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騎士団長の息子4

グランデン帝国の傘下(さんか)に入った事で帝国軍が駐留する事になった。帝国基地までも造られたが、これは致し方ない。なにしろ、コムーネ王国は盾も剣も失っているのだ。人材もないに等しい。帝国基地が大使館同様に治外法権エリアになろうとも甘んじて受けとめざるを得なかった。


それでもグランデン帝国の属国になったお陰で他の小国との衝突はなくなった。大国の下に付く意味をいい意味で理解した当時の政治家たちはそれを全面的に推し進めた。まあ、他に方法がなかったともいうが……。

自国を滅ぼしかけたとはいえエマヌーレ国王の人気は衰えていなかった。貴族階級はともかく一般庶民には根強い人気があった。行き過ぎた「平和主義」で国を危うくさせたとはいえ、それは最小限に抑えられた。その上、帝国の属国となった事で他国の脅威は去り、帝国との貿易で経済もより活発になり、民は潤った。


『民衆にはパンとサーカスだ。小難しい政治やお綺麗な思想を並べたところで共感するのは一時だけ。腹いっぱいに食べ楽しい事をして遊べば自ずと一生懸命働いてくれる』


帝国使者の言葉だ。


当時の政治家は「一理ある」と頷いたそうだ。 

 

失政を行ったエマヌーレ国王を退位させるのは簡単であったが、民の国王に対する敬意は落ちていない。正論を並べたところで民衆は納得しないだろうという事で、国王は退位する事なく治世を続けることになった。

勿論、今までのように独裁など出来ないように法律で定めたのは言うまでもない。

それに、「軍」や「平和」に固執しなければ極めて優秀な王なのだ。だが、その王の尻拭いは当時の王太子(現国王の父親)や他の王族、また高位貴族がやった。下手に国王が動いて更なる混乱になる事を恐れたからだろう。帝国も何も言わなかった事から同じような思いだったらしい。


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