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留学生とお世話係  作者: 緑谷めい


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4/5

4 プレイ?



「トルスティ。お前とユリアナ嬢のアレは、そういう【プレイ】なのか?」


 放課後、ようやくジュリアナから解放されたトルスティがヨロヨロと生徒会室に入ると、いきなり第2王子マクシミリアンにそう問われた。

「プレイって何ですか? 俺自身、訳がわからなくて頭が追い付かないんです」

「傍から見ていると、正式な婚約者どうしが”留学生”と”お世話係”という設定でイチャついている【プレイ】にしか見えないぞ?」

「えぇ? そうなんですか?」

 戸惑うトルスティ。まさかそんな風に見られているとは?!

「ユリアナが何を考えているのか分からないんです。おっとりとして口数も少なかった彼女が、髪をピンクゴールドに染めて”留学生ジュリアナ”に扮した途端、積極的に俺に絡んできて……本当にどうしちゃったんでしょう?」

 トルスティはそう言って溜め息を吐いた。


 黙って聞いていた公爵家令息アードルフが口を開く。

「ユリアナ嬢はトルスティが他の女の子と仲良くしたいと思っているのなら、自分がその”他の女の子”になればいいと考えたんじゃないかな? だからわざわざ、気軽に付き合えるよう平民を名乗ってるんだと思う」

「はぁ?」

「もしかしてお前……ユリアナ嬢に愛されてるんじゃね?」

「ま、まさか。俺とユリアナの婚約は政略だし、今まであまり会話も弾まなくて大して親しくもない関係だったんだよ?」

「だからだよ。ユリアナ嬢ではなかなか縮まらなかったお前とのを距離を”留学生ジュリアナ”になって一気に詰めようとしてるんじゃないか? きっと、元々ユリアナ嬢は婚約者のトルスティともっと親しくなりたいと思っていたんだろう。そこへお前が自由宣言なんかしたもんだから、それを逆手にとって他の女の子になり切って、お前と仲良くなろうとしてるに違いない。絶対そうだって!」

「何だか分かったような分からないような……」


 腕組みをしたマクシミリアンが言う。

「トルスティも大概不器用だけど、ユリアナ嬢も不器用なんだな。自分の素直な気持ちを、そういうプレイの中でしか表現出来なかったんだろう。可愛らしいじゃないか」

「だからプレイじゃありませんってば!」

「だが、お前たちのプレイは既に学園中の噂になっている」

「そんなぁ~(泣)」

 

 そしてそんな噂が学園内だけに留まるはずもなかった。

「トルスティ。お前、学園でユリアナ嬢と面白い事をしているそうじゃないか?」

 上機嫌でトルスティに声を掛けて来たのは父だ。

「あ、いえ。別に面白い事をしているつもりは……」

「ガハハハッ。いや、良かった良かった。てっきりあちらに見限られたと思っていたのに、お前とユリアナ嬢がそういうプレイを楽しんでいただけとはな。最初からそう言ってくれれば私も気を揉まずに済んだのに」

「あ、えっと……」

「いい。いい。仲良きことは美しきかな。ガーハッハッハッ」

 何となく、丸く収まったのだろうか? 

 


 慣れと言うのは恐ろしいものだ。

 最初はあれほど抵抗感があったのに、トルスティとジュリアナの距離は確実に縮まり、今では二人で腕を組んで歩くのも、学園食堂で昼食を「あ~ん♡」し合うのも平気になってきたトルスティ。

「トルスティ様だ~い好き♡」

 と両手でハートマークを作るジュリアナに、

「俺もユリアナがだ~い好きだよ♡」

 と、同じく両手でハートを形作る。

「トルスティ様ったら。そこは『ユリアナ』様じゃなくて『ジュリアナ』でしょう?」

 口を尖らすジュリアナ。けれどその声音はどこか嬉しそうだ。

「あー、そうだった。そうだった。ごめんね、ジュリアナ」

「許さないんだから♡」

「許してよ~ん♡」


 ついには、放課後の生徒会室にまで二人で現れイチャつくトルスティとジュリアナ。ジュリアナは当然のようにトルスティの膝の上に乗っている。

「私たちは何を見せられているんだ?」

 生徒会室の主であるはずの第2王子マクシミリアンが呟く。

「変態プレイではないでしょうか?」

 公爵家令息アードルフが眉を顰めながら答える。

 すると、ジュリアナが突然マクシミリアンとアードルフに鋭い視線を投げて来た。ドキリとする二人のイケメン。


「マクシミリアン殿下。アードルフ様。トルスティ様が生徒会の【姫】であることは承知しておりますが、トルスティ様は決してお二人のモノにはなりませんわよ」

「は?」「へ?」

「キュートでプリティでチャーミングなトルスティ様が姫ポジになってしまうのは、ある意味仕方がないことですわ。けれど、トルスティ様は私のモノですの。お二人とも、そこのところをお忘れなく」

 思いもかけない台詞を投げつけられ、呆気にとられるマクシミリアンとアードルフ。言葉をなくした二人に、ジュリアナは勝ち誇ったような笑みを見せたのだった。

 



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