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エピソード121 私、コソコソ行動中です


 前回までのあらすじ!


 私、ボルカ村のルシア! 花も恥じらうかは分からないけど健康的な14歳!


 毎日畑を耕しながら平和に暮らしてたんだけど、ある時オルゴルシア帝国っていう怖い軍人さん達がやってきて生活が一変しちゃったの!


 でもでも任せて!

 時に学生、時に百姓、さらには冒険者。文字通り転生というトンデモ事象に巻き込まれ、移り行く世を楽しく生きている私が皆の笑顔を護ってあげるよ!


 今だってほら──そのためにボロ切れ纏って廃屋に隠れ潜んでいるんだから!!

 


『なんでルーちゃんは山の中を泥んこでエッサホイサしてる想像をしてるのだー?』

『ああ、それはルシアちゃんの前世であった映画のワンシーンね。でもせっかく世直しなら白馬に乗った副将軍様の方が良いんじゃないかしら? それか状況的にミリタリーものとか』

『ちょっと二人ともうるさい! 勝手に私の思考を読まないで!』


 ちょくちょくお勤めをさぼって私の思考をのぞき見しているジオニカ。

 無駄にサブカル知識があるアーシア。


 この二人が揃うとなんとも緊張感が薄れる。いや、確かに気分転換に馬鹿な事を考え始めたのは私ではあるんだけど。


 半ば八つ当たりするように自分より高位の存在を脳内でしかりつけると、気を取り直すために隣にいた()()()に話しかけた。



「ローラ、敵の姿は?」

「周囲に敵の気配なし……というより生者の気配なし」



 草の塊、もといカモフラージュをしたローラがもぞもぞと動いて返答した。よく見ると雑草で作った被り物の奥から眠そうな目が覗いている。

 先ほどのアーシアではないが、ローラこそミリタリー映画に出てきそうな出で立ちだ。ご丁寧にフェイスペイントまで施している。


「死んだ人も?」

「少なくとも死臭はしない。ついでにゾンビやスケルトンなどの足音も感知できない」

「それは実に朗報だよ……」


 この世界では死者を放置していると死の眷属に生まれ変わってしまうのだ。これは転生というんだろうか。言わないんだろうな。

 ともかく、こんな廃屋で動く死体が突然ひょっこりはんした日には気絶する自信がある。残念ながら私のお化け嫌いは克服できていない。


「この村は敵に襲撃を受けたわけじゃない、と思う」

「へぇ。その根拠は?」


 普段は無気力そうなのに脳内ピンクな友人は、レンジャーとしての能力は高い。


「さっき言ったように死臭も、血の臭いもしない。新しい足跡も、少なくとも争ったようなものは見当たらなかった」

「でもそれくらいなら雨で流れたのかも──」


 急に饒舌になり始めたローラが面白くて反論してみると、言い切る前に更に根拠を述べてきた。


「古い足跡。たぶん野宿に使った冒険者のもの──は残ってる。雨で流れたのは考えにくい」

「建物の風化が激しい。長く手入れされていないせい。少なくとも数ヶ月でここまでにはならない」

「ほかにも──」


 ドンドンと言葉を繋げるローラを抑えた。


「自信ある。間違ったら私の胸をあげてもいい」


 それは是非にも間違っていて欲しい──じゃなくて。


『ところでルーちゃん』

『なんでしょう?』

『精霊達に面倒事を押し付け……ケホンッ、とっても忙しー合間を縫って様子を見に来たのに、なんでこんな殺風景なところで浮浪者もどきの格好をして妄想にふけってるのだー?』


 若干黒い部分を見せつつ、幼児のようなあどけない表情で首を傾げるジオニカ。


 私は正直若干暇を持て余していたので、現状を説明し始めた。


『2ヶ月前、私達がドラム山脈から村に戻ってきた後の話なんだけどね──』



-----◇-----◆-----◇-----



 あの後、帝国皇帝の直近『原罪(オリジン)』を名乗るクゥネルという少女から逃げ帰った私達は、今後の身の振り方について相談していた。


「ちょっと何なのよあいつ! 強すぎなんだけどっ!? 竜種を一撃とか頭おかしいんじゃないの?」

 

 先ほどまで顔を真っ青を通り越して真っ白になっていたシャロは、今度は真っ赤にして世の理不尽さに怒りをぶつけていた。


「私があれだけ苦戦したデンデロフェルペナルデンを、だからなぁ……」

「しかもそのあとデンデンのブレスを使ってたの」

「たぶん『強奪(スナッチ)』の類のスキルとみた。超が3つくらい付くレア」


 ベルは連れ帰った竜種達の怪我の治療をしつつも光景を思い出したのかぶるりッと身震いし、ローラもいつも通り無表情ながらも震え出しそうになる手をさりげなく抑えていた。


 スキルのスナッチやコピーなんて異世界チートの定番中の定番だけど、よりにもよって敵が使うのは非常にいただけない。

 元々強い奴が技のレパートリーを増やす事の恐怖ときたら。よりにもよって今は戦争中だ。あの能力がどれだけのキャパシティがあるのかは不明だけど、大量のスキルを抱え込まれると手に負えなくなってしまう。


「ブレスはスキルではなく竜種の固有魔法のようなものじゃから本来は人族が扱う事は出来んはずなんじゃが……とはいえ目の前で使われたら否定も出来んのじゃ」


 村に帰還するまで一言も言葉を発しなかったソフィアは、「『原罪』、か──」と小さく呟くと、やおら立ち上がり、未だ混乱する私達に向き直った。



「今回はクゥネルという奴がおバカだから何とか命を取り留めたが、わしらはあそこで死んでもおかしくはなかった。そうじゃな、ルシア?」

「う゛っ……はい、師匠。私が深く対策も取らずに飛び出したのが、その、……ごめんなさい」



 私はソフィアの視線にいたたまれなくなり、素直に謝った。仮にも戦闘区域に何の策も無しに勢いで飛び込んでいくなんて、命知らずも良いところだ。


「そんなっ! ルシアはわるくないの! ベルがみんなをたすけたいと思ったからルシアは……」


 ベルが私を庇おうと声を上げたが、私はそんなベルを制止してかぶりを振った。


「ううん。ベルが家族や同郷の人達を助けようと考えるのは当たり前だよ。これは私のせいだと思う。ちょっと最近勝ちが続いてたから己惚れてたのかもしれない」


 自分が咄嗟に発した言葉は、ストンと胸に落ちた気がした。

 異世界に転生して、なんだかんだ負けなしで過ごしてこれた。毎回ギリギリの綱渡りをしている事も忘れて。勝ち続けている……ただそれだけで今回も何とかなる、と安易に考えてしまっていた。


 忘れてはいけない。

 残念ながら私は異世界チートなんて持ってないんだ。真の強さの前には相応の用意をして向かわなければ簡単に命を失うくらいにはあっけなく。


 私が内心で反省していたのを察したのか、ソフィアは厳しい目から青臭い若人を見る生暖かい視線に変えて言葉を継いだ。



「うむ。それを肝に銘じるならば……わしについてくるのじゃ」

「はい! ……えっ、どこにですか?」



-----◇-----◆-----◇-----


『──ってな感じで、村の人達には『外に出るな』と言い残してこんなところに連れてこられたってわけ。こんな服装してるのはカモフラージュだってさ』


 ちなみにローラもついてきてるのは、単純に村の外の状況偵察をしたい、という理由だから。ソフィアがローラのみは拒否しなかったら彼女を連れて来る事に何か思惑もあるのかもしれない。




『なるほどなー……まったく解らんのだー』




 ですよね。私も解らん。

 だから師匠……早く戻ってきて説明してくださーい!!


お疲れ様でした。

楽しんでいただけたら幸いです。


……と書きましたが、今の状況はてな過ぎて解らんですよね。私も解りません。

主人公のルシアも解りません。


だから早く続きを書いて説明しますね!(適当な事書いてたら文字多くなる病で分割しちゃった)

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