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エピソード028 私、今日も元気に畑仕事です

第二章始まりました! いきなりのんびりと畑仕事してますが笑

こういう描写って私のお話では少ないので、たまにでも挟んで行けたら……いいなぁ。


サックサックサクッ!


「えんやこらさー」


ガッシュガッシュガシュッ!


「どっこいさー」


春の陽気が漂う昼下がり。

今日も自分の畑を武具を駆使してコツコツ耕す。


私、ルシア。12歳になりました。


10歳の頃から5センチほど身長が伸びて、今は150センチくらいかな。

リンスの作り方を王都で教えて貰って自作出来るようになったので、以前よりも少しだけ伸ばすようにしている。

普段は作業の邪魔になるので軽くまとめているが、下ろすと肩くらいまでの長さにはなった。


2年前にソフィアから貰った金隼の髪留めは今も大切に使っていて、今日も私の髪を流れるように飛んでいる。


畑仕事で引き締まった肢体は健康的で、素朴な魅力を溢れさせている……と自負している。

身長が伸びて少し丈が足りなくなった上着から、時折チラリと(へそ)が覗く。


2年前に絶壁だのまな板だの言われていた胸は……少しだけ膨らみを帯びたが、残念ながらそれ以上大きくなる気配がない。

母は大きいのに。隔世遺伝だろうか。解せぬ。

別に、良いんだけどね。

まだ12歳だし。成長期だし。同じ歳のミケはだいぶ大きくなってるけど、別に気にしてなんかないから!


「ねぇルシアちゃんー、武具の特殊スキル使ってサクッとやっちゃったらー?」


私の傍でミミズを指でちょんちょんと弄ぶ、見た目完全に幼女なこの子は下っ端農耕神のアーシアだ。

ところで、私の畑の善良な住人をいじめるのは止めて欲しい。


前世で死んだ(と私は伝えられている)水地武みなちたけるという元男の私を日本に輪廻転生させるつもりが、何故か異世界で記憶を残したまま女として転生させてしまったへっぽこな神様。

ああ、あの時のちょっと疲れた出来るOLのようなお姉さんの面影は何処に消えてしまったんだろうか。


普段は全く役に立たないし、戦闘では足を引っ張るし、厄介事を積極的に拾ってくるスペシャリスト。

でも農耕神の名は伊達ではなく、前世で親の畑仕事を手伝っている程度の私では知り得ない、様々な知識を披露してくれるのがせめてもの救いだ。


それでも、うん。耕運機が欲しい。

前世の技術をフル稼働させられるチート能力とか道具が欲しい。


っていうか、前世では普通の大学1年生の私がこんな文明が中世レベルの世界でしっかり生きていけてるのがそもそも奇跡だよね。

別に、中世の世界って詳しくないから本当にそうなのかいまいち自信ないけど。


私が持ってるのって、類稀なる防御力(DEF)――ただし畑仕事で地味に鍛えられた筋力(STR)以外の能力がアーシアの加護のおかげで壊滅的――とオリジナルと呼ばれる防御や鑑定スキルみたいな補助スキルを有する強力なアーティファクトである【聖環・地】という指輪、いくつかの魔法、そして様々な農耕に関係する道具――ただし原始的なもののみ――を召喚出来る武具【農耕祭具殿】くらいだ。


約12年経って気づいた真実。

ほとんど生業である農耕に関係ないじゃんっ!!


唯一の救いである【農耕祭具殿】の便利な特殊スキルも一日の使用限度(AP)が設定されちゃってるし。

農民として転生したならせめて農業チート出来る能力が欲しい。

私が前世で読んでた異世界転生系の本の主人公達はもっとイージーモードだったよ。

しっかりして、神様。


「残念。今日の使用回数はもうゼロだよ。ご近所の畑を耕すお手伝いで全部使っちゃった」

「それで自分の畑に使えないってもうただのお人好しだよね!」


くぅっ!

アーシアに正論吐かれた。


「い、いや。別に計画通りだし。武具の能力でサクッと耕しちゃうと全部均一になっちゃうから差をつけるために地道にやってるだけだし!」


苦し紛れに言い放った言葉だが、これは事実だ。

全ての作物が同じ品質の土で最適の環境というわけではない。

育てる作物に合わせて少しずつ耕すキメを変えてあげなければならない。面倒くさいけど奥深い世界なんだよね。


「ホントはお米の栽培もしたかったんだけどなぁ」


王都で食べたお米が忘れられず、村で作れないか色々試行錯誤してみたけど未だその成果は現れていない。


私の【鑑定スキル(自然)】による地形分析結果では洪積土(雨や風、洪水などによって運ばれた土に有機物が溜まり堆積したもの)に近い地質である村の土は、一般的な野菜などの栽培には向いているけどお米づくりには向かなかったはず。


とはいえ、土の品質改良を施せば何とかなるレベルだとは思うんだけど、その労力が半端ないんだよね。


完全には諦めてはいないけど、既にここパンドラム王国に水田があるのは分かったんだし、私の贅沢品として購入した方が賢いんじゃないか、という気分にはなってきた。


そのためにはお金、稼がないとなぁ……はぁ。

なんか異世界に来てまで世知辛い思考に陥ってる気がする。


「よく分からないけど、ルシアちゃんなら出来るよ! 頑張れ!」

「アーシアが謎の神パワーでピカッ!と解決してくれても良いんだよ?」



「神様は知識を与えはするけど、直接手を下すことはしないのよ!」



アーシアは胸を張ってドヤ顔でのたまった。一度言ってみたかった台詞らしい。

それっぽいことを言ってるけど、誤魔化されてる気しかしない。

でも、いくら弱体化されているとは言え、出来るん……だよね?

下っ端農耕神兼私の守護神としてもっと私を甘やかしてくれてもいいのに。


「はいはい。それじゃあ凡人な私は凡人らしく地道にやるよ」


かくして私は農民らしく、今日ものんびりと鍬を振るい続けるのだった。


お疲れ様でした。

いつも貴重なお時間を頂いて読んでもらい、とても感謝です。

楽しんでもらえるよう、そして何より、私自身が楽しんで書いていきますね。


※総合PV5000達成&感想ありがとうございます!感謝感激です!

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