暗黒剣『朧月夜』
一旦ゴブリンの群れから引いた俺は、体勢を立て直すべく、ポーションを手に取る。
そして瓶の蓋を開けると、それを一気に飲み干した。
身体の傷や疲労感が薄れていく……
危なかった……
防具を新調して正解だった。とりあえず、ロックリザードの革鎧はゴブリンの攻撃から何度も救ってくれたし、ランドバードの羽根靴でなければ、確実に足が止まる瞬間があった。
「でも……今回は……」
そう呟きながら、俺は自らの手甲を眺める。
『ソウルイーター』
この防具がなければ、かなり危なかったのではないだろうか……
相手を掴めば、その生命力を奪い、攻撃されれば盾を生み出す……その力に救われたのも大きい。
今回のダンジョンはこのソウルイーターの能力を確かめるのも目的だけど……まずは余裕を持ってからだろう。
なんとかあの尋常じゃないゴブリンの群れを潰していかないと……
◆
そういえば、あれだけゴブリンを潰したんだ。きっと以前よりはLVも上がっているのではないだろうか?
俺はステータスを開き確認する。すると……
「おっ、こりゃ中々上がってるじゃないか
◇◇
アルス
職業
暗黒剣士 LV13
死霊術師 LV1
魔物使い LV1
LV25
体力1000
魔力950
攻撃力950
防御力850
俊敏性1000
スキル
暗黒剣「紅」
暗黒剣「朧月夜」
ネクロマンシーLV1
モンスターテイムLV1
神眼LV2
アイテムボックスLV♾
ダンジョンキーLV2
強奪LV1
気配感知LV7
身体強化LV1
◇◇
おっ!体力が1000を超えた。これってかなりすごい事じゃないか?
そういえば……身体強化のスキルなんて貰ってたよな。よし、これを使いながら次は挑んでみようか……あれ??
そこで、俺はある事に気づく。
暗黒剣が増えている……?????
◆
暗黒剣が増えていた。
『朧月夜』??なんかカッコいい。
『神眼』で確認すると、どうやら気配を消し、襲撃する暗殺スキルのようだ。
全身に魔力を通して気配を落とすイメージだって。
早速やってみよう……。
………んー、これ、気配消えてるのかな?正直効果がわかりにくいな……とりあえずちょっと試してみるか……
そう言って俺はゴブリンを探しだし、その側に近づく。
おー、全然気付いてない。凄いな、これ。
近付いて……首を狙うっ!!
「ギャアアアアアア!!」
おっ!一撃で決まったぞ。急所を狙うのに特化してるようだ。こりゃあ便利かも。
おっ!?なんか今の叫び声を聞いてゴブリンが次から次へと出てきた……とりあえず一旦退散……
俺は岩場の影に隠れて様子を伺った。
『朧月夜』があれば気付かれず、効率よくいけるはず……とりあえず、この大量にいるゴブリンの数を削っていこう……
◆
「ギシャアアア」
「ギャアアアアアア!!」
荒廃する大地にゴブリンの悲鳴がこだまする。
『朧月夜』で気配を殺して背後を急襲、確実に喉笛を掻き切る。そして再び気配を消して次のゴブリンへ……
俺の後には累々とゴブリンの死体が転がっている。
生き残っているゴブリンも大混乱に陥っている。
ゴブリン狩を再開してから一刻ほど。俺は新しい暗黒剣、『朧月夜』を使ってゴブリンを狩りまくった。
『朧月夜』はとにかく効率がいい。相手に気付かれず最小の動きで、仕留める事ができる。
俺はこれを最大限利用してゴブリンを狩りまくった。
集団戦で怖いのは周りを囲まれる事だ。このやり方なら、ゴブリン達に周りを囲まれる事なく狩る事ができる。
この技は非常に良いスキルだと思う。ただ、『神眼』で確認したところ、モンスターの高位種にはあまり効かないらしい。やはりLVが高いと気付かれてしまうとのこと。基本……雑魚専用の技だと覚えておこう。
勿論、俺のLVが上がればその問題もクリアできそうだが……今はコツコツとやっていくしかないな。
そうそう、もう一つ。
着実に数を減らせた事で、心に余裕が出てきたのだろう。ゴブリンを使って「ソウルイーター」も試す事ができた。
この「ソウルイーター」、やはり相手の生命力を奪う道具のようだ。そしてその生命エネルギーを蓄積し、それを使って盾のようなものを生み出すみたいだ。
敵が多い場合はエネルギーを溜めるのにとても有効だ。俺はここぞとばかりにゴブリンを手甲で潰してった。
他にも分かった事がある。
どうやら、この手甲。俺が殺意を抱いていれば相手の生命力を奪うらしい。だが、そうでない場合……何も起きないみたいだ。
さっき試しに他の生き物を見つけたので触ってみたけど、何も起きなかった。
つまり……敵に対しては命を奪うが味方に対してはそんな事がない…ということになる。
呪いさえなければ、この『ソウルイーター』って最高の防具の一つかも……
さて。そんな事をやりながら……そしてゴブリンを仕留めながら……どれくらいが経っただろう。
この岩場のゴブリンはほぼ狩り尽くしたのではないだろうか……
「残りは……あの巣の中か……」
この荒野のダンジョン中央部にぽっかりと開く洞穴。ゴブリン達は間違いなく彼の地にいるに違いない。
俺は意を決して、その洞穴へ足を進めるのであった。




