成功……か?
先程はすみません。
間違えて、未完成のを一度アップしてしまいました……
その日、俺はとあるダンジョンに篭っていた。
目的は……死霊術の実験だ。
ヴィルヘルムが目覚めた切掛は間違いなく俺の
『起きろっ!』
という一言だった。
となると……もしかしたら死体にそう言う声かけをしたら、アンデットを使役する事ができるのではないか……?
そう言う考えに至ったわけである。
だが、もちろん疑問も沢山ある。
死体ならなんでも構わないのか?
スケルトンやゾンビと言った魔獣化したものにも効くのか?
損傷が激しい場合も大丈夫なのか?
ここら辺は実際に試してみないと分からないだろう。
だからエリックと相談して……ここ数年で数多くの冒険者が帰ってこなかったダンジョンを選んだ。
ここならおそらく多くの人骨があるだろう。
時間も経っているし、そしてそのような遺体なら試してみても大丈夫ではないか?と思ったからだ。
放置してもスケルトンやゾンビになる可能性もある。生前の冒険者やその家族に許可も取らず申し訳ない気持ちはある。倫理的にも心は痛む。
でも……遺体を持って帰っても、もう身元は分からないし、魔獣になる可能性があるなら、そうなる前にちょっと実験に付き合ってもらおうかな?と。
きっとその冒険者達もゾンビやスケルトンのようなアンデッドの魔物になるくらいなら、俺と一緒にいた方が良いんじゃないかなぁ……なんて勝手な思いも持ちつつ。
さて。
そんな思いを胸に俺はダンジョンに潜った。
この洞窟型のダンジョン。結構前より冒険者協会に紹介されているので…何人もの冒険者とすれちがった。
敵もそんなに強いわけではなく、駆け出しの冒険者にはうってつけのダンジョンなのだろう。
とはいえこの力……あまり人には見せたくはないんだよね。
だからできる限り人の少ない、ダンジョンの奥深くに俺は向かった。
モンスター達はスライムや野良ゴブリン、そして冒険者の成れの果てだろうか?スケルトンやゾンビなどが多い。
そんな奴らを倒しながら俺は奥深くに向かっていく。
最初の実験は魔獣化したスケルトン達への死霊術だった。
こちらは……やはり失敗に終わる。魔獣化したアンデットには効果がないらしい。
んー……残念。これが可能だったら、外を彷徨く野良スケルトン達の再利用にもなるんだけどね……そうは上手くいかないか。
次に仕事随分と時間が経ち、原型をとどめていない遺体だ。
こちらに関しては多少カタカタと動きが見えたが……失敗に終わる。
これもダメか……
結局魔獣化したものや損傷が激しい者は今の俺にはどうにもできないらしい。
死霊術がそう言うものなのか、それとも今の俺のレベルが低いからなのか……そこら辺は分からないけど。
そんな事を思いながら……ダンジョンを歩いて数刻が経った時。
俺はそれほど損傷が少ない一体の人骨を見つけたのだった。
◆
「この傷は……魔獣に襲われた後だな……」
そのスケルトンを見ると肋骨のあたりに穴が空いている。これが致命傷だったのだろう。だが、今まで見てきた中では一番損傷は少なそうだ。
俺はその人骨の前に立つと魔力を込め。そして呟いた。
「起きろっ!」
その瞬間……闇がその遺体を包み込む。
これってヴィルヘルムの時と同じ?
その闇が薄らときえていったとき。
一体の人骨が俺に傅いていた。
これってもしかして……
「成功……か?」
思わずそう呟く。そして俺は『神眼』のスキルを使って彼を見た。
◇◇
ゴードン(隷属)
等級 兵士
職業 ノービスLV10
スケルトンLV1
LV8
体力250
魔力0
攻撃力120
防御力120
俊敏性100
スキル なし
◇◇
能力値はきっと生前のものだろう。
彼はどこかのギルドか、冒険者のポーターだったな….で、ここでモンスターに襲われて置いていかれた……と。
職業がノービスだから、適当に捨てられたのかな……
クソっ。なんか以前の自分と被って泣けてくる……
そんな事を思いながら、俺はため息をついた。
とりあえず現時点でアンデットを使役できる条件は分かった。
今日はとにかくこのダンジョンで仲間集めをしてみよう。そして他にも色々と試したい事があるんだ……
◆
あれから俺はもう一体のスケルトンを発見し、仲間にした。それがこいつ。
◇◇
キース(隷属)
等級 兵士
職業 戦士LV4
スケルトンLV1
LV11
体力550
魔力0
攻撃力330
防御力350
俊敏性150
スキル なし
◇◇
こいつも駆け出しの冒険者か騎士見習いと言うところかな?
ゴードンよりは高い能力持ってるけどね。
職業持ちだし、夢と希望を持ってダンジョンに向かい……命を落としたってところか?
彼らを従えて、とりあえず分かったことがいくつかある。それをまとめてみよう。
まず、一つ目。
生前の能力は完全に引き継がれること、だ。
ゴードンやキースはきっと駆け出しだったからこんなものだけど。強いやつの遺体だと強い能力をもつに違いない。
二つ目。こいつらもレベルアップすると言うこと。
◇◇
ゴードン(隷属)
等級 兵士
職業 ノービスLV11
スケルトンLV2
LV9
体力280
魔力0
攻撃力130
防御力120
俊敏性110
スキル
俊足LV3
◇◇
今のゴードンのLVが以前よりちょっとだけ上がっている。これは魔獣を何体か倒したから……だ。
といってもトドメだけさしてもらったんだどね。
そして……スキル。ゴードンにスキルがついたけどこれ、俺が『譲渡』したスキル。
能力値にあった俺の『譲渡』スキル。
このスキルを使えば俺のスキルを誰かに渡す事ができるみたいだ。
ってことは……『強奪』で奪ったスキルを彼らに渡す事も可能な訳で。
スキルを手に入れ、そしてレベルも上げられる……生前は駆け出しだった彼らも、まだまだ強くなるはずだ。
三つ目。
死霊術を使っても失敗する場合があるらしい。
俺のレベルが低いからなのか……それは分からないけど。
で、失敗すると遺体は消える……そう、跡形もなく。
ま、これはこれでしょうがないかな?なんて思うようにした。
四つ目。
ゴードンもキースも言葉を喋らない。
ヴィルヘルムが特別なのか……その辺りはよく分からないが。
意思はありそうなんだけど……やはりヴィルヘルムに比べると人形に近い。
等級……と言うのが関わっているのかも。彼らは兵士クラス。ヴィルヘルムは将軍だからね。この辺りは今後も調べる必要がありそうだ。
5つ目……彼を収納できると言うこと。
先程気づいたのは彼らを指の先ぐらいの小さな水晶玉に変える事ができるようだ。
以前屍王が自分の兵士をどこからか呼び寄せていたからきっとできるとは思っていたけど。
ヴィルヘルムの時はこういうことはできなかったけど。ゴードンやキースは大丈夫みたい。
とりあえずこれで彼らを連れて街に入っても大丈夫そうだ。
最後に……
俺は横にいる魔獣を眺める。
◇◇
ゴゴ(隷属)
等級 兵士
職業 ノービスLV10
ゴブリンゾンビLV1
LV3
体力150
魔力0
攻撃力150
防御力100
俊敏性120
スキル なし
◇◇
さっきゴードンに仕留めさせたゴブリン。
割と損傷は少なく、トドメを刺した傷も塞がっている……
見た目には普通のゴブリン。でも……血の気はなく青い顔をしている。
彼のような魔獣も死霊術は通じるらしい……が成功率が低すぎる。
何百体と倒して、ようやくこの1匹……死霊術は魔力を使うので、自分の魔力を考えると効率が悪い……この辺りは色々と考えないといけないね。
とりあえずここで自分の能力について色々な事がわかった。
そして新しい力を知ると楽しい……
暫く仲間集めをしても良いかも。俺ずっとソロでやってたからなぁ……
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