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君はどうして助かった?

翌日……俺はエリックのところに向かった。


冒険者協会に着くと、俺は早速2階にあるVIPルームへと通される。


そこに待っていたのは少し緊張した表情のエリックと、この街の冒険者協会の局長であるボリス、そして『紅蓮の炎』の一員であり、副ギルドマスターだというアリソンという人物だった。


エリック以外の二人は初めて会う。


局長のボリスは強面の筋骨隆々とした戦士の風格。両頬に髭を蓄え、目の下に横一線の傷跡が、その風格をより一層険しいものにする。確か元A級冒険者だったかな?相当凄い人だったとは聞いていた。引退理由が確か片腕を無くしたから……だとか。

ただ、座っているだけだが、威圧感が半端ない……いや、何でそんなに睨んでいるのさ……


『紅蓮の炎』の副ギルドマスターのアリソンも有名人だ。確か、長剣の達人でA級冒険者だったと思う。容姿端麗。ぱっと見では、女性を思わせるような切長の目をした色男だ。長い髪を後ろで縛り、すらりとした体躯。だが、そんな優男風の見た目とは裏腹にギルドマスターのオニキスが温厚であるのに対し、氷のように冷たい男として知られ、確か『氷の刃』とかいう通り名と言われていたような……『紅蓮の炎』なのに。


ちなみにA級冒険者となると、多くの人達が通り名を持つようになる。


あの死んだバンは『烈火』のバンとか言われていたっけ?


Aランクの冒険者2人に睨まれるってどういう事だよ……一体どれだけ力の差があることか……


どれぐらい強いんだ?この人たちは。


そう思った時だった。


2人の頭上に文字が現れたのは。


◇ ◇


ボリス


職業 バトルマスター LV15

   

   


LV45

体力1500

魔力120

攻撃力1200

防御力1200

俊敏性350

スキル 怪力無双

   一撃必殺



◇◇



◇◇


アリソン



職業 魔法剣士 LV16


LV40

体力1200

魔力950

攻撃力880

防御力650

俊敏性1200

スキル 魔法剣『火』

魔法剣『氷』

魔法剣『風』


◇◇


はっ??


やべっ、2人が訝しげな表情でこちらを見てる。危うく声が出るところだった……


これって……俺のステータスが見えたのと同じ力?


って事は俺、他の人のステータスも勝手に見れるって事??


俺の持ってるスキルを考えると……これが『神眼』の力なのか??


「あー、話してもいいかね?」


色々考え込んでいた俺に局長であるボリスが話しかける。


アリソンも眉間に皺を寄せて胡散臭そうにこっちを見てる。


まずい。平然としないと……


「とりあえず、他のパーティ……探索隊がどうなったのを知りたい。流石に数少ないA級冒険者が帰ってこないとなると、我々冒険者協会としても責任問題となるのでね」


あぁ、やっぱりそうだよね……そして俺、きっと今色々な意味で怪しまれてる?


ボリスの言葉に続いて今度はアリソンが口を開く。


「君がどうこうやって我々のメンバーを害したとは思わない。だが……嘘をつかないように一つ魔法をかけさせてもらおう」


厳しい顔して、きっついことを言うのね……この人たちは。


嘘がつけない魔法……「サイレンス ライヤー」だっけ?

確か嘘をつくと言葉が出なくなるとかいう、よく犯罪者にかけられる魔法だったよなぁ……


それをかけられた俺は、ほぼ尋問形式で何があったのか質問された。


えぇ、『嘘』は言いませんでしたよ、『嘘』は。


パーティでダンジョンに潜った事。

無事、最奥の部屋まで行った事。

重厚な扉の中、皆の反対を押し切ってバンが進んだ事。

黄金の鎧とダンジョンコア

皆の最期……


「君はどうして助かった?」


の問いかけに対しては


「分からない」


と答えた。だって本当に分からないんだから。


結局、この魔法って問いかけに対して嘘をつけるか、つかないか、だから。


当然【超越者】なんてデタラメな存在について聞かれるはずもなし。俺はあの日の出来事を『正確』に伝えることが出来たわけだ。


とりあえず、様々な質問が終わった後、ボリスもアリソンも同時にため息を一つついた。


「彼のいう限り……あのダンジョンはS級ダンジョンだったと言えるでしょう。当面の間は封印しておきたいと思います」


ボリスの言葉にアリソンも頷く。


「それが間違いないでしょう……あ、バン達の事は……」


「はい、とりあえずはソロ活動を行い、現在行方不明という事で処理しておきます」


ん?どゆこと??


ボリスとアリソン。2人がじっと俺の方を見つめる。


困った俺はエリックを見る。あっ、目を晒しやがった。あいつ、この場で何も喋ってないじゃん。ダメだなぁ……


口を開いたのはアリソンだ。


「君にもお願いしたい。君はあのダンジョンに入らなかった。今回は何も見なかった。いいね?」


そう言うと、ずっしりとした袋が机の上に置かれる。中身は……え?お金??


「意味が分からない……という顔をしているな。いいかい、『紅蓮の炎』はレイドを失敗していない……という事だ。これを言えば意味が分かるか?」


あぁ、意味がわかった。つまり、バン達は勝手にダンジョンに潜って死んだ、という事だ。そうすれば『紅蓮の炎』がレイド探索を失敗したという悪評は生まれない。


ギルドなんて評判が命。人気ギルドには優先的にいい依頼がいくからね。だから少しでも評判を落とすような事は避けたい……というわけだ。


(そのための口封じ……ね)


このお金はそのためのものだろう。


本来なら俺を殺してしまうのが手っ取り早いとは思うけど……それならそれで怪しまれるはず。ダンジョン前で倒れていた人間が殺害された……なんてニュース、事件性がプンプンして様々な憶測が生まれそうだもんね。そして嘘か本当か…真実にたどり着く奴が現れる。そうなると『紅蓮の炎』としては大打撃だ。

どのギルドも足を引っ張るために様々な情報網があるというしね……


逆に俺を生かせば、バンが『勝手に』ダンジョンに潜り行方不明になったという証人にもできると思ったのかもしれない。

そうすればギルドに傷はつかない。


A級の冒険者がいなくなるのは痛いかもしれないが、悪評をかわせるのは彼らが今できるベストだろう。




とにかく。




あの事を喋らないで済むし、お金も予想以上に手に入るなら。


俺は静かに首を縦に振ったのであった。





話し合いから解放された時……すでに日は傾き、夕暮れになっていた。


一日中、拘束された……って事か。


なんか協会やギルドの汚い一面を見たな……って感じだ。


ああやって冒険者ってのは使い捨てされるのかな……


俺は金の入った袋を手にしながらそんな事を考える。


ふと…そこで俺はある事を思い出した。


試しに口にしてみる。


「マジックボックス」


すると俺の目の前にポッカリと穴が開く。

あぁ、やっぱりだ。このスキルは結構有名だもんね……ずっと嘘だと思ってたけど。こんなポーター泣かせなスキル、反則だよなぁ……


俺はその穴の中に金が入った袋を投げ入れた。


「こりゃあ便利だ。で、取り出すには….」


そう呟くと今度は俺の前にステータス一覧のような画面が現れる。


そこには、おそらく持ち物リスト……であろうマジックボックスの中身が羅列されていた。




リスト


黒金の小太刀

金袋




ん?なんだこれ?


俺はその中の『黒金の小太刀』というのを選択する。


すると俺の手に黒く光る、短い短刀のようなものが現れた。


「一体どういうものかよくわからん……」


そう呟いた時、またしてもステータス一覧のようなものが目の前に現れる。



◇◇


黒金の小太刀


ランク C級

暗黒剣士の初期装備。呪われているため、暗黒剣士にしか持つ事ができない。


◇◇


人だけでなく道具も鑑定ができるのか。これもきっとスキルの『神眼』の力だな……


「便利なスキルだな……」


俺は思わず呟く。


俺はまだ自分の力を知らない。でも知らなければならない。


「よしっ!」


決めた。明日は俺に宿ったスキルがどういうものなのか……それを試す1日としよう。


だからまず最初に……


「この金を院長に渡さないとな」


そう呟くと俺は足取りも軽く、走り出すのであった。


ここから等々暗黒剣士編スタートです。主人公の無双が始まります。


予定では週一更新のつもりでしたが、予想より読んでくださる方が多いので、もうちょっと毎日更新頑張ります。


よろしければ、評価&ブクマ登録をよろしくお願いします。毎日更新への原動力となります。

お時間がありましたら感想もよろしくお願いします。

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