他の国に高飛びすることは可能じゃないか?
動かない身体を無理やり動かし、ハイポーションを口に含んだ。
ってか、ハイポーションなんて高価な物……飲んだ事ないや……噂じゃ聞いたことあるけど、どのぐらい効くんだろう……
俺は震える手を堪えながらハイポーションの蓋を開け口に入れた。
口に含んだ瞬間、身体中を淡い光が包み込む。すると痛みがかなりひいてきた。
ハイオーガの攻撃で間違いなく肋骨や腕の骨は折れていたと思う……けど、呼吸も苦しくないし、腕も動くようになった。
でも、まだ節々に痛みは残ってる……ダメだ、身体も動かない。
ちょっと悩むな……でもこのままじゃ……
うん、思い切ってもう一本のハイポーションも飲もう。
遠慮なんてしていられない。ボロボロの姿を見せたらリーシアになんて言われる事か……
再び俺はハイポーションを取り出すとそれを一気に飲み干した。
再び淡い光が包むと俺の身体は一気に軽くなった。
「ふぅ……」
思わず大きな声を出しながら息を吐き出した。
凄いな、ハイポーション。
一本で一般人の月収ほどの価格だけど……こりゃあ価値があるわ。骨まで繋がるとは思わなかったよ……
これからダンジョンキー使う時は検討しないとな……
そんな事を考えながら俺は、疲れた身体を引きずりながら、孤児院に戻っていくのだった。
◆
翌日、俺は冒険者協会に顔を出し、エリックに会いに行った。
勿論目的は、ダンジョンキーのダンジョンで手に入れたアイテムを売ること。
で、エリックに見せたんだけど……
「お前……とんでもないな……」
俺の持ってきた魔石を見ながら呆れた顔を見せる。
そりゃあそうだ。魔石は高価な物だ。それが大量にあるんだから。
「小さい魔石が50個にそれより大きいのが2個……そして、とんでもなくデカいのが1個……お前、魔石の価値、分かってるか?」
エリックの言葉に俺は頷く。
魔石は様々なことに代用される。武器防具の材料にもなるし、灯りなど生活必需品にも使われる。とにかく便利だが……その分高値で取引される。
魔石だけでも途方もない金額だ。
「それにゴブリンの耳を300って……大規模討伐がレイドでもない限りこんなことおきないぞ?」
なんだかんだ文句を言いながら、エリックはとりあえず小さい魔石50個とゴブリンの耳は引き取ってくれた。
全部ではなくても……とんでもない金額になりそうだ。
「とりあえず、これだけは換金しておく。明日にでも取りにきてくれ。あ、あとは手に負えないわ。他の街とかでやってもらわないとなぁ」
あまり激しくやりすぎると確かに怪しまれるしなぁ……事実、さっきから誰かに後をつけられてるんだよね……ほどほどにしよう。
そんな事を考えていると、思い出した様にエリックが話しかけてきた。
「あ、そうそう。お前、ちょっと冒険者として依頼を受けてくれないか?」
「また誰かと組んだりするのか?」
「いや、ソロでも大丈夫だ」
そう言うとエリックは今回の依頼書をみせてくれた。
「なんでも新しいダンジョンが出来たらしいんだよ。で、それを偵察に行ってもらいたい」
◆
孤児院の裏手にある森の中で俺はどっかりと座る。
新しいダンジョン……か。
うん、普通のダンジョンは久しぶりだし、行ってみるのも面白いな。何より以前の俺とは違うわけだし。
以前の俺も同様の依頼を受けていたな。でも、いつも入り口付近で脱落……情報が少ないため報酬も少なかったのを覚えている。
でも今は違う。
今回はかなり奥まで行けるんじゃないか?
ちょっとワクワクするな。
そして、そこである程度金を稼げたら……
「魔石の金を含めれば、他の国に高飛びすることが可能じゃないか?」
そんな事を思う。
じゃあしっかりと装備を整えないとなぁ……




