新王1
地方増税――。
国のために出した法案が地方貴族に無視された。
国王の命令に背いたのだ。
ゆえに、地方貴族達に使者を送った。登城命令書を持たせて。
国王の命令に背くことは大罪である――
場合によっては死罪に値する――
これなら登城するであろうという内容の命令文だ。
なのに……貴族たちは再び無視した。
国王の僕の命令に従わないだと?
これは許される範囲内を超えている。
許せない――
いや、許されない行為だ――
王として、命令違反には厳罰を処さなければならない。
だが僕は父上と違って優しい王だ。
いきなり殺しはしない。
辺境の者達は優秀だと伝え聞く。
彼らに王宮での奉仕を命じた。
田舎者が王宮で働けるのだ。名誉な事だと泣いて喜ぶに違いない。
文官武官、全てを王宮で無償奉仕させよ――
勅命を放った三日後、辺境貴族が独立宣言をした。
――我ら辺境貴族は王家の奴隷ではない!
そもそも「地方増税」とは何だ?
何故、我らが王都に住まう者達が楽をするために金を出さなければならぬ!
それほど、金が欲しいというのなら王都民に働かせれば良い!
王宮の者達は王都民以外は国民とは思っておらぬのか?
だからと言って領民の血税を王都のためだけに使用する行為を許す事は出来ない!
その上、我が領民を王宮で無償奉仕させろとは何事だ!
我らの民に「死ね」とでもいうのか!
それとも仕事が出来ない王宮の文官武官の代わりに働かせて功績だけ持ってゆこうという算段か!
許し難い!
このような理不尽極まりない命令を受ける訳にはいかない!
我がスタンデール辺境伯爵家は今ここで独立を宣言する!――
スタンデール辺境伯爵家が独立宣言し「スタンデール公国」を名乗った。
「身の程知らずの田舎貴族が……思い上がりも甚だしい」
貴族が王になるだと?
バカバカしい!
誰が奴らを認める?
誰も認めはしない。
この時の僕は辺境貴族の独立宣言を嘲笑った。
国の何たるかを知らない愚かな田舎者は数日もせずに王である僕に泣きついてくる。許しを乞うてくるに違いないと。
本気でそう思っていた。




