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解任社長、怪異を解体す。――あー、あの男来ちゃったの?それじゃもうダメだね。あの怪異、たぶん死ぬ  作者:
File No.1-04 解説 帆置知彦――捕獲から判決まで

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第26話 特任怪異検事

【東京地検 異能・怪異事件第三取調室 映像記録(抄)】

対象:張子虎夫(政治秘書)

記録番号:特検-異能-032



 花子検事 :「――Bring him in. 早く。ぐずると面倒」

 事務官(通訳兼任):「被疑者をどうぞ」

 張子虎夫:「な、なんだこれは……? 検事はどこだ」

 花子検事:「ここにいるわ。座って。Sit down, nice and easy」

 事務官 :「着席をお願いします」

 花子検事:「私は特任怪異検事の〈花子さん〉。ここ三十年ほどアメリカにいたから日本語を少し忘れてしまったけれど、通訳もいるから心配しないで」

 事務官 :「花子検事は九〇年代の〈花子さん〉ブームを避けるため渡米し、アメリカ海兵隊の施設で活動していました。現在は検察庁の特任怪異検事として活動しています」

 張子虎夫:「に、人間の検事を呼べ! 怪異はいやだ!」

 花子検事:「No can do, mister. 私は誰よりも公平。あなたがどんな異能の持ち主でも、誰の弱みを握っていても恐れることはない。あなたが作った“トイレで盗撮する花子さん”ミームの件も、怒ってはいないから心配しないで。では、始めましょう、Clerk, roll the list」

 事務官 :「では、一件ずつ認否をお願いします。横浜市立水葉台中学校の女子更衣室に盗撮カメラを――」

 張子虎夫:「否認するっ! これは政治的陰謀だっ!」


(中略)


 事務官 :「二四件目、県立相模原南高等学校の女子トイレおよび女子更衣室への――」


(中略)


 事務官 :「五七件目、私立参内高校での不法侵入未遂。以上です」

 張子虎夫:「否認だ! こんな異常な取り調べ、認められん!」

 花子検事:「Good stamina. まだまだ元気そうね。ところでこの部屋なのだけれど、少し特殊な構造になっているの。あちらの鏡――Magic mirror」

 事務官 :「隣室から鏡越しに内部を確認することができます。」

 花子検事:「私は古い学校の怪異だから、顔の利く相手が多いの。先ほどのリストにあった学校を回ったら、七体ほど“見た”という怪異がいた。今、向こうであなたを確認しているわ。“魂の匂い”で」

 事務官 :「霊的な波長、磁場、匂い等で照合を行っています――いかがでしょうか皆様」


(隣室の壁が激しく連打される)


 花子検事:「Hey! Easy, you bananas! サインは一回でいいって言ったでしょう」

 事務官 :「合図は一度ずつでお願いします〜」


(連打停止 → 壁が四度叩かれ、鏡が一度光る)


 花子検事:「……ふむ。Seven中五。“It’s him.”」

 事務官 :「七体中五体が『この人物だ』と主張しています」

 張子虎夫:「だ、だから何だ! 怪異の証言など法廷ではなんの証拠にもならないっ!」

 花子検事:「ええ、その通り。Human court doesn't care. でも、怪異たちは覚えた。あなたの匂いを」

 事務官 :「法廷では証拠になりませんが、怪異達は侵入者の素性を把握しました」

 花子検事:「私たちが起訴を見送ったら……Protection is over。あとは“あちら側”の裁きが待っている」

 事務官 :「起訴しなかった場合には、怪異側の摂理が適用されることになります」

 張子虎夫:「う、嘘だ! 脅して自白させる気だろう! そもそも、その隣に怪異がいるというのも――!」


(マジックミラーに偽装していた怪異〈ムラサキカガミ〉が、思い切り叩かれて倒れ込む)

(続いて隣室の怪異〈赤マント〉〈音楽室のモーツァルト〉〈猿田彦三先生〉などががわらわらとなだれ込む)


 張子虎夫:「ひっ……あ……ぎゃああああああぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 花子検事:「……Too much. 驚かせすぎよ。気絶してしまったじゃない」

 事務官 :「第三取調室です。被疑者が目撃者を直視して卒倒しました。係官をお願いします」


(初回調べ終了)


◆補記

第二回の取調べで張子虎夫は全容を自白した。


◇◇◇


 元県知事秘書に実刑判決 中学・高等学校の盗撮など57件 東京地裁


 東京都や神奈川県内の学校で盗撮を繰り返したとして、迷惑防止条例違反および異能犯罪取締法違反の罪に問われた元県知事秘書・張子虎夫被告(43)に、東京地裁は28日、懲役3年6か月(執行猶予なし)の実刑判決を言い渡しました。


 判決によりますと、張子被告は少なくとも57件にわたり、異能〈体外離脱〉の能力を利用して学校施設に侵入。女子トイレや更衣室に小型カメラを設置していたとされています。映像の販売や流通の事実は確認されておらず、動機は「個人的な性癖によるもの」と認定されました。


 裁判長は「未成年を標的とした反復犯行は悪質で社会的影響も大きい」と指摘。被告は最終陳述で「人間の法で裁かれたい」と述べていました。


 また、関係者によりますと張子被告は別件でも複数の裁判を抱えており、過去に一部政治家や記者、警察官らの弱みを握り、不当な圧力をかけていた疑惑も浮上しています。これらについては今後、別途審理が行われる予定です。


―――――――――――――――――――――――――――――――――

〈File No.1-04 解説 帆置知彦――捕獲から判決まで〉終了

〈File No.1-05 コンサルタント 帆置知彦――配信から斉唱まで〉に続く

―――――――――――――――――――――――――――――――――

ここまでお読みいただきありがとうございます。

次回からは〈File No.1-05 コンサルタント 帆置知彦――配信から斉唱まで〉をお送りします。

最終章、VTuber界隈&因習村界隈のお話、12月28日で終了となります。


面白かった、面白そうだと感じていただけましたら

★評価・ブックマークをしていただけますと作者のモチベーションがあがりますので是非とも。


それでは引き続きお付き合いいただければ幸いです。


【追伸】

 本作品はカクヨムさんでのコンテストに参加しています。

 プロ作家部門のエントリーなので数字での足切りはないのですが、カクヨムアカウントをお持ちでしたらそちらでもチェックをしていただければ幸いです。

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