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珍しいな。こんな早くにどうした??

翌日、俺は朝一番で冒険者協会へと向かった。


その理由は……1番の相談相手であるエリックのところに行くためだ。


エリックは俺がまだ駆け出しの頃からずっと世話になっている協会員。

協会員としてはまだ若く、年は俺のちょっと上ぐらいだと聞いた。

だから、この街の協会の中でも下っ端もいいところだろうな。


冒険者達からは『頭の固い男』とか『融通がきかない』とか陰口を叩かれることも多いが。


あいつほど真面目で誠実な協会員はいないと思う。他の協会員が陰で笑ってた万年ノービスだった俺をいつも助けてくれたわけだし。


弱者や事情のある人を見捨てる事ができない男なんだよな。あいつは。


朝一番で言ったのは人が少ないからだ。


協会のドアを開けると案の定、人は少なかった…冒険者なんて不真面目な者たちの集団だからな。朝が弱いわけさ。


俺はエリックの方に向かう。


「よう、アル」


エリックはいつもの笑顔で迎えてくれた。


「珍しいな、こんな早くにどうした??」


エリックはこんな朝早くでもしっかり仕事をしてくれる。だが他の職員は、冒険者が朝弱いことを知ってるから……結構適当だったりする。


NO1受付で有名なカチュア嬢も……あーあ、でっかい欠伸をして……美人が台無しだな。


「悪い、エリック。ちょっと2人で話がしたいんだが」


「デートの誘いは断ってるぜ」


相変わらず軽口が多い奴だ。信頼できるがこういうところは面倒くさい。俺は返事をスルーして続ける。


「そしてできれば他に人がいないところがいいんだが」


「……この前の案件の話か?」


この前の案件というのは局長と『紅蓮の炎』の副ギルドマスターを呼び出した件だな……相変わらず察しがいい奴だ。

ってか、お前はあの時一言も喋ってなかったけどな。


「………」


「沈黙は肯定だと思っておく。分かった。ちょっとついてこい」


そういうとエリックは隣の新人らしい職員に一言二言言い残し、俺のところにやってきた。


「悪い、待たせたか?」


「いや…全く」


「おっし、じゃあついてきてくれ」


こうしてエリックに連れられたのは冒険者協会の建物裏手にある大きな倉庫だった。


倉庫の中は薄暗い。そしてハッキリ言って臭い。


そりゃあそうだ。この倉庫にしまわれているのは魔獣の毛皮やら死体やらといったものなのだから。


「まぁ文句を言わないでくれ。間違いなくここが一番他人が来ないところだからな」


そういってエリックは笑った。まぁ、確かにここは……人は来ないな。


とりあえず周りを確かめ、人がいない事を確認すると、俺はあの会談では話していなかった事をエリックに話し始めるのだった。




「ふぅ……」


話を聞いたエリックは大きくため息をついた。


「はっきり言って……何ふざけた事を言ってるんだよ……と言いたいところだがな……」


エリックはそう言うと呆れた顔で俺の方を見る。


俺はエリックにあの時話せなかった事……【超越者】の事や【職業(ジョブ)】を授かった事、等を話した。


何の職業(ジョブ)だとか、そう言った明らかにやばい話はしなかったが。


「で、俺にどうしろと?」


「……この素材を売りたいのだが…」


そう言って見せたのはワーウルフの牙だ。


「おいおい、ワーウルフじゃないか。どうしたんだよ」


「狩ったんだよ。俺が。その時得た力を使って」


「……お前が冗談を言うタイプじゃない事を知ってるからこそ、タチが悪いな」


そう言うと再び大きな溜息をつくエリック。お前溜息何回目だよ。


「まぁ、いいや。分かった。いいぜ、俺が引き受けるわ」


「大丈夫か?」


「ま、適当に理由を、つけておくわ。ただな……」


そう言ってエリックが声を落とす。


「お前、ちょっとこの国を出た方が良いかもな」





エリックの言葉に俺はドキッとして、奴の顔を思わず覗き込んだ。


「……なぜ?」


「今は大丈夫かもしれない。でもいつかはバレる。それにお前の羽振りが良くなったら『紅蓮の炎』が突っかかってくるかもしれない。それに……」


「それに?」


「お前、なんか変な貴族に目をつけられてないか?」


その言葉に浮かんできたのは、リーシアを付け狙うあのクソ貴族。


「風の噂では、お前の孤児院やお前を狙うバカ貴族がいるって聞いたぞ?」


「信憑性は?」


「バカだから、こうして広まるんじゃないか?」


あー納得……バカだから情報が事前に漏れる…とね。しかし、ちょっと大変なことになったかもしれないな……


深刻そうな表情を見せた俺に対して、エリックは笑って答えた。


「ま、今すぐどうこう……ではなさそうだしな。暫くは金も作れそうだし、その金で高飛びすれば良いんじゃないかな?」


エリックの言葉に、俺は苦笑しか出来なかった。


高飛びか……それもありかもしれないな。


とりあえずは自分が強くなることと、金を作る事を優先するしかないけど……


そんな事を考えながら、俺はこれからの事を思案するのであった。




エリックのお陰でまとまった金が手に入った。

さすがはワーウルフ。結構良い金になったもんだ。


エリックに


「お前にこんな大金、渡した事がないな」


なんて笑われてしまった。


さて、今後の事だ。


さっきの話もあるし、急務は金稼ぎとレベルアップだ。とりあえず、孤児院の人間全員が高飛びできるようなまとまった金を手に入れないと。

金稼ぎに関してはエリックが手伝ってくれるからなんとかなりそうだ。相場よりちょっと安いとはいえ、素材が素材だからな。

後はその金の出どころ……ダンジョン攻略だ。


そのために……俺は手にしている金貨が入った袋を眺める。


これを使って、まずは装備や薬を買おう。そしてダンジョンキーを攻略だ。


やる事はたくさんある。とにかく前に進まないと……




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