お前……やっぱり無茶苦茶だなぁ……
ヴィルヘルムの墳墓から戻った俺は、エリックに報告するためにエルハシアに向かった。
途中、露天に立ち寄り、ヴィルヘルムのために全身を包むフード付きのローブと仮面、そして腕まで隠せるグローブを購入。全身をこれで隠す。
……まぁ、明らかに不審者ではあるが……骨よりは良いよね。
仮の装備ではあるが、これでヴィルヘルムを連れて街に入る事は可能だろう。不審ではあるけど骨よりは騒ぎにはならない。
後は……エリックが彼を見て驚かなければ良いけどね……
◆
「お前……やっぱり無茶苦茶だなぁ……」
エルハシア冒険者協会のとある個室にて。
エリックはそう言って呆れた声を出した。
ま、その言葉に否定はしないよ。
エルハシアの冒険者協会にて、エリックにヴィルヘルムを紹介した時。流石のエリックも仮面を外したヴィルヘルムを見た時は腰を抜かしてた。
そりゃそうだ。目の前にスケルトンが現れたらそりゃ焦るに決まってる。まずはここで落ち着くまでにちょっと時間がかかった。
さらにそれが、英雄ラーサー・ヴィルヘルム・エルハザードであると聞くと、とんでもなく呆れたような表情を見せた。
そして彼と共に墳墓であった事を説明すると、大きなため息をつかれた……って言うわけ。
「……ってな事でもうあそこからモンスターが出る事はない。安心して良いと思うよ」
「私もそれは保証します。原因だった屍王は滅したので」
「……まぁ、英雄さんが言っているから信憑性は高いよな。本来はこの依頼は探索が目的だったんだけど……ま、それとは別に解決したことを確認次第、報酬が出るように手続きをしておくわ。ただ……」
エリックはそう言うとヴィルヘルムの方に視線を向ける。
「流石に英雄さんの事については誰にも話すわけにはいかないな……この国では絶対的な英雄だ。それがアンデットになって復活なんて言ったら……誰になんと言われるか……それに……」
「それに?」
「その聖剣カリバーンなんかは、この国の国宝でもあるんだぞ……?そんなの持ってたら王家だって黙っちゃいない……」
確かにそうだ。ヴィルヘルムはこの国では英雄。カリバーンは国宝。俺がやっている事は英雄を冒涜しているようにしか見えないだろう……怒られるどころじゃ済まなそうだ。
「お前……やっぱり無茶苦茶だ」
さっきと同じような事を呟いて、エリックは大きく頭を抱えるのだった。
◆
そんなエリックを尻目に、俺は彼ににヴィルヘルムの装備について相談した。
今回の1番の悩みはこれだからね……
「まぁ、確かにこの格好じゃ様にならないよな……」
そう言って苦笑するエリック。
「前のところのバグリーのように信頼できる店はないか?」
「……難しいな。こっちでは俺も日が浅いから……」
そう言ってしばらく考え込むと、ゆっくりと口を開く。
「一応向こうの冒険者協会に連絡して、バグリーに繋げてみるか。まぁ、あちらが今どうなっているのかも気になるし、ついでだな」
そう言うとニカッと笑うエリック。
「ってかそれよりも、その英雄さんを連れて家に帰って大丈夫なのか?流石にリーシアちゃん達が見たら……腰を抜かすじゃ済まないぞ?」
「……あぁ、やっぱりそう思う?」
「そりゃあな」
エリックは当然とばかりに頷く。
やっぱりそうだよなぁ。
でも、流石に外で野宿しろ!とも言えないし。これから彼とはずっと一緒だし。なんとかしないといけないよなぁ……
ダメもとで紹介して……ダメならまた考えよう……なんか野良犬を拾ってきた感じだな……
そんなくだらない事を考えながら、これから先のことを思い、俺はエリック以上の深いため息をつくのであった。
◆
「あー、えーと。落ち着こうかぁー」
俺の言葉が虚しく響き渡る。
予想通りと言うか……ヴィルヘルムが仮面を取った時、我が家は大騒ぎとなった。
ダリアは倒れるし、リーシアも悲鳴をあげるし。子供達は逃げるわ騒ぐわ泣き喚くわ……
「主……これはやはり私でも凹む……」
お前まで落ち込むんかい。
もう、そこからは大変。説明を尽くし、フォローをし。
その日一日中かけて皆にヴィルヘルムについて認めてもらったよ。
で、数日後。
慣れてしまえばもう簡単。
いかんせん、ヴィルヘルムは英雄さんだ。家事や子供の世話も完璧なわけで。
ダリアやリーシアに代わり洗濯をしたり、掃除をしたり。子供達とは一緒に遊んだり、自身の物語を面白おかしく話したり。あっという間に全員の信頼を得てしまった……流石英雄。
「アルよりよっぽど役に立つわ」
なんてリーシアは言ってる。おいっ!
ま、それは置いておいて。
最近は男の子達を呼んで剣術稽古などもしているらしい。
男の子達も生き生きと稽古に励んでいる。
そういえば……ヴィルヘルム曰く、この孤児の最年長であるキリトなんかは非常に腕がいいらしい。このまま続ければ数年でかなりの腕になるって。
あの子たしか騎士になる事が夢だから……その夢を叶える事も不可能じゃないような気がする。
俺の剣術なんかはクセが強いから……ヴィルヘルムのような人(?)に教えてもらうのがちょうど良い。って言うか、ヴィルヘルムは教えるのも本当に上手い……すごいぞ、英雄。
とはいえ、流石に村の人達には紹介できず……
スケルトンが村にいるなんて言ったら大騒ぎになるのは間違いない。それが英雄ラーサー・ヴィルヘルム・エルハザードだといって、誰が信じるだろう??
どうしようか?なんて悩んでいた時に……とある事件が起きた……
そしてそれを機に、俺の運命は大きく変わる事になるなんて……この時は考えもしていなかった……。、
『英雄の中の英雄の物語』
https://book1.adouzi.eu.org/n9170dm/
も、併せて更新します!
そちらの方も是非お願いします。
評価&ブクマ&感想、ありがとうございます。作者のやる気に繋がっています!頑張ります!!




