第51話 班決めでの奇跡
「おーい、フツオ~遂にこの日がやって来たぞぉ」
「おお、遂に来たな、モブオ……俺はこの日をずっと待っていたんだ!!」
そう、俺はこの日を待っていた。来週行われる1年生として初めての大きなイベント『謎めいた合宿』の班決めをするこの日をな!!
ちなみに以前から『なぞめいた合宿』の正式名称は『謎めいた』か『名染伊太』どっちなんだと思っていた俺だったが正式名称は『謎めいた合宿』だと先輩達から聞いてようやく解決した。
でもさ、名称は解決したけど余計に中身が謎だらけで未だに何をするのか担任すら教えてくれない。まさに謎めいた合宿だぜ!!
先輩達にも聞いたが、毎年『謎めいた合宿』での行事内容は変わるみたいで昨年や一昨年の内容はあまり参考にならないみたいだ。ただ共通しているのは色々な事を班で行動したり、競争したりするらしい。そしてその班は毎年、4名ずつで編成されるそうだ。
去年、菜弥美先輩達が1年生の時は奇跡的に3人共同じクラスだったので直ぐに3人は決まったけど残り1人がなかなか決まらず困っていたらしい。
でも当時、困っている菜弥美先輩達に『あなた達の班に入れてくれない?』と声をかけてきたのが同じクラスだった前妻木先輩だったそうだ。
入学当初から前妻木先輩は困っている人を見たら助けたくなるタイプだそうで、困っている3人を放っておけなかったみたいだ。その話を聞いた俺は前妻木先輩を改めて尊敬すると共にある妙案が浮かんだ。
皆さん、もうお判りでしょう!?(皆さんって誰だよ!?)
4人で1班……そう、自慢にはならないが俺達も現在、班決めをしても3人しかいないのだ。
実際、俺やモブオはなんとでもなるんだ。誰にでも話し掛けれるし、『お前のところの班に入れてくれ~』って事くらいは簡単に言える。だがしかし、舞奈は別だ!!
今も頑なに俺やモブオ意外とは友達を作ろうとしない。本当に困った奴だ……
だが今回は違う。絶対に4人で1班を作らなくてはならない。これは舞奈にもう1人友達が作れるチャンスでもあるんだ。俺はこの日をずっと待っていた。そして舞奈のもう1人の友達候補は勿論あの『和久塁聖香』である。
俺はこの件で和久塁と数日前から秘密裏に作戦を練っていた。そして本日、作戦は実行される!!
「さあ、今日は来週に行われる『謎めいた合宿』の班決めを行うわよ。みんな、ある程度は決まっているかもしれないけど、どうなのかしら? 一度分かれてみてくれない?」
「せっ、先生!! ちょっと良いですか?」
「何かしら寿志光さん?」
「班は絶対に4人じゃないとダメなんですか? 3人じゃダメなんですか?」
「3人? うーん、それは厳しいわね~うちのクラスは40名だから4人編成でちょうど10班出来るのよ。それに班同士で競争したりする行事もあるし、あなたの班が3人だと5人の班も出来ちゃうでしょ? それってバランスが悪いしねぇ……」
「そ、そうなんですか……」
うわぁぁぁ、舞奈の奴、凄く暗い顔してるそ。きっと舞奈の頭の中はマイナスの事しか考えていないよな!?
「せっ、先生!! ちょっとよろしいでしょうか?」
「どうしたのかしら和久塁さん?」
「じ、実は私達5人はいつも一緒なので今回の班もみんなと一緒がいいんですが……でも今先生が5人は厳しいとおっしゃったので思い切って私が抜けようと思うのですが……」
「へぇ、偉いわね~和久塁さん? それは助かるわ~」
「えーっ、聖香、本当にそれでいいの!?」
「そうよ!! 聖香が抜けなくても良いじゃない!!」
「なんか、聖香にだけ辛い思いをさせるなんて申し訳ないわ!!」
「もうこうなったら公平に、ジャンケンで決めようよ!?」
「皆有難う……でも私は大丈夫よ。私はどの班でも皆と仲良くできる自信あるからさ……」
「それじゃあ先生からの提案だけど、1人多くて自分から抜けてくれた和久塁さんが1人足らない寿志光さん達の班に入るっていうのはどうかしら? 布津野君、多田野君、寿志光さん、それでどうかな?」
「お、俺は全然構いませんよ。なっ、モブオ?」
「おっ、俺も和久塁さんなら全然ウェルカムですよ!!」
「寿志光さんはどうかしら?」
「わ、私は……うーん……ど、どうしよう……」
「舞奈ぁ~別に良いじゃないか? 和久塁はめっちゃ良い奴だぞ!! それは俺が保証するし!!」
「ふ、布津野君、『めっちゃ良い奴』とか『俺が保障する』とか皆の前で言わないでくれるかな!? なんだかとっても恥ずかしいわ!!」
「えっ、そっか~? でもお前は本当に良い奴じゃん」
「だ、だから言わないでって……」(ポッ)
「ふ、二人共、私の前でイチャイチャしないでくれる!? 特にあなた!! わ、和久塁さんって名前だっけ!? 私は3人の班が良かったの。でもワガママも言えないし……だから仕方なく受け入れることに……でも勘違いしないでよ!? 私はあなたの事を全然知らないし今の時点では何も信用していないから!! で、でも一矢があなたの事を良い奴とか保証するとか言っているし……だから今回は同じ部活仲間の一矢の顔を立てて、あなたを受け入れる事にするわ……」
舞奈の奴、マイナス思考にしてはエライ上から目線で言いやがったな!?
「ほ、本当か舞奈!? それは良かった。本当に良かった。これで安心だよぉぉ」
「何が安心なの? 一矢、凄く嬉しそうだけど」
「い、いやアレだ。俺は昔から負けず嫌いだから、競争する行事で俺の班が負けるのは嫌だったんだよ」
「一矢って負けず嫌いだったっけ?」
「ま、負けず嫌いだよ!! なぁっ、モブオ!?」
「えっ? あ、あぁそうそう!! フツオは昔から超〜負けず嫌いなんだよ!! だから3人の班はめちゃくちゃ不利だしね。和久塁さんが加わってくれたら100人力だしさ。わ、和久塁さん、俺達の班に入ってくれてありがとね?」
「そんなにアテにされても困るんだけど……でも私頑張るわ。寿志光さんに信用して貰える様に頑張るから皆さん宜しくお願いします」
「ま、舞奈でいいわよ……」
「えっ?」
おっ!!
「だから同じ班だし……私の苗字言いにくいだろうから、私の事はこれから『舞奈』って呼んでくれていいから……」
「えっ、ほんとに!? じゃ、じゃあ私の事もこれから聖香って呼んでくれるかな!?」
「わ、分かったわよ……せ…聖香……」
「有難う!! これからよろしくね? ま、舞奈……」
「オイオイオイオイ!! 二人共なんだか青春っぽいなぁ!?」
「うるさい一矢!!」「うるさいわよ布津野君!!」
フッ、フフフ……2人仲良く俺を突っ込みやがって……
突っ込みは俺の専売特許だぞ!!
しかし……上手くいったぞ〜!!
舞奈の奴、上手い事と引っかかってくれたよなぁ?
俺は1週間前から既にこの奇跡の瞬間が起こる為の作戦を実行してたのだよ。
まず初めに俺が作戦の事を先生に説明すると喜んで協力してもらえる事になった。
そして和久塁の友達4人も作戦に加わってくれた。そしてクラスのリーダーでもある和久塁がクラス全員の班分けを事前にまとめ、クラスの奴等は全員それを承諾してくれたんだ。
そうさ、舞奈以外のクラス全員がグルなんだよ!!
それもこれも舞奈、お前の為に皆喜んで協力してくれたんだ!!
これで和久塁から頼まれていた『舞奈と友達になりたい』というのも、何とかなりそうだぞ。
『寿志光舞奈に同級生の女友達を作るぞ作戦 第一段階』成功だーっ!!
たまにふと、何で俺が舞奈の為にここまでやらないといけないんだって思う事はあるけど、今日は嬉しいから考えない様にしよう。
お読みいただきありがとうございました。
新章『謎めいた合宿編』開始です。
面白い内容になるように頑張りますのでどうか新章も宜しくお願い致します。




