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じゃあ行ってきます

あけましておめでとうございます。


なんか昨日よりアクセス数が跳ね上がりまして……たくさんの方が読んでくださると言うことで、ちょっと頑張って書き上げました!


応援よろしくお願いします!!

「行ってきます」


俺がそう言うと、部屋の奥から沢山の子供達がワラワラと現れた。

いつものお見送り隊だ。



「行ってらっしゃい」


「兄たま、いってらったい」


「気をつけてね」



あっという間に子供達に囲まれて、いつものいってらっしゃいコールを受けていると、部屋の奥から2人の女性が……


1人は元孤児院の院長であるダリア。もう1人は幼馴染のリーシアだ。


ここでは大人は2人だけしかいない。


2人の憂鬱そうな顔を見て俺は思わず吹き出した。


「なんだよ、2人とも。そんな暗い顔されたら気持ちが沈むんだけど」


ま、その顔をする理由も分かっているんだよね。俺の事を心配してくれているんだよ。とはいえ……そんな顔をされるとちょっと気持ちは沈む。


だから軽い冗談を言ったつもりだったんだけど……真面目なリーシアにはちょっと癇に障ったみたい?


「貴方がダンジョンに潜る時は心配なんだから……仕方ないでしょ?」


ムッとした表情を見せながらそう言って、そっぽを向いた。


「貴方が出かけた後、いつもリーシアは神様にお祈りをしてるんですよ?」


その様子を見ながら元院長のダリアは笑う。


「そーだよー。兄たまのぶじをいのってるのー」


「俺たちにもやれって言うんだよー」


「けっこうたいへんー」


「……こ、コラっ!!」


わいわい騒ぎ出した子供達を叱るリーシア。


そんな様子を見ながら俺は笑みを溢す。


俺がダンジョンに入る時のいつもの光景。


なんか……当たり前になったこの光景を守るために。

俺はまたダンジョンに潜る。


「じゃあ行ってきます」


俺はダリアにそう言うと逃げる子供達を追いかけるリーシアに軽く手を挙げ、そして扉から出ていった。




王国から逃げ出して一年が過ぎようとしている。


俺たちは今、エルハザード公国にあるアルバ村というところに居を構えていた。


この村では歳を取った者達も多く、大人数で移住するにはうってつけだったと言える。

村の人達も事情を聞かず優しく接してくれたのはありがたかった。そして、若者と子供達と言う事でとても歓待してくれた。


俺たちにとってこの村は非常に居心地の良いものとなったのである。





結局、以前暮らしていた村に戻る事はできなかった。


理由は……魔獣の襲撃の可能性が高いからだ。


俺やリーシアがいた村は現在、どこの国にも所属していない空白地帯で魔獣が闊歩する場所となっている。

そこに住むには、その襲撃から身を守れる様にしないといけない。


俺がいればもちろん問題はないんだけど……今、俺たちの生計は俺がダンジョンに潜って稼いでくることにかかっている訳で。いつまでもずっと村にいるわけにはいかない。


俺が留守にしている間、魔獣が襲ってきたら……そこでお終いになってしまう。あっという間に全滅だ。


傭兵や冒険者でも雇えば良いのかもしれないけど……そういう職業で信頼できる奴を俺は知らない。


となると……そう言うツテを手に入れるまでは……この、エルハザード公国の安全な村で過ごすしかない訳だ。


「まぁしょうがないよな」


俺は1人笑うと、公都『エルハシア』への道をひた走るのであった。





俺がこの公都『エルハシア』に来た理由はこの国の冒険者協会に行くためである。


あれから1年。このエルハザードの冒険者協会で俺はB級冒険者までランクをあげていた。

本当はA級でも良かったのだけど……急激に上がると変に睨まれたり嫉妬されたりするから……これぐらいがちょうど良いだろう。


Bランクともなると様々なギルドからも誘いが来たけど、とりあえず俺はソロとして冒険者をやっている。それが今の俺にちょうど良い。


大通りを少し外れると、そこに冒険者協会の建物は存在する。


エルハシアにある冒険者協会。王都の冒険者協会と比べれば、大きさは小さいが……ここも沢山の冒険者で溢れかえっている。


俺がここにきた理由は一つ。今ここで働いているエリックに会うためだ。


俺と一緒についてきてくれたエリックはツテを利用して、ここエルハザードの冒険者協会で当面の間働くことになった。


冒険者協会は元々どこの国にも属していない。

そして数多くの実力者を抱えておりその力は国家に匹敵するとも言われている。

即ち、国であってもおいそれと手を出せない存在なのだ。


それゆえに王都で何をしてようが、その個人にどんな過去があろうが……関係ないのである。


だから冒険者は犯罪者の温床にはなりやすいが……そこはこの世界の暗黙の了解だ。


つまり、俺が男爵を殺していようと、そしてエリックがそれに関わっていようと。


冒険者ならこうして普通に働く事ができるのだ。


実際エリックがここにいてくれるのはとてもありがたい。俺のランクを上手く調節してくれたのも、そして俺に合わせた依頼を出してくれるのも、エリックのお陰だ。



俺が中に入るとエリックはすぐに俺を見つけ、よっ、とばかりに手を挙げた。


「よう、アルス。待ってたぜ?ここ1週間ほど顔を出さないからどうしたかと思ったよ」


「一応、前回のお金が残っていたからね。本当はもっと来たいところだけど……そうするとリーシア達がうるさいからさ」


「それはお前の事を心配してくれてる証拠だよ。幸せ者だな」


そんなやり取りを交わしながらエリックと俺は暫くの間情報交換を行った。


「王国から何かあったか?」


「いや……特に動きはない様だ。あ、そうそうあのボフマン男爵家は正式に取り潰しとなったそうだ」


リーシアの一件で俺が殺したダミアンの家系。確か他にも後継らしきもの達はいたはずだが?


そんな俺の問いに


「まぁ、あのダミアン君のお痛がすぎたという事だな。」


そう言って笑った。


どうやらその後、ダミアンの悪業が表沙汰になり収拾がつかなかったらしい。そして貴族同士の足の引っ張り合い……まぁ後者が1番の理由だな。


ま、知った事ではないけどね。



さて本題といこう、とエリックは俺の目の前に依頼書を数枚置いた。


「という事で、これが今回の依頼だよ。さぁ、どれを選ぶ?」





エリックが置いた依頼書を俺は一枚一枚確認していく。


できるだけ安全で、稼ぎが良いのがいいな……そんな自分の都合の良い事を考えながら目を通していく。


その依頼の全てがダンジョン探索だった。まぁ、そこそこの稼ぎを得るためにはやはりダンジョンが都合がいいもんな。


俺はどの様なダンジョンなのか情報に目を通しながら……一枚の依頼書に目が止まった。


墓の探索?こんなダンジョンは見た事がない。どう言う事だ?


「エリック……これは?」


「お前……また変なダンジョンに目をつけたな」


そう言ってエリックは笑った。


「ま、ダンジョンって言ったら失礼に当たるかもしれないがな。これは龍殺しの英雄、『ラーサー・ヴィルヘルム・エルハザード』の墓と言われてるところだ。ここから今異常にモンスターが発生していると言う。その原因を突き止めたいので、奥深くまで探索してほしい」


そう言ってエリックは笑った。


「ただ、この国の人間からすると彼は英雄の中の英雄だ。恐れ多くて行けないし、また墓なので魔石やアイテムなどの旨味も少ない。どの冒険者からも依頼を断られて困っていたところだった訳だ」


墓の探索……たしかに旨味は少ないかもしれない。

まぁ……今はそこまで金に困っている訳でもないし……行ってみるのも面白いかもしれないな……


本来投稿する予定はなかったんですけどね……多くの人が読んでくださっているので頑張って投稿しました。


今後の投稿予定は後ほど活動報告やTwitterの方にでも流します。よろしくお願いします!



あ、ちなみに院長さんですが、『元』になってしまったので名前をつけました。ダリアさんもよろしくお願いします笑

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