、暫しの間、残存魔力との邂逅を噛み締め、ようやく顔を上げた老教授は絞り出すようにそう言った。
「と、言うことは、姉弟子様はもう……」
「はい、この春に」
「……彼女の名はオッティリネリーナ・アダバンテスト。
儂の姉弟子で大賢者だった。
……そうか、リーナよ。
そなたの後見は儂が引き継ごう」
「ありがとうございます」
いささか湿っぽくなってしまったが、印章の事に話は戻る。
「姉弟子様の魔力や、契約魔法に反応して、左耳の上に浮かぶのがそなたの紋章だな。
それを写して印章にすれば良い。
どれ、ちとお待ち」
自身のアイテムバッグから指輪をひとつ取り出して、アンナリーナの左の耳の上にかざすと、紋章が浮き上がる。
それに向かい呪文を唱えると指輪の印台が刻まれていき、紋章が写し取られた。
「ほい、出来上がり。
本来は姉弟子様が造るものだが……儂が代わりをさせてもらった」
「あ、ありがとうございます」
アンナリーナは感激に目を輝かせる。
「何の。
それから、この後、儂の内弟子として研究棟への入室を許す。
もう、別に学院に通わんでも良いのではないのか?」
「いえ、もしも入学を許して頂けるなら、私は色々な勉強をしてみたいのです」
向学心が旺盛なアンナリーナが、きっぱりと言い切る。
「それでですね、少しご相談があるのですが」
アンナリーナは、この学院が建前上では全寮制だと聞いていた。
だが、出来れば町に家を借りてそこから通学したかったのだ。
しかし帰ってきた答えはにべもない。
「リーナ嬢、その件に関しては、当学院では王族の皆様も例外なく入寮して頂いているのです。
申し訳ないが特別扱いは出来ません」
「では、学内……具体的には寮で魔法を使う事を許可して頂けないでしょうか?
私、在学中にもポーションを卸さないといけないのです」
椅子がガタガタと大きな音を立て、面接官が仰け反った。
「錬金薬師……」
今更である。
「姉弟子様の弟子ならそうじゃろうのう」
実は最近まで魔法を使えなかったのだが、今は黙っておく。
「特別室なら問題ないが……高いぞ?」
学院長が長い髭に触りながら思案するポーズをとる。
「お値段ですか?
それは問題ないですけど……
あの、それから、もしその特別室なら従者?侍女?を伴っても良いのでしょうか?」
アンナリーナが前世で読んでいたラノベで、そんなシーンがあった。
「むしろ伴ってもらわないと。
専用の部屋もありますし」
「ええと、私の従者は従魔なんですけど?」
これもまた吃驚させたようだ。
「リーナ嬢は従魔士でもあるのですか?」
面接官はもう混乱の極みである。
「従魔か……ヒトガタかい?」
「連れてくるつもりなのはヒトガタとあとジェリーフィッシュを。
護衛は要りますか?」
「ジェリーフィッシュとはまた珍しいものを。
学院内では護衛は必要ないぞよ。
……ちなみに、好奇心から聞くのだがリーナ嬢の従魔とはどのような種がいるのだ?」
学院長は興味津々である。
「連れてくるつもりなのはアラクネーとジェリーフィッシュ、あとブラックリザードとグレーオーガがいます」
アンナリーナは従魔士としても一流なのだと、彼女の評価を一新した。




