今回の相手はゴブリン??
翌日。俺はまた孤児院裏の森に行く。
お目当ては俺の能力である『ダンジョンキーLV2』
誰もいないことを見計らうと、俺は拳を振り上げ、割と大きな声でその言葉を唱えた。
「でろっ!ダンジョンキー!!」
こういうのってノリと勢いが大切だよね♪
ゴゴゴゴゴ
重苦しい音が響き渡り、俺の目の前に重厚な……今度は木製の扉が現れた。
ふむ…。ダンジョンによって扉が変わるのかな?
俺が手を触れると扉がこれまた重苦しい音を響かせながら開いていく。
よし、じゃあ行ってみるか。今度はどんなダンジョンなんだろう??
ワクワクとドキドキと。そして緊張が入り混じった気持ちで、俺は扉の中に進んでいった。
◆
今回のダンジョンは……あれ?外??
周りを見渡すと荒地が広がっている。所々に大きな岩山があり、殺風景な場所だ。
空はあるし太陽が……ん?何ここ。太陽が三つある。どうなってるの??
やはりここもダンジョン……なんだろうな。となると、気を引き締めてやっていかないと……??
そう思った瞬間だった。
ゾクリ。
あーあ、きたよきたよ。
『気配感知』の悪寒が。
それに合わせて俺は前方に飛び退る。この辺は前回で慣れたもんだ。
キシャアアアア
雄叫びをあげて飛び出してきたのは1匹のゴブリン。
ゴブリンが出た瞬間。俺の目の前に前回同様の画面が現れる。
◇ ダンジョンキーLV2
ミッション ゴブリンの王国
※全てのゴブリンを殲滅してください。
※ミッションをコンプリートするか、命を落とすまでこのミッションは終わりません。
◇
ん?今回の相手はゴブリン??
前回よりも楽勝じゃないか。ゴブリンなんて初心者だった時も散々狩ってたわけだし。
集団で襲いかかって来なければ……あれ?
のんびり構えた瞬間。俺は周りを見渡して絶句する。そこには数えきれないぐらいの数多のゴブリンの姿があったからだ。
ちょっ…この数は流石にやばくない?ゴブリンって単体だと初心者冒険者でも全然狩れるけど……100単位だとギルドによるレイド発令、もしくは騎士団が動く案件なんだけど……
とりあえず体制を立て直して……
そう思った瞬間。
キシャアアアア!!
まぁ、そんなこと言ったってゴブリンは待ってくれないよね。1匹の雄叫びを合図に一斉にその場にいたゴブリン達が襲いかかってきた。
俺は慌てて『黒金の小太刀』を取り出し、迎え撃つ。
右から出てきたゴブリンの額に黒金の小太刀を叩きつけ、頭をかち割る。と同時に左のゴブリンの顔に強烈な膝蹴りをお見舞いする。黒金の小太刀をゴブリンの額から取り出したら、着実に奴らの首筋を狙って一撃でとどめを刺していく。
「ぐっ!」
所々でゴブリンの一撃が俺の身体を襲う。ボロボロの剣が、斧が、鉈が。だが……
『ロックリザードの革鎧』があれば、傷つく事はない!!
鉄よりも強度で。鉄よりも軽く。鉄よりも動きやすいこの鎧が確実にゴブリンの一撃を防いでくれる。
そんな防具に助けられながら、俺はとにかく必死にゴブリンを討伐していく。
ゴブリン自体は今の俺にとっては雑魚だ。だが、この数は……
今はまだ防いではいる。だが……確実に追い詰められている。
焦りが生まれ、そこに隙ができる。
その瞬間だった。
しまった、ボーッとして左の奴を見損なってた!
俺は咄嗟に左手でそのゴブリンの顔面を掴んだ。その時……
「ガァぁぁぁぁ!!」
妙な絶叫をあげ、ゴブリンは悶え始め、そして……唐突に事切れた。
突然起きた出来事に、困惑する他のゴブリン達。
全てのゴブリンの足が止まり、そしてジリジリと後ろに後退したのがわかる。
かくいう俺も混乱していた。
何これ?もしかしてこれって……『ソウルイーター』の力?
そんな事を考えていたら、今度は後ろにいたゴブリンが錆びた鉈を振りかぶり襲いかかってきた。俺は咄嗟にそれを手で庇う……その瞬間。
ガキン!
「ギッ!?」
ゴブリンの一撃は俺の手甲に弾かれたのだ。いや……手甲ではない。手甲から出る何か?に。
もしかして……これもソウルイーターの力……見えない盾って奴か??
「使えるな、この能力」
そう呟くと俺はゴブリンが後退したのを見計らって、踵を返し、走り出したのだった。




