第40話 やぁやぁ諸君
怪異〈山神覚〉による配信、東京、関東鎮護の神仏群による官邸、怪能庁への〈大陳情〉から数日後。
緊急指名入札を実施した怪能庁は新興怪能系建設業者、鴻鵠建設に榛寿谷の怪異性植物〈えいちさま〉の伐採作業を発注した。
その決定が下ったとき、榛寿谷出身者による政官財連絡会『大樹の会』の中心メンバーたちはオンラインでの会合の最中だった。
「鴻鵠建設で決まったそうだ」
「なんだそこは」
「櫻衛建設を追放された帆置知彦が作った新会社らしい」
「帆置知彦だと!」
「怪能庁に圧力をかけられなかったのか!」
「榛寿谷の影響力が及ぶ人間は大方帆置知彦のせいで退職に追い込まれている!」
「政財界からの圧力は!」
「異界側の圧力が強すぎる! 国家鎮護クラスまで動いているとあっては政界からのアプローチなど不可能だ!」
オンライン通話を怒声が飛び交う。
「ふざけるな!」
「〈えいちさま〉が、我々がこの国の発展にどれだけ寄与してきたことか!」
「どうしてこんなおぞましいことに! どうしてこんな痛ましいことに!」
犯人探しの話になると自然〈沙津真ちぇす人〉〈山神覚〉という怪人に怪異、そして彼らを榛寿谷に引き入れた〈沙津真ちぇすと〉こと引戸祈。その祖父、叔父である堀川保、堀川康らがクローズアップされる。
今回のオンライン会合に参加しているのは家長の堀川保だけである。
非難がましい声と視線を無言でやり過ごした堀川保は窓の外のえいちさまの方向をわずかに見やりーー愕然として目を剥いた。
「なんだ、あれは……」
立ち上がり、防音窓を開くと――。
ゴウンゴウンゴウンゴウンゴウンゴウンゴウンゴウン。
地の底から轟くような重低音を放ち、全長二〇〇メートル超、全高一〇〇メートルの超巨大重機、バケットホイールエクスカベーターが移動式の処刑台のように〈えいちさま〉へと迫っていた。
「ハハハハハハハハハハ」
バケットホイールエクスカベーターの各部に取り付けられたスピーカーから、妙に高音質の笑い声が響き渡る。
「やぁやぁ諸君。元櫻衛建設代表取締役社長、現鴻鵠建設代表取締役社長、帆置知彦だ。今日は関東地方のとある山村の悪性怪異樹木の伐採業務に来ている。我が鴻鵠建設の猛烈にして痛快な仕事ぶりを存分に視聴し、驚嘆し、絶賛し、高評価とチャンネル登録をしていってくれたまえ!」
視聴者、高評価、チャンネル登録。
堀川保はネット配信をよく視聴するタイプではないが、孫、引戸祈のVTuber活動についての調査で、基本的な用語くらいは知っている。
「お、おい! 配信だ! 帆置知彦が重機で乗り込んで配信を始めているっ!」




