80『アンナリーナのクッキングタイム』
結局飲み会の場所は、洞窟内では匂いがこもると言うことで、ツリーハウスに近い外に天幕を張って行う事にした。
料理はアンナリーナ、お酒はザルバたちが用意する事になったのだが、この世界にはエールはあってもビールはないらしい。
そしてワインと蒸留酒もあるそうだが、前世のものとは何か違いがあるのだろうか?
アンナリーナは一応【異世界買物】で冷えた瓶ビールを3ケースと、ワインやウイスキーなどを見繕っておいた。
料理はマチルダとフランクが手伝ってくれる。
「リーナ、今日はアレ、あるよな?」
フランクの大好物、ポテトサラダ。
大量の芋の皮むきを任せる事と引き換えに、アンナリーナは数種類のポテトサラダを予定している。
この際なので【異世界買物】で大量の買い物をした。
まずは絶対必要な、忘れてはならないマヨネーズ。
某メーカーのものと、業務用のものどちらも1kgのチューブ、50本ずつ。
アンナリーナは、サンドイッチやポテトサラダに使う玉子は【異世界買物】で購入したものを使っている。
これも20パック。
植物油も1.5ℓボトル20本。
醤油や砂糖、塩胡椒、ケチャップ、ドレッシングなど調味料の類をすべて箱買いした。
そして、今日のメインと言うべき料理に欠かせないもの。
日○製粉唐揚げ粉(業務用1kg)を10袋……そう、アンナリーナはトサカ鳥のから揚げを作るつもりなのだ。
「その前に……アレを作るからフランク、ジャガイモの皮をむいてね」
それだけでピンときたフランクはナイフを取り出し、鮮やかな手つきで皮をむき始めた。
携帯用魔導コンロを2台、オーブンを1台、調理用の天幕に設え揚げ物用の鍋を取り出す。
そこに油を入れ始めて、その異常さにマチルダが気づいた時、適温になった油にスティック状の芋が投入された。
「これ……これって全部、油?」
こんなふうに油を使って調理するなど、見たことも聞いたこともない。
マチルダが恐ろしいものを見るような目で揚げ物用の鍋を見ていたが、アンナリーナは構わず調理を続ける。
フランクは慣れたもので、大皿にキッチンペーパーを敷いて準備をする。
アンナリーナの方はと言えばフランクのカットした芋に【加温】してから油に投入していく。
ジュワッという音とブクブクと湧き上がる泡。
それが収まって、淡いきつね色になったら揚がった印なので、細かい網を張った油切りでどんどんすくっていく。
2〜3回油を切って皿に上げると、フランクが塩を振って出来上がり。
数本味見をして、アンナリーナがアイテムバッグにしまう。
その繰り返しだ。
次に取り出したのはトサカ鳥の肉の塊とビニール袋、そして唐揚げ粉だ。
鮮やかな手つきで肉を切り分け、唐揚げ粉の入ったビニール袋に放り込んでいく。
適度な量になった袋に空気を残し、口を閉じて、振る。
振って、振って、振って、振る。
全体に粉が行き渡ったら、今度はそれを油の中に投入していく。
フライドポテトのときとは比べものにならないほどジュウジュウと音を立て、油を跳ねさせてから揚げを揚げていく。
浮き上がってきたら出来上がりなので頃合いを見計らって油から上げた。
「はい、味見する? マチルダさんもどうぞ」
見たこともない料理を、ギラギラした目で見つめていたフランクは、お預けからヨシが出たワンコのようにがっついた。
「リーナ、これなに?
こんな美味いもの始めて食べた!」
初めてが多い奴だが、マチルダもまた同じことを思っていた。
「リーナさん、私こんな調理法を初めて見ました」
鍋に次の肉を入れて掻き混ぜているアンナリーナが満足そうに頷く。
「そうでしょう、そうでしょう。
これはお師匠様の出身地に伝わる珍しい料理なの。
【から揚げ】って言ってね。
今日は鳥肉でやったけど、他の肉でも出来るんだよ」
この後、大量のから揚げは揚げたてのままアイテムバッグにしまいこまれ、熱々揚げたてのまま、饗される事になる。




