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エピソード043 私、オバケ退治に行k……たくないです!

夏といえば納涼肝試しです。私はルシアと違ってホラーが大好きなので、ついついルシアが知り得ないだろう情報を書きそうになって非常に困ります。

 

 季節は初夏。

 早いもので、私が冒険者となってからもう3ヶ月が経とうとしていた。


 私達は以前の護衛クエスト+氷竜討伐の件でシャロとローラが冒険者ランクBに、私がEから一気にCランク入りを果たし、ギルドの皆を仰天させた。


 さらには新メンバーの『氷竜』ベルザードことベルの強さだ。冒険者登録の際には幼体で且つ角を失って弱体化しているとは言え、竜種ドラゴンとしてのスペックの高さをまざまざと見せつけてくれた。



========================================

ベルザード [氷竜(幼)]

lv: 10

HP: 500/500 MP: 200/200 AP: 0/0

STR: 189(-50) DEF: 141(-50)

MAT: 150(-50) MND: 150(-50)

SPD: 087(-50) LUK: 043(-42)

[スキル]

・ブレス(氷塊)lv.--

・飛翔lv.2

・弱体

[魔法]

・【アイスド・ランス】lv.1

・【アイスド・クロウ】lv.1

・【フロスト・ヒール】lv.1

・【フロスト・リヒール】lv.1

========================================

[ブレス(氷塊)]

・氷の塊を広範囲に吐き出す。物理+魔法ダメージ

・人型の時には使用不能

[飛翔]

・有翼種の確定スキル。そらをとぶ

[弱体]

・重要機能欠損によるマイナス補正

【アイスド・ランス】

・消費MP10

・水属性亜系統、ランス系の中級魔法

・氷の槍を生成し、自在に操る。射出可能

・環境によって威力が変化

【アイスド・クロウ】

・消費MP10

・水属性亜系統、クロウ系の中級魔法

・氷の爪を指先に生成する。氷結効果

・環境によって威力が変化

【フロスト・ヒール】

・消費MP10

・水属性亜系統、ヒール系の初級魔法

・味方の傷や体力を回復させる

・体温低下効果。環境によって威力が変化

【フロスト・リヒール】

・消費MP5

・水属性亜系統、リヒール系の初級魔法

・味方の傷や体力を徐々に回復させる

・体温低下効果。環境によって威力が変化



 弱体化していても人族では簡単には越えられない3桁の壁をあっさり超えているのは流石としか言い様がない。

 そのステータスを見た受付のお姉さんが、気の毒そうに私を見ていたのが印象的だった。


 何故か憐れまれてる?! 同じマイナス補正ステータスなのにこの差、みたいな?

 大丈夫です、私も笑うしかないですので。へへっ。


 と、とにかく、最近では周囲の冒険者の私を見る目が変わったのを感じている。

 具体的に言うと、田舎から出てきた村娘を見る馬鹿にしていたものから、得体のしれない村娘を見る畏怖の混じったものにランクアップしていた。幾人かの男の人は、私とすれ違う度に一部を隠すようにしてるっぽい。

 ……あれ? これランクアップしてるのかな。


 ちなみに畏怖が混じってしまったのは、護衛クエストの際に執拗に急所を狙い撃ちした事がギルド中にバレたからだ。アーシアとローラが悪ノリして散々触れ回るから……。


 こんなのただの悪評だよぉ!


 もうちょっと普通に羨望とか憧憬とかを抱かれたい。そんな事を思う私だった。



「暑い……」


 私は例の酒場でジュルジュルと温いお水を飲み干しながらボソリと呟いた。


 この世界でも当たり前ながら夏は暑い。

 と言うか、前世では少し暑くなるとすぐクーラーにおんぶにだっこな現代っ子だった私が、クーラーなんて存在しない異世界でどれだけ苦労しているか。


 前世の日本よりも湿度は低めなのでジメジメとした鬱陶しさは感じないけど、暑いものは暑いんだ。


 この時期だけは長くなった髪を少し煩わしく思う。熱が篭もるし、汗でへばりつくんだよね。なので、今は髪をアップにして俗に言うポニーテールにしている。


「だらしないわね」

「ヘタレルッシー」


 うるさいうるさい!

 2人だって風通しの良い建物から出ようとしないじゃない!

 黙ってるからって私と同類なのはお見通しなんだからね!


「うぅ……ベルぅー、こっち来てー」

「えー、またぁ?」


 ベルが嫌々ながらも私の横に移動してきてくれた。私はベルにペタリと抱き付きながらささやかな至福を堪能する。


「あぁー、ひんやり冷たくて気持ちいいー。私ずっとベルとくっついて生活したい」

「ベルはあつくなるからイヤなのー」


 元々氷竜というだけあって、ベルは人型でも常に冷気を薄く発している。魔法も冷気を伴う効果が多く、夏には絶対に一緒にいて欲しい人材ナンバーワンだ。

 私、今後ベルなしでは夏を乗り越えられないかも。


「仲が良いのは結構だけど、あたしはそろそろクエスト受けたいんだけど」

「ルッシーも稼がなきゃでしょ?」

「ベルはせんとう系のクエストうけたい!」


 んー……。クエストかぁ。


 私は窓の外をそっと見やり、太陽がカンカンと照りつけている事を確認する。まぁ、確認するまでもないけどね。私のやる気が一気に萎える。

 畑仕事ならいくら照りつけようが大雨が降ろうが頑張ろうって気分になるんだけど。



「せめて夜のお仕事ならなぁ……」



「なぁっ!?」

「ルッシー大胆」

「だいたん?」


 太陽が出ていない時なら少しは涼しくなるよね、っていう安直な私の呟きに、カァッ!と頬を染めて慌てふためくシャロと対照的にムフフとニヤけるローラ。

 私と同じく、彼女達が何と勘違いしたのか意味がよくわかってないベル。



「あるわよっ! 夜のお仕事!」

「ええっ?!」



 そこに乱入してきたのはギルド内をウロチョロしていたアーシアだ。アーシアは他の冒険者にも何故か気に入られているらしく、ギルドに滞在している時は私から離れている事が多い。

 強面の冒険者と一緒に幼女がジュースを持ちながら談笑している様子はちょっと犯罪的な臭いがする。


 それはともかく、アーシアの手には何かのクエスト依頼書が握られているようだ。それを見てシャロがさらに慌てふためく。


「そ、そういう事は好きな人と段階を踏んでいくことであって、あ、あたしはそういうのは……その、えっと!」

「耳年増なシャロはちょっと落ち着くのが良いと思う」

「なんですってっ!?」


 ちょっと何と勘違いしてるのかわからないけど、シャロの想像してるようなものとは違うと思う。どうせ夜にだけ出没する魔物の討伐とかじゃないのかな?


「で、アーシア。 どんなクエストなの?」

「これよ!」


 机に広げられた依頼書を皆が覗き込む。私の予想は大きくは外れておらず、それにはこのような事が書かれていた。


『【夜間限定】街外れの廃屋敷の除霊を依頼します。

 【仕事内容】ゴーストやグールなどの魔物討伐および除霊。

 【報酬】1人当たり、銀貨5枚X → 小金貨5枚X → 金貨1枚

 【特記事項】依頼達成後には腕利きの祓い師をご用意致します。』


「なんだ、スピリットやアンデッド系の討伐ね。そんな事だろうと思ったわ」

「シャロの嘘つき」

「オバケたいじ! せんとう系クエストだ!」


 シャロは書面を見てホッとため息を吐き、それをローラはジト目で見つめる。戦闘クエストを受けたいと言っていたベルは大喜びだ。


「でも、この依頼おかしいわね? 報酬金額が増額されているし、それにこの特記事項」

「如何にもヤバいモンスターが出ますよ、って感じ」

「うけるの! ナイスなのアーシア! ベルやる気でたよ!」


 ベルはもう受ける気満々だが、シャロは依頼書を改めて眺め、クエストを受けるべきがどうか悩み始めた。

 依頼書の報酬金額が更新されている場合、それはクエストを受けた何人もの冒険者が失敗している事を示唆している。


「うーん、金額は良いけど難易度は高そうね。除霊用の装備も整えなくちゃだし、あんまり儲けは期待出来ないかもしれないわね」

「でもパーティの名を売るにはもってこいじゃない? 今回はベルたんがやる気だし。どう思う? ルッシー……、ルッシー?! どうしたの、顔真っ青だよ!?」




「……む、無理無理無理ぃ!! オバケはホント無理ぃ! 勘弁して下さいぃぃいいい!」




 ごめんなさいホント無理。

 ホラー映画とかならギリギリいけるよ? でもリアルは絶対無理!お化け屋敷とか本気で気絶した事あるんだよっ?!

 しかも今世ではグールとかゴーストとかいうオバケの仲間がホントに存在して襲ってくるんでしょ?

 無理無理無理。聖環の儀式の時の二の舞になる未来しか見えないよ!!


「アーシア! 今すぐその紙を元の場所に返してくるのよ!」



「え? でも、もうクエスト受けちゃったよ?」



「「「え゛っ」」」


 私は依頼書をひったくって受領印の有無を確認する。紙の端に印が押されているのを認めると、私はそのまま膝から崩れ落ちた。

 い、いや! まだだ! 今からクエストの受領を破棄すれば。


「ルッシー。報酬更新クエストは最低でも現場を確認しないと破棄できないよ」

「神は死んだ!!」

「生きてるよっ?!」


 そうだった……冷やかし防止のために簡単にクエストを破棄出来ないように決められてるんだった。

 

 私、終わった。


「だ、大丈夫よルシアちゃん! 私がちゃんと護ってあげるわ」

「だいじょうぶだよルシア。ベルがんばるよ!」


 私の気も知らないで純粋無垢な2人が私の肩を叩いて励ましてくれた。そのうち1人がこうなった元凶なんだけどね……。

 私は逃げることが出来ないことを自覚し、悲愴な覚悟を決めるのだった。


お疲れ様でした。

いつも貴重なお時間を頂いて読んでもらい、とても感謝です。

楽しんでもらえるよう、そして何より、私自身が楽しんで書いていきますね。

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