表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
168/577

61『熊さんとダンジョンへ』

 ギリギリと音を立てるほど強く歯を噛み締め、アンナリーナの両肩を掴んでいるテオドールが目を座らせている。

 さすがに怖くなったアンナリーナが、口許を震わせながらも、笑顔を見せる。


「あれ? おかしいな……塞いだはずなのに」


 触れてみて、たしかに血まみれだが、もう傷はない。


「【洗浄】ほら、熊さん。

 もう傷はないでしょう?」


「俺が言ってるのは、怪我をしたって事だ! まったくわかってんのか?

 こんなんじゃ、とてもひとりで王都になんか出せないわ!」


 この話題に繋げられると、アンナリーナは弱い。


「うう〜 熊さんごめんなさい」


 ひたすら謝るしかない。


「一体、何でそんな怪我したんだ?

 今日はギルドに行くって言ってたよな?」


 溜息をひとつ吐いて、アンナリーナはギルドであった事を話しはじめた。



「ミルシュカの野郎、ぶっ殺してやる」


「熊さんが言うと洒落になんないよ」


 それでね、とアンナリーナは続ける。


「なんかむしゃくしゃするから、ダンジョン行って、いつものようにお肉狩ってたの。

 そしたら何度目かに突然、衝撃波が来て……気づいたらコレ」


 今はもう、血も傷痕もない頬に触れる。


「完全にイレギュラーだったんだよ。

 どういう法則で出てくるのかわからないけど、あれはヤバいわ」


 アンナリーナは真剣に、この事を報告すべきか考えている。




「本当に、本当に知らないよ?」


 結局テオドールに押し切られる事になったアンナリーナは渋い顔で睨みつけている。


 テオドールに、デラガルサのダンジョンへの同行を強要され、学院受験の取り消しまで持ち出されて、アンナリーナは渋々頷いた。

 本当に渋々だ。

 何故ならば今まで、従魔たちは一緒に転移していたがヒトは初めてなのである。


「じゃあ、行くね」


 今回は、後々報告の義務が生まれる可能性がある為、一度ダンジョンの外に転移して、入り口での登録をして入宮する事にした。

 もちろんテオドールはフル装備だ。



 酩酊感も何もなく、呆気ないほどの転移の後、アンナリーナとテオドール、そしてセトは昼なお暗い森の中に佇んでいた。


「おお! 無事に転移できたよ熊さん。何事もなく良かったね!」


 キョロキョロとあたりを見回すテオドールの腕に、アンナリーナは絡みつく。


「こんな形で実験のような形になってしまってごめんね。

 でもこれで、これからは一緒にダンジョン行けるね」


 アンナリーナは嬉しそうだ。




「お連れ様が一緒とは珍しいですね」


 入り口の詰所から兵士長が出てきて、ギルドカードを改める。


「そうですね。

 過保護な保護者なんですよ」


 手を繋いで、ルンタッタと中に入って行くふたり。見かけは微笑ましいがその会話は恐ろしい。


「熊さん、今【身体強化】かけさせてもらったから。2階層に降りたら一気に突っ走るよ」


 それから5階層までは【威圧】で一切の戦闘をせず、6、7階層は呆気なく退けた。

 テオドールはこの間、ほとんど何もしていない。

 そして、他の冒険者が一泊してようやく辿り着くこの場に、わずか3刻でやって来た。


「次は、ちょっと強めのミノタウロス……熊さん、殺ってみる?」


 ちょうど木陰から、戦斧を担いだミノタウロスが1匹、姿を現した。

 テオドールが一歩足を踏み出すと、戦斧を構えたミノタウロスがこちらに向かってくる。


 第一撃は互角だった。

 激突に火花を散らし、受け流すと互いに距離を取る。

 最初にそれを縮めたのはテオドールだ。

 ミノタウロスの一撃を受けると、そのまま今度は上方に向かって、戦斧を振り上げる。

 その刃はミノタウロスを逆袈裟に切り裂き、テオドールの記念すべき第一戦は、圧倒的な勝利に終わった。


「わ〜 やったー!熊さんかっこいい!!」


 近づいたアンナリーナが【血抜き】してインベントリにしまい込む。


「いつもはこの階層にテントを張ってお肉を調達するんだけどね」


 そそくさと9階層に続く階段に向かい、そこを降りていった。



「ここが例の9階層。

 とりあえずまだ、階段から出ないで」


 先ほどは、階段にいても衝撃波にやられたのだが。

 様子を見ながら一歩足を踏み出すと、途端に村の中の動きが始まる。


「ああ、今回は普通ね」


【探索】で、他の冒険者がいないか確認する。

【結界】で、村全体を覆う。

【サファケイト】目に入る範囲のミノタウロスやオークがバタバタと倒れていく。その様をテオドールは目を見開いて見ていた。


「この階は足を踏み入れた途端、オークたちが動き出すの。

 その数、10や20できかないよ。

 だから【広範囲殲滅魔法】がいるわけ。今のは【サファケイト】と言って結界内の空気を無くし、酸欠にして屠る魔法。

 あと【血抜き】して、一丁上がり」


 なんと恐ろしい魔法だろうか。

 テオドールは震撼した。


「あとはお肉と、持ってた斧を回収して終わり。これを延々と繰り返してたの」


 その後、試しに何度か繰り返し、上位種が出てきたところで同じように処理し、今日の探索を終える。

 あとは、行きよりもスピードを上げダンジョン入り口に戻ると、さっさとデラガルサを後にし、テオドールの部屋に戻ってきた。


 部屋の主は蹲って、唸っている。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ