腹黒チームとヒーロータイム
アルフィージ視点になります。
正直、私はやたら忙しかった。後5秒、4、3、2…
『耐火障壁!』
ファイアエレメントのブレスを魔法障壁がほぼ無効化した。しかし…あ、後20秒でカーティスの水属性付与が解けるな。ラビーシャ嬢は後1分。脳内で魔法の効力持続時間を計算しつつ、補助魔法を追加していく。
現在、近接がカーティス、近接~中距離がラビーシャ嬢、遠距離が私とクーリン…となっている。
それにしても、ラビーシャ嬢はおかしい。恐らく魔具の投擲武器を使っているのだが、全て一撃で倒している。恐ろしい技量である。
「ラビーシャ嬢も元暗殺者なのか?」
本人に疑問をなげかけた。
「いえ?商人の娘ですよ。戦闘能力についてでしたら『お嬢様の専属メイド』に必要だったから、習得いたしました」
「…………納得した」
ロザリンド嬢は無駄にトラブルに巻き込まれるし、必要なのだろう。
「…明らかに魔物が増えていないか」
「だな」
倒しても倒してもキリがない。
「大丈夫だよ~、お姉ちゃん達ももうすぐ来るよ」
クーリンの言葉に示し合わせたかのように、空から味方………多分味方が降ってきた。
「ウルファネアボーイ1号!」
「…ウルファネアボーイ2号」
「ウルファネアボーイ3号!」
「ウルファネアシャドウ!」
「ウルファネアマスク!」
『勝利を我が手に!ウルファネア戦隊・ロザリンジャー!!』
全員、覆面をした…つい先程まではわりと普通だったもの達は1列に並び、上半身を円の動きで滑らかにスライドさせた。少しずつずらしているから全員顔が…というか覆面が見えている。そしてよく見たら、指がそれぞれの並び順だ。練習したのか?ちょっとかっこいいな。羨まし……ではなく!問題はそこではない。とりあえず、言うべき事は……………
「責任者出てこい!!」
私は元凶を呼び捨てで呼んだ。カーティスは爆笑。ラビーシャ嬢は苦笑。クーリンは素直に拍手していた。彼らはロザリンド嬢の奇行に慣れているからか、あまり動じていないようだ。
「さあ…断罪の時間だ。神の加護を受けし戦士、ナイト・ヴァルキリー降臨!!」
ウルファネア戦隊で終わりじゃなかったのか。まだいたのか。あれ、中身は誰だ?ロザリンド嬢か?アルディンがロザリンド嬢に貰ったヴァルキリーに似ているな。うむ、白銀に輝くボディにマント…カッコいいなぁ…いやいやいや!違うだろ!カッコいいのは確かだが、おかしいだろう。
ラビーシャ嬢は変わらず苦笑している。クーリンは拍手している。
あれ?カーティスが真顔になっている。
「…何してんの?ディルク」
「は!?ディルクなのか!?」
まさかあの真面目なディルクまで荷担するとは……朱に交われば紅くなるというやつか…
「うぇ!?ち、違います!ナイト・ヴァルキリーです!」
間違いなくディルクだな。ついにロザリンド嬢の悪影響が……
「マジカル☆リリカル☆メルメル☆メタモル☆メタモルフォーゼ!!」
「きゃあああああ!素敵です!」
「かわい~!!」
ラビーシャ嬢とクーリンのテンションが急上昇した。カーティスはディルクいじりをやめて爆笑している。
七色の光が溢れ、リボンがミニスカートのドレスに変わっていく。カラフルな配色に色とりどりのグラデーションリボンがアクセントなのだろう。
「魔法の力でズバッと解決☆得意技は力押し☆神に代わって拷問よ☆魔法少女☆ロザリンリン!!」
くるっとターンして、残念な美少女はポーズを決めた。
「雑魚は這いつくばって赦しを乞いなさい☆」
深呼吸をした。
「魔法が関係ない力押しが得意技なのが納得いかん可愛いがなんで発言が物騒なんだしかも正義の味方らしさが微塵もないというか、真面目に戦えぇぇぇぇ!!」
私の渾身の叫び(ノンブレス)がこだました。
「いいじゃないですか、アルフィージ様。可愛いから」
「うん。お姉ちゃん可愛いの」
「すいません、アルフィージ様。あれは俺とジェンドがお願いしたんです……可愛いですよね」
私は無言だった。確かに可愛いが………こいつらには何を言っても無駄であると悟った瞬間だった。
そして、さらに酷かった。
強い。
圧倒的とは正にこのこと。
「1号、行ったぞ」
「おっけー」
ウルファネアボーイ1号と2号(ジェンドと鳥の獣人)は連携して、2号が縛るまたは槍で投げ飛ばし、1号が爪のような武器でとどめを刺している。この年齢で平然と魔物を倒していくのは恐ろしいが、彼らはまだいい。
「こうやるのよ!」
「うん!てやあああ!!」
先程の格好に意味は無かったのでは…と思うドラゴンのコウもまだいい。ドラゴンが強いのは常識だ。
「はあっ!」
ウルファネアシャドウとやら…ジャ…じゃふ?だったかもカーティスと同じぐらい強い。彼もまだいい。
「わはははは!ウルファネアマスクキーック!!」
おっさん、蹴りで魔物をぶっ飛ばしてボーリングみたく、複数倒すんじゃない。いや倒すのはいいが、常識を考えてくれ。化け物か。
「はあっ!流星剣舞!!」
ナイト・ヴァルキリーよ。太刀筋が見えないんだが。剣圧で地面も抉れてるんだが。君は…ディルクは常識人だと信じていたが、いつから異界の民になったんだ?
「撲殺☆マジカルステッキ☆」
待て。マジカル要素が皆無だ。動きは可愛いが、物騒な気配しかしない。
「マジカル☆ミラクル☆スターアタック!!」
ロザリンリン…じゃなかった、ロザリンド嬢のステッキについていた星が巨大化…いや、ステッキもか。巨大化して、彼女は重力など感じていないかのようにフルスイングした。魔物が紙のように複数ぶっ飛んでいく。あ、ウルファネアマスクより酷いな。どこにこんな物理的な力があるんだ。
「ホームラン☆キラッと大勝利☆」
「ロザリンド嬢」
「すいません、素でトークは勘弁してください。辛いです」
「…ロザリンリン」
「はーい」
「魔法要素が皆無だろう!魔法少女じゃなくてパワーソルジャーだろうが!」
「一応巨大化は魔法ですよ!」
「力技すぎる!!」
「得意技は力押しって自己申告しましたよ!」
「なら魔法少女をやめろ!」
自分でもよくわからないツッコミをしてしまった。多分言いたかったのはそこではなく、何故いきなり仮装しだしたのかとか戦闘力が総じて非常識だとかが言いたかったはずだ。
とりあえず、今の私に解るのは…この地では魔物がほぼ狩り尽くされ、当分魔物騒動が起きないだろうということだった。
とりあえず、どうしてこうなった…アルフィージ様でもシリアス不可というカオス…………楽しかったです!
追伸。ナイト・ヴァルキリーはロザリンリンのために独り立ちしました(笑)




