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45『兵士のお願い』

 デラガルサ・ダンジョンの第9階層、アンナリーナによる通称 “ ハンバーグ村 ”

 今までアンナリーナは、ハンバーグの材料もといオークやミノタウロスにしか興味を示さずにいたが、今回はこの9階層すべてに目を凝らしていた。


 この階層は今までの階層と違って格段に広大だった。

 ハンバーグ村だけでなくそれを取り巻く森林や草原まである、異例ずくめの階層だ。


「主人様は本当に、興味のあるものにしか目がいかないのですね」


 ナビがしみじみ言うように、今までも表示されていたはずの、森や草原での魔獣や素材に無関心だったアンナリーナが、今日初めて目を向けた。


「えへへ……

 浅い階層でも、ちょくちょく採取してたけど、ここは品質がいいよね。

 やっぱり魔力の濃い場所の素材は効力が上がるのかな」


 道端に生えていたオメガ草を手にとって【鑑定】する【最良】判定される。

 普通の森では滅多に見ない【最良】で作った回復薬やポーションは効能が上がるのだ。


「魔獣の森の素材も価値が高いですものね。

 このダンジョンも、もっと下の階層が楽しみですね」


 事と次第では本気で別宅を置こうかと思うアンナリーナだった。



 ダンジョンに潜っていても、アンナリーナは快適な生活を送ることが出来る。

 だがそれはアンナリーナだからであって、それ以外のものは少しづつ攻略を繰り返し、下層に臨んで行くのだ。


 2日間、8階層にテントを置き、9階層と行ったり来たりを繰り返して、ふと思いつく。


「私、ハンネケイナを出て何日経ったかな?」


「8日目、でしょうか。少し長いですかね?」


「そろそろ帰らないと熊さんたちがうるさいかな?

 中級Cポーションはいっぱい出来たけど」


「どうなさいます?」


「うん、ちょっと帰ってみようか」




 ダンジョンの入り口で、監視役の兵士に挨拶して出て行こうとした時、1人の兵士から声をかけられた。


「薬師殿、ちょっとよろしいか?」


 ダンジョン入り口の側に作られた詰所に案内され、椅子を勧められた。

 アンナリーナは、いつものようにアイテムバッグから茶器を取り出し、お茶を淹れる。

 先日、たくさん焼いたクッキーを茶菓子に、お茶の時間だ。


「実は、ある冒険者パーティが行方不明になっているんです。

 何か、思い出される事はありませんか?」


「ひょっとして6人パーティ?

 治癒師の人がいる」


「それです、お会いになりましたか?」


「会ったけど……もう3日経ってるんじゃないかな。

 ほら、前回私がこのダンジョンから出てきた時、あの前夜に少しお話したけど」


「そうですか」


 兵士は黙り込んでしまった。


「あれからまったく上がってきてないのなら……ちょっとヤバいかも、ですね。あの人たち、もうあまり装備に余裕なかったみたいだし、怪我人も抱えてましたしね」


「会ったのは何階層でしたか?」


「8階層ですね。

 私が起き出してきた時はもう姿が見えなかったので、上に戻ったのかと思ってたんですけど、下に行ったのでしょうか?」


 兵士は考え込んでいる。


「翌日ここに戻ってきて、9階層まで行った時は見かけなかったんですけど、もっと下まで行ったのかしら」


「薬師殿……9階層まで行ってらっしゃるのですか。

 ……薬師殿、誠に虫の良い願いだと思っておりますが、どうか我々に同行願えないでしょうか?」


 まさかの懇願である。


「結構、強行軍ですよ?

 付いてこれます?」


 彼らは、アンナリーナがブラックリザードを連れているのを知っているので驚かない。


「よろしいのですか?」


「乗りかかった舟でしょ、無視できないじゃん」


 兵士たちの準備を待って、アンナリーナは再びダンジョンに潜っていった。


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