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エピソード046 私達、お祭りに向かいます

夏祭り編突入です。

これはいつか書きたいお話だったので、書いてる途中もワクワクが止まりません。

 

「皆、今日は重要なお話があります」



 私はギルドの酒場にパーティメンバーのシャロ・ローラ・ベルを呼び集めた。私は少し芝居がかって某特務機関の最高司令官のように腕を組んで座っている。


「何よ。もしかしてパーティを抜けるとかそういう話!? まだ1年経ってないわよ」

「シャロ。ルッシーがそんな真面目な話をこんな雰囲気ではしないよ。どうせ『私のご飯のおかずが一品足りませんでした』とか言い出すんだよ」

「はっ!? ル、ルシアごめんなさい。きのうのおにく、たくさん食べたのベルだったの……」


 ……折角驚かそうと思ってたのに、なんか緩い雰囲気だなぁ。まぁ良いけど。


「お肉の件については後でじっくり聞かせてもらうとして「えぇー」、……ごほん。重要なお話っていうのはね、3日後、私の村でお祭りがあるんだよ! それに参加しない?ってお誘いだったんだけど」


「「「お祭り?」」」


「そう! 私達の村では『ボルカニア祭』って呼んでるんだけどね。火の大精霊ボルカニア様のためのお祭りなんだよ!」


 私の説明を聞いて、シャロとローラが首を傾げた。


「なんで火の大精霊様のお祭りなの? 普通、農民が祭るのは地の大精霊ジオニカ様や水の大精霊ヴォダフニカ様辺りなんじゃない?」

「そう言えばルッシーの村の名前は()()()村だったね。何か由縁があったりしたり?」


 2人の疑問に私も首を傾げる。


「うーん。師匠から昔ドラム山脈の一部が活火山で、ボルカニカ様の住処だった、てのは聞いたことあるけど。村の由来とかはわかんない」


 別に村に火の大精霊に由来するような物はなかったと思う。強いて言えばお祭りの時に使用する御神体くらいかな?


「ふぅん。面白そうだからあたしは別に良いわよ?」

「同じく」

「ベルもいきたーい!」


 うんうん。皆ならそう言ってくれると思ってた。


「ふっふっふ。これで堂々と畑の様子を見に行けるよ」


「ルシア。心の声がだだ漏れよ?」

「はっ!?」


 兎にも角にも、私達は祭りに参加するためにボルカ村へと向かうのだった。


-----◆-----◇-----◆-----


 ボルカ村のお祭りは3日後なので、スタージュの街からゆっくりと移動すればちょうどいい感じに村に到着するはずだ。

 その道中、私はソフィアとの通話を試みていた。しかし、何度目かになる呼び出しにもソフィアは応じず、私はため息をついてケータイをしまった。


「ソフィア様はお祭りに参加しないの?」

「うーん。今まで参加した事はないからなぁ。でもレーベン村で別れた以降、ケータイで呼び出しをしても全然応答してくれなくて。大方あの黒い石にの研究に夢中になってるんだと思うけど、ちょっと心配だなぁ」


 ちなみにケータイのことについては暇を見つけて皆に話したので、堂々と使用していることについては指摘はされない。

 その代わり、あたし達の分も作って欲しいと言われたので、その件もソフィアに相談しておきたかったりする。


 ケータイに関しては、私では作れないからなぁ。お祭りが終わるまでに連絡が取れればいいんだけど。


「ルシアの村たのしみなの! トモダチいる?」

「いるよー。前に会ったタマの事は覚えてるよね? 他にもミーちゃんとポチ。私の幼馴染なんだ。ベルのこともちゃんと紹介するね」

「うん!」


 ベルはまだ村までは距離があるのに、もうお祭りや私の友達の事で頭がいっぱいのようだ。ちなみにベルは背中に大きな風呂敷を背負っている。中身は服屋で見つけた浴衣だ。


 興味深いことに私の村のお祭りには前世の浴衣に似た薄い着物を着る風習がある。そのため、祭りが始まる数ヶ月間は衣服の作成に村の女性は駆り出されることが多い。

 きっとミケもギリギリまで作業していただろう。帰ったらウンと労ってあげないと。


「着物は私のお古で良ければシャロ達の分もあるからね」


「「窮屈そう」」


「……どこがかね? ねぇ、どこが窮屈なのか言ってみ? というかシャロは言うほど私と変わらないじゃん!」

「そんな事ないわよっ!」


 女が3人寄れば姦しいとはよく言ったもので、実際には4人+1人(アーシアは外が暑いから出たくないと引き籠もってる)も居るので道中も姦しいの最上級だ。


 しばしキャッキャと騒いでいると、急にコホンとローラが咳払いをしてニヤニヤ顔で尋ねてきた。

 こういう顔をするときのローラはなんか悪い事考えてそうだから答えるの嫌だなぁ。


「ルッシーの村のお祭りには恋愛にまつわる噂とかないの?」

「なにそれ?」


「ほら、お祭りみたいな非日常は恋愛にぴったりなシチュエーションだから。私の昔住んでた所のお祭りでも『祭り中に御神木の前で告白すると恋愛成就する』とかあったし」

「あたしはなかったかな。す、好きな男性と一緒に参加するっていうのが近いかもしれないけど」


 そういう話にあまり興味がなかったからなぁ。……食い気ばかりで。

 私は村のそういう噂話がなかった懸命に思い出していると、ふと昔ミケがそんな事を言っていたのを思い出した。


「あー、あったよ。たしかお祭りの最後にボルカニア様に捧げるために村の中央でキャンプファイアー……ってわかるかな? 材木を組んで盛大に焚き火をするんだけど、そこで告白すると結ばれる、とかなんとか?」


「……へぇ(ニヤリ)」


 うわ、これはなにか絶対悪い事考えてる。今のうちにローラの悪巧みの犠牲者の為に黙祷しておこう。


「それってつまり村の住人の前で告白されるってことよね……あたしだったらちょっと恥ずかしいかも。どうせなら星の見える丘で二人きりでとか……あぁ」

「シャロはホント見た目と違って乙女だよね」

「そ、そんな事ないわ!……ちょっと待ってルシア。見た目とは違って、とはどういう事かしら?」


 おっとまずい。

 私は口笛を拭きながらとぼけておいた。

 あ、でもたしか火を捧げれば何処でも良いとかも聞いたこともあるような無いような……。うん、興味なかったからよく覚えてない。


「ねーねー、キュウアイとかコウビのはなしはいいから早くいくのー! ベルはまちきれないの!」

「「「交尾の話はしてないからね?!」」」


 まったく、ベルは何処でそんな言葉を覚えてきたのだろう。両親かな? ベルはまだ幼いはずだから種としての遺伝とか?

 竜種の子育てとかどうなってるんだろう。ちょっと興味がある。


 とりあえず私達はベルに促されるようにしていったん話をやめ、今日の宿泊地を探すことに専念するのだった。


お疲れ様でした。

いつも貴重なお時間を頂いて読んでもらい、とても感謝です。

楽しんでもらえるよう、そして何より、私自身が楽しんで書いていきますね。

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