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エピソード064 私達、王様に謁見します1

あちゃぁ……ちょっと書いてみると長くなりすぎたので前後に分割します。


 王都パンドラに到着した私達は、早速中に入るために城門前の列に並んだ。

 1年前、父について王都に来た時はかなりの行列だったはずなのに、今日は並んでいる人が非常に少ない。運良く人が少ない時間帯に到着したのかな。


「あのぉ、すみません。私達、国王様に謁見するために王都に来たんですけど」

「君達はもしや……? う、上の者に報告するのでしばしそこで待たれよ」


 すぐに順番が回ってきたので、私は城門を護る兵士に冒険者カードを見せて、用件を話してみた。随分と兵士がピリピリとしている。なにか王都に問題があったのだろうか。


 しばらくして兵士が連れてきた人物は、ケーニッヒだった。勿論すんなりと話は通り、私達はケーニッヒと共に王都に足を踏み入れた。


 城門をくぐるとすぐ見えるのは大通りだ。本来ならばこの通りは行商人が並び、大勢の人で賑わっているはず。

 にも関わらず、大通りには行商人の数はまばらにしかなく、人通りもほとんどなくて閑散としている。


 いよいよもっておかしい。私は首を傾げながら、とりあえず今から宿を取りに行くので、王様

に謁見の予定を組んでもらうようお願いした。



「大丈夫です。すぐに謁見は可能なので、皆は私と共に来て頂きたい」



 ケーニッヒは硬い表情でそう答え、チラリとベルの事を見やると、踵を返して城へと続く道を歩き出した。以前は数日間かかった王様との謁見が、来て早々実現するようだ。そんな馬鹿な。

 シャロが私の傍に近寄ってきて、小声で耳打ちしてきた。


「……ねぇルシア。なんかおかしくない? 王都も静かすぎるし、国王陛下が色んな予定をすっ飛ばしてあたしたちとの謁見を優先するなんて」

「うん。私もそう思うけど……。ケーニッヒさんも詳しい事は話してくれなかったし、とりあえずついて行くしかないよ。何故かベルの様子を気にしてたようだけど……」


「ベルもしせんをかんじたの。でも、それよりなんだか……」


 ベルは王都に入った頃からキョロキョロと落ち着かないように周囲を見渡して、時折スンスンとなにかを嗅ぐような素振りをしていた。


「どうしたの?」

「うーん……? ベル、『王と』ってはじめてきたけど、なんだかなつかしいにおいがするの。でもなぜか分からないの」


 ベルが首を傾げながらクンクンと辺りを嗅ぎ続けている。

 その様子が子犬を彷彿とさせて、今にも抱きしめたくなる衝動に駆られたが、グッと我慢してケーニッヒに続いて城に向かった。


-----◆-----◇-----◆-----


「よく来たな。上級冒険者パーティ『フォー・リーフ』よ」


 ホントにすぐに謁見出来ちゃった……。


 1つ高い位置にある玉座から話しかけてくるのは、パンドラム王国第11代国王、ヨハン=ヴォン=パンドラムだ。

 私はこれで2度目、非公式な謁見を含めると都合3度目になるので流石に対応には慣れている。しかし、他の皆はこれが初めての経験で、特にシャロは妙に緊張しているのが伝わってくる。


 これは私が代わりに話した方が良さそうだと判断して、私が珍しくパーティの代表として、王様と話をすることになった。


「国王陛下、ご壮健そうで何よりでございます」

「おお、ルシアか。1年……いや、約2年ぶりではあるか。お主の噂は騎士団の者から度々報告が上がっておるのでそんな気分はしないの」

「……良い噂である事を祈るのみです」


 国王陛下は愉快そうに笑った。たぶん王様に私の話をしているのはケーニッヒだ。私はどんな評価を受けているのか少々心配になりつつも、努めて平然とするに留めた。


「しかし、お主は農民ではなかったか? なぜ冒険者なぞしておる。働き口がなければ騎士団に入団せよ、とあれほど口酸っぱく口説いたろうに」


 王様の口調がやや不機嫌だったので、私は慌てて自分が期間限定で冒険者となった経緯を説明した。

 ちょうど良い。もし話が聞けるなら、急に納税方法がお金のみになった理由も探れないだろうか。



「――なるほどの。村の税金が払えないので、お主が冒険者として金策に励んでおる、と」

「その通りでございます。もし宜しければ、此度の我が国の急な方針転換の理由を、浅学な私めにお教え頂けますでしょうか?」



 王様は言葉に詰まり、その場はしばしの静寂が流れた。

 これは調子に乗ってやってしまっただろうか。シャロから『何要らないこと聞いてんのよ!』と怒気すら漂ってくる。


 だって仕方ないじゃない!

 別に冒険者家業が嫌だってわけじゃないけど、私だって自分の本業である畑の世話を一旦放棄してまで必死に命を掛けてお仕事する羽目になってるんだよ? その理由くらい教えて貰いたいじゃない!


 暫くの沈黙の後、王様が重い口を開いた。


「……あいわかった、話そう。ルシアを含めて、お主らを王都まで呼び出した理由にも通ずること故にな」


「国王陛下!!」


 王様の横に控えていただろう男性が王様を嗜めるような声を上げたが、王様はそれを逆に諌めて話を続けた。


「良い。本来は国と余に仕える騎士団の者達のみで事を解決できれば良かったのだが、状況は緊迫してきておる。実力のある冒険者達にも話す必要があるだろう。

すでに国内のSランク冒険者、アレックスにも話は通したのだからな。同じSランク冒険者であるルシアとその仲間達に伝えるに問題無いと余は判断しただけよ。

……さて、何処から話せば良いか……」


 そう前置きして王様が話し始めた内容は、私の想像を遥かに超えて進行していた。

 

 パンドラム王国は隣接する他国との戦争も少なく、比較的安定した国である。

 理由は幾つもあるが、その1つにこの国は農業大国であり、他国にも様々な食料の取引をしていたから、という側面がある。


 それがおよそ2年ほど前から話が変わってきた。

 国内で魔物の出現率が急に増加したのだ。しかし、魔物の出現の増加は今までも稀ではあるが起こった現象であったために、当時は騎士団を派遣して問題を収めるだけで根本的な原因の究明を怠っていた。


 しかしながら、同じような状況が1年以上続き、各地の農耕地が集中して襲われる事が頻発していることに気づいた国は、慌てて原因の究明に奔走したのだという。



「そこで見えてきたのが、この国に垣間見える他国の影……そして魔物を暴走させるという、奇妙な石の存在だ」



 魔物を暴走させる石の存在は、実は1年ほど前から国の中枢には知られていたらしい。

 しかし、強化された暴走魔物を捕らえるのは容易ではなく、しかも無理やり魔物から引き剥がすと黒石が自壊してしまう。

 以前に私が手にした黒石が損壊してない物としては初めてだったらしい。


 ソフィアの解析に国も協力した結果、黒石の正体はとある魔物の魔石を加工したものだった。


 魔物の名前は『ルナ・スコピオ』。その生息域は――――


 


 ――――オルゴルシア帝国だった。




お疲れ様でした。

いつも貴重なお時間を頂いて読んでもらい、とても感謝です。

楽しんでもらえるよう、そして何より、私自身が楽しんで書いていきますね。

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