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8『ギルドでのトラブル』

「今日はギルドに行くだけだから、セトとアマルはツリーハウスの方でお留守番していてね」


 いつも通り、ついて行く気満々だったセトは、多少元気をなくしたが、アマルはさっさと転移して行った。

 セトも不承不承後に続く。

 アンナリーナは、今日は女らしい装いで女子っぽくアピールしようとしたのだが、どう見ても……女の子だった。

 シンプルなデザインのロングワンピースは自ら染めた草木染で、綺麗なグリーン。

 襟元には同系色の精密な刺繍が施してあって、まるでネックレスのようだ。

 袖口と裾には繊細なレースがたっぷり使われているが表から見えるのはほんの少しで控えめだ。

 腰にはアクセントで、蔓植物を模した細めのベルトを緩く巻いている。

 靴はワンピースの共布で、刺繍も同じだが室内履きよりは丈夫に作ってあって、これには汚れ防止に軽く【防御】がかけてあった。


 アイテムバッグをたすき掛けにして、今日はいつものクリーム色のローブを羽織る。

 そして思い出したように、翡翠の球を繋げたブレスレットを左手首に着けた。

 髪はていねいにブラッシングして艶々だ。そして、シャンプーもコンディショナーも、ボディシャンプーも香油もすべて同じシリーズの薔薇の香りのものを使っていて、ほのかな香りを楽しんでいる。

 それがどれほど贅沢な事かを知らずに。



「女将さん、今日はギルドに行ってきます。

 えっと、お部屋には【洗浄】をかけておきましたから、お掃除はいいですよ」


 アンナリーナは鍵を渡しながらそう言ったが、もし来られても部屋には入れない。

 なぜなら鍵をかけたあと、結界を張ってきたのだ。

 そして、彼女は上機嫌でギルドへと向かって行った。



「お待ちしていましたよ、リーナさん」


 ドアを開けたとたん、待ちかねていたように近づいてきたドミニクスに、そのまま鑑定室へ連れて行かれた。

 今日は作業台が綺麗に片付けられて、瓶を入れる木箱も積まれていた。


「助かります。木箱を用意して下さって。それと空き瓶ってあります?

 もしあれば引き取らせて頂きたいのですが」


 ドミニクスとしても願ってもない事だ。

 それは、その空瓶に回復薬を詰めてもらえるという事なのだから。


「とりあえず回復薬は100本。

 麻痺、眠り、石化、毒、混乱の各状態異常解除薬を10本ずつ。

 あと調薬出来次第納品します」


「ありがとうございます」


 ドミニクスが鑑定しながら木箱に納めていく。


「確かに100本、すべて回復値100です。素晴らしいですね、ありがとうございます。

 そして状態異常解除薬。

 疑っていたわけではありませんが……本当にあるのですね」


 感慨深げにしみじみと、ドミニクスは瓶に見入っている。


「材料が結構手に入り難かったりして、特に石化はヤバイんですよ。

 だから大事に売ってくださいね。

 それから忘れずに、時間経過のないアイテムボックスで保存して下さい」


「リーナさん、まだ売り物はありますか?」


「それは追い追いという事で」


 アンナリーナが黒い笑みを浮かべる。

 結局、回復薬100本で金貨15枚、石化解除薬が10本で金貨100枚、他の解除薬が合計40本で金貨80枚になりびっくりした事は言うまでもない。




 ミルシュカは、あの新人がドミニクスと懇意にしている事が面白くない。

 そして彼女が薬師だと知って余計に腹を立てていた。


『あいつに邪魔立てされなければ、甘い汁が吸えたかもしれないのに』


 今までこのギルドに薬師が登録したことかなかった為、どの位の金額になるか想像もつかなかったようだが、今しがた、金貨195枚を稼いだ、などと知ったら怒り狂うだろう。

 だがミルシュカはまだ遅くないと踏んでいた。

 そしてアンナリーナの帰りを待ち受けている。


 鑑定室のドアが開いてアンナリーナが出てくる。そのまま会計に寄り、ドミニクスに渡された伝票を提出すると、すぐにギルドカードに金貨195枚が振り込まれた旨、記入された。

 アンナリーナ、現金はそれなりに持っているのでギルドに貯蓄する事にしたのだ。

 そして、素知らぬふりをして周りの冒険者たちの体力値を鑑定していく。


『580、690、395、742、1586、おお!こっちの人たちはすごい!

 4587、6240、3560、7835……』


 アンナリーナが素早く眼差しを巡らせて鑑定を続けていると、ミルシュカが席を立って近づいてきた。


「ちょっと、もう一度話を聞いてもらいたいのだけど」


 フードを取った、ミルシュカから見ると冴えない少女。

 その少女の髪は艶々で、薔薇の花の香りがほのかに漂っている。

 足元を見れば、光沢のある布製の洒落た靴を履いていて、ローブから出た手にはブレスレットまでしている。


『生意気!』


 ミルシュカの頭にカッと血が昇った。


「ねえ、あんた、聞いてるの?!」


 ミルシュカが、アンナリーナの右の二の腕を掴み引っ張ろうとする。


「やめてよ!!」


 振りほどかれ、同時に突き飛ばされたミルシュカはカウンターに、強かに体を打ち付けた。


「きゃあ!」


「おまえ、何すんだ!」


 周りの冒険者たちが殺気づく中【疾風の凶刃】の魔法職2人が素早くその場に割って入った。


「今のはあんたが悪いわ、ミルシュカ」


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