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21『家族との夕食』

 宿に戻ってきたアンナリーナはまず階下に降りて女将たちのもとに顔を出す。


「リーナちゃん!もう大丈夫なの?!」


 洗い物をしていた女将がエプロンで手を拭き拭き、厨房から飛び出してくる。


「はい、ありがとうございます。

 えっと、あのですね。

 夕食は皆で摂りたいので多い目にいただきたいのですが」


 彼女らはアンナリーナがアイテムバッグを持っている事を知っているので、差し出された鍋にいっぱいシチューで満たした。

 薄切り肉と豆のトマトソース煮や小型のトサカ鳥の腹に詰め物をし、煮込んだものも、新たに出した鍋に入れてくれる。

 ボウルいっぱいの豆とアボガドのサラダ。籠いっぱいのパン。


「こんなたくさん、いいのですか?」


「もちろんよ。

 実は今日あたり、もしリーナちゃんが降りてこなかったらこの料理を持っていこうと思っていたの。

 リーナちゃん……保存できるんでしょ?」


 アイテムバッグの事は口にせず、控えめに聞いてきた女将に感謝しながら、また鍋をしまっていく。


「これからも、言ってくれたらいくらでも作るから、ね?」


 事情を知っているものがいるのは助かる。

 アンナリーナは礼を言って、部屋に戻っていった。



 鍵をかけ、結界を張る。

 それからテントを経由して、セトも連れてツリーハウスに戻って来た。


「イジ、お待たせ」


 そう言ったアンナリーナの後ろに、軽く3mを超すリザードを見つけて、イジは卒倒しそうになる。


「わあ!イジ。

 違うの! この子はセト。今日からあなたの家族なのよ」


「オレノナハ、セト。

 シンパイシナクテモ、クッタリシナイ」


『イジとなづけてもらいました。

 よろしく』


「自己紹介は終わった。

 じゃあ食事にしましょう……

 今、下で料理をたくさんもらって来たの。セトも今日はその姿で食べる?」


「アルジ、キョウハガッツリ、ニクガタベタイ」


「じゃあ、オークの照り焼きか生姜焼きでもしようか?

 スライス肉がたくさんあるし」


 アンナリーナは、慣れ親しんだツリーハウスのキッチンが大好きだ。

 大きめの中華鍋を出して魔導コンロの火をつける。

 インベントリからオークの薄切り肉×3kgを取り出し、温まってきた中華鍋にオークの脂身を投入した。

 じゅわんと固体が液状になり広がっていく。肉を焼くときは食用油ではなく、その肉の脂身を使うのが、アンナリーナは好きだ。


 薄切り肉を中華鍋で炒め、火の通ったところで某社の生姜焼きのタレを回しかけて絡め、出来上がり。

 それを数度繰り返し、大皿山盛り2枚の生姜焼きが出来上がった。

 そしてテーブルに先ほど下の厨房からもらってきた料理を盛り付け、並べる。

 最後にパンは普通の黒パンに加え、自前のロールパンも取り出し籠に入れた。


「さあ、皆んな、いただきましょう。

 イジも出来るだけスプーンやフォークを使って食べてね」



 イジは目の前の光景が信じられないでいた。

 ゴブリンの村では、食事は生か、肉などは焚き火であぶるぐらいしかしない。食べるということは腹を満たすものであって、味わうものではないのだ。

 そのイジの横で、主人となったアンナリーナが料理を取り分けたり、甲斐甲斐しく世話を焼いてくれる。

 スプーンやフォークの使い方も教えてくれて、イジは生まれて初めてこのような美味しいものを食べたのだ。


 鳥丸ごとの煮物はコンソメ味でしっかりと煮込まれていた。

 アンナリーナが中の詰め物ごと1人分を取り分けて、あとは全部イジにくれたので、彼はそれを骨までしゃぶって味わう。


 目を潤ませて食べ続けるイジを見ながら、アンナリーナはいつもより少し増した食欲で、シチューをお代わりした。


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