エピソード小話 私とミケ・ポチ・タマ
置き場が乱雑としていたので、整理がてら3つの小話をまとめて一話としました。
こんな話本編のどこで入れれば良いんだ!って感じです。時系列はメチャクチャです。お気になさらず。
安心してください、健全ですよ。
小話その1:『ミケの耳はモフモフで美味しい』
とある晴れた日の午後。
特にやることのなかった私とミケはのんびりと日向ぼっこをしていた。
「ミーちゃんって、猫人族だよね」
「急になんなのニャ? そんなの見ればわかるのニャ」
何となく急に聞いてみたくなった。
私の前世にはコスプレとしてネコ耳を着けた人種はいたらしいが(私は直接見た事はない)、本当に猫耳やしっぽを生やした人は居なかった。
改めてミケを見てみると、髪(毛?)で隠しているから分かりにくいが、私のような人族に有るべき所に耳が無く、頭に耳が生えてるのは不思議な感覚だ。
「耳が4つあるわけじゃないんだね」
「なんニャそれ! 怖い事言わないで欲しいニャ!」
ミケの耳がピンとなり、しっぽが逆立った。
確かに。
コスプレという概念を知らないと凄く怖い。
「ねえねえミーちゃん、触ってみてもいい?」
「しっぽはダメニャ。耳ならまぁ、優しくしてくれるなら」
私はミケに近寄ってそっと頭を撫でてみた。
おお、髪の毛と触感が違って柔らかい。
そのまま、耳をソワソワと撫でてみる。
なんだか体温で温かいし、ピクピク動いて面白い。
私は猫を愛でる時のように耳の付け根をコリコリと弄った。
「あ……、んん……」
弄る度にミケは身体を少し捩らせ、声が漏れる。
声は出したくないのか、自分の人差し指を食み、必死に耐えている。
しかし、別に嫌がってはいないようで、先程よりも私達の距離は少し近くなっていた。
ヤバい、ちょっと官能的な気分になってきた。
歯止めが効かなくなりそうだったので、私はミケの耳から手を離そうとするとミケは残念そうな顔をして更に擦り寄ってくる。
ミケが可愛すぎる。
私が男の子だったら絶対告ってる。
既に変なテンションに陥っていたのか、私は衝動的にミケの耳をハムッと口に食み、ムグムグと味わった。
ミケの耳は、モフモフでお日様の味がした。
「にゃあぁぁぁ!」
ガリッ。
思いっきり顔を引っかかれ、ミケの毛が今まで見た事がないほど逆だっている。
しかして私はそれどころではなく、顔の痛みに耐えかね、地べたをゴロゴロとのたうち回った。
しばらくしてやっと少し痛みが引いてきたところで、なんと言って顔を合わせたら良いのかわからなかった私は、しれっと寝転がった状態で日向ぼっこを再開してみた。
隣ではまだフッー!フッー!と興奮したミケの気配を感じるが怖いので顔を見ない。
そうしていると、ミケもゴロンと横になり、日向ぼっこに戻ったようだ。
「ごめん」
「……ん!」
「もうしない」
「……ん」
「……ごめん、やっぱり嘘。時々触らせて貰ってもいいかな。嫌がることはしないから」
「…………ん」
私達は日に当たりすぎたのか、顔を真っ赤に染めて時間を過ごした。
その後、私とミケとは定期的に日向ぼっこをすることになる。
私がミケをモフモフ出来たのかどうかは、皆の想像にお任せすることにする。
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小話その2:『ポチは私の妻でした』
「ポチ、いくよ?」
「あ、ああ。優しくしてくれよな」
村から少し離れた秘密基地で、私達は蜜月を過ごしていた。
ポチが私を上手くリードし、私は溢れ出るパトスを何度もポチに投げうつ。
最初はゆっくりと、慣れてくると少し早めのペースで。
彼はその全てを受け止めてくれた。
パンッ!……パシンッ!!
心地よい音がテンポよく洞窟内に響く。
たまに暴発して狙いを逸らしちゃう事もあったけど、ポチは怒りつつも許してくれた。
私は満たされていた。
こんなにも――
――こんなにもポチが良き妻だったとは。
「上手だよポチ! これは才能だよ!」
先日7歳の誕生日を迎えた私は、ポチに何か欲しい物が無いかと聞かれたので、1日キャッチャーをお願いしてみた。
いつも壁に向かって投げているだけなので、たまにはキャッチャーミットに投げ込んでみたい。
そんな願いに応えるために、動物の革から苦労してミットもどきを作成してポチは秘密基地に来ていたのだ。
ミットもどきは質も悪く、衝撃が手に伝わるようでかなり痛そうだが、ポチは大した文句も言わず付き合ってくれた。
初めてにもかかわらず、ポチは動体視力が良いのか、私が球(石)を何度か投げただけでしっかりキャッチング出来るようになっていた。
なんなら教えてもないのにビタ止めを実践しており、ミットもどきに石が吸い寄せられる度にパシンッ!と何とも気持ちの良い音を響かせてくれる。
「ポチ! 君は私の良妻なのです!」
「意味がわからねぇ! そして俺は男だからな! せめて良き夫と言ってくれ!!」
この日以来、ぶつくさ言いつつも時折ポチが私の特訓に付き合ってくれるようになりました。
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小話その3:『タマの恋愛相談を受ける』
ある日、私はタマに秘密基地に呼び出された。
珍しい事もあったものだと、私は心当たりを考えてみる。
先日、冒険者ごっこで突撃するポチの尻拭いをさせたこと? ……いやこれはいつもさせてるから今更だ。
村のお祭りの時にタマのお肉を彼がよそ見をしている間に食べちゃったこと? ……お祭りは1ヶ月も前だから流石に時期はズレてるよね。
この前あげた鎮痛剤のお礼? ……別に呼び出すほどのことじゃない気がする。
「うーん……」
「あ! る、ルシア。来てくれてありがとう」
既にタマは秘密基地に到着していた。
「別にいいよ。珍しいとは思ったけどね。それで、どうかしたの?」
「あの、その、ね。僕、す、好きな子がいるんだ」
タマは真っ赤な顔でそんな事を言ってきた。
へー。そっか。まぁタマも男の子だしね。
私より2歳も年上なんだし、もしかして青春真っ盛りなんだろうか。
「へー」
「それでね。その好きな子っていうのが……」
あ、理解した。
私にその恋を手伝って欲しいってことね!
でもみなまで言わずとも良い。私はタマの『好きな子』と言うのに心当たりがあるのだ。
「みなまで言わなくても分かったわ! タマはミーちゃんが好きなのね!!」
「へ……?」
村には私達と歳の近い女の子なんてミケくらいしかいないじゃない。
簡単な推理だよ、ワ○ソン君!
「こんなこともあろうかと、私はミーちゃんとガールズ・トークもしてるのよ! ズバリ、ミーちゃんの好きなタイプは頼りになる男の人よ!」
以前、そんな感じの事を言っていた。
正しくは「理知的で優しくて努力家、そして、いつも私を守ってくれる人が好きニャ」と言っていた。
大体あってると思う。
「そ、それは女の子だったら皆そうなのかな?」
「え? うーん……たぶん? 少なくとも優しくて強い、ってのは美点だと私は思う」
「そ、そっか。ち、ちなみにもし強くなるならどういう感じがいいのかな?」
強い人がどんな感じか、ねぇ。
ミケは守ってくれる人が好きって言ってたから私みたいな防御専門とか?
いや、それだと冒険者ごっこの時に防御ばっかりで陣形が組みにくいな。
守りと強さをかけ合わせたタイプって言えば……。
「……槍使いとか?」
「槍?」
「槍のような長物使いは敵を近寄らせず、攻撃に秀でてるし? 長物は三倍段とか何とか聞いたことあるし? あ、あと、純粋に槍を自由自在に扱えるのってカッコいいと思うよ!」
武器のことなんて詳しいことはわからないので疑問符だらけになってしまったが、少なくとも中距離で相手を牽制しつつ、敵を打ち倒すのはカッコいい気がする。
私、前世で薙刀部の試合見た時カッコいいって思ったもん!
「そ、そっか。カッコいい、か……」
「そう! きっとミーちゃんの高感度もグングン上がること間違いなし!」
……だと思う。
なお、当方は一切の責任を負いませんので失敗しても悪しからずお願いします。
「わかった。誰かから槍の扱いを習ってみるよ。ありがとうルシア!」
そう言うとタマは秘密基地から走って帰ってしまった。
善は急げと言うやつだろうか。
私は今日は良いことをしたなぁとホクホク顔で帰路についたのであった。
その数年後、タマは本当に槍使いとして大成し、好きな女の子と村を守るために集団のウォーウルフを相手に大立ち回りをするのだが、そんなこと当時のルシアが知るはずはないのであった。
この話を差し込むタイミングは間違ったかもしれません笑
お疲れ様でした。
楽しんでもらえたらなら幸いです。
※ 誤字報告感謝です!




