危なかった……
薄暗い洞穴の中。俺は僅かな明かりを頼りに中を進んでいく。
くそっ……松明を買っておくべきだった……
幸い俺は夜目がきく。だから僅かな灯りさえ有れば、ぼんやりと全体の様子がわかる。そんな事だからすっかり松明を買うのを失念していた。
だが、ダンジョンでは常に最善を尽くさなければ生き残れない事も知っている。
このような展開を予想し、松明やランプの様な明かりを買わなかったのは大きなミスと言える……
そして残りのゴブリンはおそらくこの奥にいるに違いない。
しかし……見辛いな……そう思った瞬間だった。
世界が急に明るくなり、俺は完全に視界を奪われた。
「なっ!?」
ホワイトアウト……暗闇に慣れていた目から、突然注ぎ込んだ光に、全ての世界が白い世界になっていた。
そしてその瞬間
ゾクリ
背中に冷たいものが走る。
これは……ヤバい!!
今までとは違う気配。『気配感知』の能力が今までとは違う危険を感じとっていた。
俺は慌てて『ソウルイーター』の盾を全力で展開する。
すると……ひとまわり大きいゴブリンが俺の正面から俺の頭をかち割るべく、攻撃を仕掛けてきた。
ガキン!
「ギッ!?」
勝利を確信していたそのゴブリンの表情が歪んだのが薄らと見え始めた視界の中で確認できた。
危なかった……『気配感知』のスキルがなければ確実にやられていた。
とりあえず防いだ相手の先制攻撃。
だが、ゴブリンの攻撃は続く。今度はその後方から炎の玉が飛んできたのだ。
「なんでっ!!?」
俺はそれを避けながら、『神眼』スキルを使い、相手を確認した。
敵は一体だけじゃない……??
◇◇
ホブゴブリン
Dランク魔獣
体力500
魔力0
攻撃力350
防御力150
俊敏性200
スキル シールドバースト
◇◇
ゴブリンメイジ
Cランク魔獣
体力250
魔力850
攻撃力150
防御力200
俊敏性150
スキル 火魔法LV1
光魔法LV1
◇◇
げっ、ゴブリンの上位種!?初めて見た……
意外と強いな……ただ、油断さえしなければ負ける気はしない。今の俺はそれだけ強い!!
しかし……このゴブリンメイジ、魔法スキル持ってる。それも今1番欲しいと言える魔法を。
光魔法があれば松明を必要としないからな……これは欲しいかも……
俺は『朧月夜』を早速使った。気配を消してとっとと息の根を止める……そのつもりだった。
だが….
「ちぃっ!」
的確に俺の方に炎の玉が飛んでくる。あのゴブリンメイジ、俺のこと見えてるな……奴には今の俺のLVの『朧月夜』は効かないらしい。
でもホブの方は分かってないみたいだ。キョロキョロしてやがる。
とりあえず、奴から潰そう。
炎の玉を避けつつ俺は一気にホブゴブリンに迫っていった。
ゴブリンメイジがホブに必死に何か言っているけど、知ったことか。
ゴブリンメイジの言葉に混乱しているホブゴブリン。そんな奴の喉元に俺は黒金の小太刀を突き立てた。
ホブゴブリンの喉笛から黒い短刀の刀身が飛び出す。
ホブゴブリンは叫ぶ事も出来ず絶命した。
それを確認するのと同時に俺は大きな声で叫ぶ。
「よこせっ!」
その瞬間、ホブゴブリンの身体が輝き、例の光の玉が奴の身体から現れた。ふわふわと俺の方に向かい、そして俺の身体にぶつかった瞬間……それが弾け飛んだ。
ん?前回は体の中に入っていたけど……これは途中で消えたぞ?これって失敗??
『神眼』でステータスを確認してもその中に奴の『シールドバースト』はない……
失敗だ。なるほど、こうなるとダメなのか……
先ほどまで魔法で俺の事を狙っていたゴブリンメイジがホブゴブリンがやられたのを見るや、踵を返して逃げようとしているのが視界の端から確認できた。
逃すものか、あのスキルこそ奪ってやる。
お前は俺の獲物だ。
俺は走り出す。と、同時に『身体強化』のスキルを使った。すると、走る際の加速が一気に上がったのが実感できる。
ー身体が軽い!ー
その姿を見てゴブリンメイジはゴニョゴニョ何か言っていいながら必死で逃げている。
何を言っても知らん!お前はただの獲物だっ!!
走りながら何か魔法を唱えようとしていたゴブリンメイジの首筋に、俺は黒金の小太刀を冷静に叩きつけた。
グシャリ
何かが潰れる音がした。だが、俺はそれに構わず叫んだ。
「よこせ」
頸椎を潰されて、ビクビク痙攣しているゴブリンメイジが輝き出すと、光の玉が浮き上がった。そして俺にぶつかると…スゥッと溶けてなくなった。
やった!成功だ!!
俺はステータスを確認する
◇◇
アルス
職業
暗黒剣士 LV13
死霊術師 LV1
魔物使い LV1
LV27
体力1150
魔力1000
攻撃力1500
防御力950
俊敏性1100
スキル
暗黒剣「紅」
暗黒剣「朧月夜」
ネクロマンシーLV1
モンスターテイムLV1
神眼LV2
アイテムボックスLV♾
ダンジョンキーLV2
強奪LV2
気配感知LV7
身体強化LV2
光魔法LV1
火魔法LV1
◇◇
よっし!ちゃんと入ってる!!
ってか、このスキルの数……すごいな……ついこの前までずっと0だったのが嘘の様だ。
そして……能力値もほとんど四桁に突入……これで実力的にはB〜Aランクと同じだ……この調子でどんどんレベルを上げていくぞ!
さぁ、残るは……ボスの存在だ。果たしてどんな奴なのか……しっかりと準備をしてやっていかないと……
すみません、30日の間は毎日更新の予定だったのですが……私事で色々とありまして、明日はお休みさせてください。
明後日からまた再開します。




