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解任社長、怪異を解体す。――あー、あの男来ちゃったの?それじゃもうダメだね。あの怪異、たぶん死ぬ  作者:
File No.1-05 コンサルタント 帆置知彦――配信から斉唱まで

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第37話 天才村の正体

 緊張感のない声をあげた〈山神覚〉は、カメラを榛寿谷の人間たちに向ける。


 若者たちを引き連れてやってきたのは、白衣にソフト帽の老人、堀川保である。水平二連式散弾銃の銃口を〈山神覚〉に向けると、ハードボイルドを思わせる口調で「なんだ、おまえらは」と問いかける。


「〈沙津真ちぇす人〉、とある筋より諸君と〈えいちさま〉への対応を請け負った大男児だいだんじと記憶してくれたまえ」


「快男児なら聞いたことがあるけど……」

「『市長メイヤー』のいうことは話十分の一くらいで聞くといいのだよ」


 白河ミユキと『着信音リングトーン』はテレビの前でつぶやいた。


 チャット欄

・あいかわらず自己認識が強い

・自分で大とか言うな

・まぁ大物であるのは否定のしようがないが

・見た目が違うだけでもう完全にいつものCEOちょうえらそうなおとこ

・首になったんじゃなかったっけ

・あの会社はCEOが本体といっても過言ではなかったからな

・むしろ会社が最後の安全装置だったと言ってもいい

・誰だよマジであのCEOをリリースしやがったバカは


「ヒトコワ系配信者の〈山神覚〉と申します。この令和の世に今なお忌まわしい習俗をもつ因習村が現存すると聞きつけ、勇んで参上した次第です。折角の機会ですのでインタビューをさせていただきたいと思います」

「黙れ、手を上げろ」


 重々しく告げる堀川保。

〈山神覚〉は「おや」と呟いた。


「貴方の思考は随分読みづらい。〈えいちさま〉の影響でしょうか、精神のありようが他の人間とは違ってしまっている。一人の人間にしては異様にノイズや歪みが……まるで多重人格……いや、ああ、わかりました! そういうことでしたか! これは面白い! これもある種のヒトコワでしょうか。フヒッ! フフヒッ! フヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャッ!」


 一人で勝手に納得し、一人で大笑いを始める〈山神覚〉。


 チャット欄

・フヒるな

・変態出すな

・笑ってないで説明しろ


 チャット欄に苦情が流れる中〈沙津真ちぇす人〉は「なるほど」と呟いた。


「有識者会議を招集。仮説の検証を要請する。〈知恵の鮭〉とは人間と人間、人間と〈えいちさま〉を接続し、ネットワーク端末とするための怪異性伝達器官を人体に生成する魔術的触媒である」


〈霊街〉の有識者会議の回答速度は速い。

 要請から数秒後、〈沙津真ちぇす人〉の手元に報告書が届けられた。


「やはりそうか」

「有識者の皆様はなんと?」


「〈えいちさま〉の正体は、植物型の霊的ネットワークサーバーとのことだ。本来的には種子を食べて育った鮭を喰うことで、摂食者の脳をサーバー、仮に〈知恵のハシバミ〉と呼称しよう。これと魔術的にリンク。知識や経験情報を〈知恵のハシバミ〉に蓄積したり、逆に〈知恵のハシバミ〉に蓄積された記憶情報を参照して利用できるようにするものだった」


〈沙津真ちぇす人〉は木のアイコンの周囲を脳味噌のアイコンが取り巻く「*」型のネットワーク図をスマホで示す。


「複数の摂食者が同時にリンクすることで全ての摂食者の知識や経験を共有し、〈知恵のハシバミ〉の中に蓄積、保存していくことができるようになる」


「インターネット上のデータベースやwikiのようなものでしょうか」

「その理解でいいだろう」


〈沙津真ちぇす人〉は〈えいちさま〉に目をやった。


「ここで言う鮭とは、人間の〈みこ〉を必要とする〈知恵の鮭〉ではなく、本物の鮭のようだ。ケルト神話のフィン・マックールが利用したのはこちらの正規システムだろう。フィン・マックールが口にした鮭は本来、フィネガスという名のドルイド僧が食おうとしていたものだ。つまり彼の場合はドルイド僧たちが作り上げた知的ネットワークに接続することで英雄としての叡智を手に入れた」


「ケルトの英雄は因習村容疑を免れましたか。ヒトコワならず」


〈山神覚〉はやや残念そうな声で言った。


「そしてここにある〈えいちさま〉は不正規システム、あるいはローカライズ版の〈知恵のハシバミ〉だ。本来ケルト人やケルトとの風土に合わせて構築された知的ネットワークシステムを日本人、日本の風土に合わせて運用するために、追加の魔術、儀礼的な媒体が必要になった」


「それが〈みこ〉ということですかですか」


「そうだ。鮭にハシバミの実を食わせて触媒にするのでなく、〈みこ〉に〈えいちさま〉の種子を食わせて素材化することで〈知恵の鮭〉という触媒を作り、これを村の住人の脳内に入りこませることで脳内に魔術的な通信回路を構築。無理矢理に日本人対応の知的ネットワークシステムを作り出した」


「堀川氏の思考が読みにくいのはそのせいですかね。〈えいちさま〉とのリンクを通じて他の人間の思考まで拾ってしまっているようで」


〈山神覚〉は堀川保に再び視線を向けた。


「ですがそうなると、この集落が天才村と呼ばれ、各方面にエリートを輩出し続けたというのはだいぶ問題があることになりますね。〈えいちさま〉に溜め込まれた知識や経験を引き出していたというのでは、頭の中にスマホを埋め込んでいるのと違いありません」


 チャット欄

・天才村じゃなくて不正村だな

・そうか、頭の中にスマートフォンが!

・頭の中にスマホがあるのは普通に凄いのでは

・真面目に勉強してきた人間がオレだけチートで脳内スマホググり放題マンに蹴落とされ続けるのはさすがにアカンのやで


 チャット欄で妙な議論が始まった。


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村人のゴーストが囁くのよ。
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